年金制度は何度も制度変更を繰り返しており、非常に複雑な制度になっています。
厚生年金に加入していれば、ほとんどの方が「老齢厚生年金」を受給できます。老齢厚生年金は、その名の通り年齢を重ねてから受け取る厚生年金のことです。
しかし、老齢厚生年金には2種類の厚生年金があるので注意が必要です。
昭和61年の法改正により、老齢厚生年金の支給開始の年齢が60歳から65歳へ引き上げられ、現在、徐々に支給開始の年齢が65歳に引き上げられている途中です。
老齢厚生年金は、ある一定の生年月日の方が65歳前にもらえる「特別支給の老齢厚生年金」と原則として65歳からもらえる「本来の老齢厚生年金」とがあります。「特別支給の老齢厚生年金」と「本来の老齢厚生年金」は全く別物の年金となっています
今回は特別支給の老齢厚生年金について解説をします。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
・NHK「あさイチ」
・中日新聞
・船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
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特別支給の老齢厚生年金が減額される場合があります。
大雑把に言うと、社会保険に加入をしていて、「毎月の給与の金額」と「1月あたりに特別支給の老齢厚生年金の金額」を合計した金額が28万円を超えると、特別支給の老齢厚生年金が減額されます。
特別支給の老齢厚生年金を満額受給するための条件は、大きく2つあります。
1)社会保険に加入していない
減額の計算には、社会保険の標準報酬月額という金額が使用されます。
社会保険に加入していなければ、特別支給の老齢厚生年金を満額受給することができます。
2)「総報酬月額相当額」と「基本月額」が28万円以下
「総報酬月額相当額」は、社会保険料の計算に使用されている標準報酬月額と1年間の賞与を12で除した額を合算した金額のことです。
「基本月額」は、特別支給の老齢厚生年金の1月あたりの金額のことです。
社会保険に加入していても、「総報酬月額相当額」と「基本月額」を合計した金額が28万以下であれば、特別支給の老齢厚生年金を満額受給することができます。
減額が開始される時期は、社会保険の手続きと連動します。
社会保険の手続きと連動するのは、減額の計算に社会保険料の計算に使用されている標準報酬月額が関係しているからです。
特別支給の老齢厚生年金を満額受給している人の減額がされる時期は、大きく2つに分けられます。
1)社会保険に加入した月
「総報酬月額相当額」と「基本月額」の合計金額が28万円を超える場合は、社会保険に加入した月から特別支給の老齢厚生年金が減額されます。
2)標準報酬月額が変動した月
標準報酬月額が変動すると、「総報酬月額相当額」も変動するので、特別支給の老齢厚生年金が減額される可能性があります。標準報酬月額が変動する場合は、2つあります。
・算定基礎届
・随時改定
算定基礎届は、毎年7月に提出を行い、9月からの標準報酬月額の決定が行われます。
9月からの標準報酬月額の決定なので、特別支給の老齢厚生年金についても9月分から減額される可能性があります。
随時改定は、給与の変動から3ヶ月を経過した月に標準報酬月額が変更されます。
随時改定の手続きが行われる場合は、給与の変動の3ヶ月後の月分から特別支給の老齢厚生年金が減額される可能性があります。