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社労士が解説!労働協約とは?労働協約と労使協定の違いについて

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
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https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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労働協約を結ぶ際は、「労働基準法」の範囲を超えた内容を定めることはできません。

使用者(会社)と労働者(従業員)のためのルールを定めている「就業規則」

この就業規則が会社・従業員ともに、きちんと運用されていくには、お互いの取り決めや合意形成が必要となってきます。そのために、重要なのが、使用者と労働組合が取り決める「労働協約」、労働組合がない場合は、会社と労働者の過半数代表者との取り決めである「労使協定」です。

今回は、この「労働協約」と「労使協定」の違いに着目して、解説していきます。

 
 
 
 
 
 

労働協約と労使協定の違い

労働協約とは?

「労働協約」とは、労働組合と使用者が行った取り決め、契約のことです。労働組合は、労働組合法によって、労働者保護のための強い権利を認められた団体です。組織率が低くなってきたといわれる労働組合ですが、一般的には、社内で組織される労働組合や、会社の外部であるユニオン(合同労組)という団体もあり、労働者の権利保護のために活動しています。労働者の賃金や待遇など労働条件をはじめとした労使関係に関する事項について合意し、「労働協約」として締結するなど、労働者の権利の保護という性質上、非常に強い効果を持っています。

たとえば、労働基準法では1日の労働時間を8時間以内と定めていますが、労働組合と1日の労働時間を7時間として、労働協約を締結した場合には、その労働組合に加入する労働者の1日の労働時間は、7時間となります。

ただし、これはあくまでも「労働基準法」が決めた範囲内でのことです。強い効力があるとはいえ、労働基準法違反となる8時間超の時間を定めることはできません。労働協約に定める労働条件や待遇に関する基準に違反する労働契約は、その部分は無効となりますし、労働契約に定めていない部分についても、同様です。

基本的に締結した労働組合に加入している組合員全員に適用されます。

【労働組合のオープンショップとユニオンショップ】

 

労働組合には、組織の構成によって、オープンショップとユニオンショップの2種類があります。

① オープンショップ

希望者のみが加入している労働組合です。労働組合と合意をして労働協約を締結しても、原則としてその効果が及ぶのは、その労働組合の加入員のみになります。

ユニオンショップ

従業員全員が加入する労働組合です。ユニオンショップの会社で労動協約を締結した場合は、すべての従業員に適用されることになります。

 


 

労使協定とは?

一方の「労使協定」とは、使用者と労働者の過半数を代表する者が締結する就業規則の特則のことです。

労働者の過半数を代表するものとは、どういうものでしょうか?

労働者の過半数が加入する労働組合があれば、その労働組合、過半数労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者を選出しなくてはなりません。

法令や就業規則で決められている事項に対し、労使協定を結ぶことによって特別のルールを定めることができるのです。最も一般的な「労使協定」は、「36協定(サブロク協定)」です。使用者と過半数の労働者代表が取り決める「36協定」を締結すれば、労働基準法36条で規定されている労働時間の原則(1日8時間、1週40時間)では認められていない、時間外労働や休日労働が「労使協定」の範囲内で認められるというものです。

「労働協約」や「就業規則」が、「労働基準法」の規定に反することができない一方、「労使協定」では一定の場合に限り、特例を協定することが認められています。

 「労働協約」「労使協定」の締結形式と内容

「労働協約」

労働組合との団体交渉により労使双方が労働条件や待遇などの事項を取り決め、労働協約を締結するためには、書面に記し、両者の署名または記名押印が必要です。

【労働協約内容例】

1 前文または序文

2 総則に関する条項(目的、適用範囲。組合員の範囲、ショップ制、経営権と労働権に関すること)

3 組合活動に関する条項(就業時間中の組合活動の取扱い、会社施設の利用、組合専従者、チェックオフ)

4 人事に関する条項(採用、転勤、出向、解雇・雇止め、賞罰・懲戒、退職・休職・復職、教育又は研修)

5 労働条件に関する条項(賃金、退職金、賞与、昇給の基準など、労働時間、時間外および休日労働など、休日・休暇、育児休業・介護休業など)

6 災害補償に関する条項

7 安全衛生に関する条項

8 福利厚生に関する条項

9 苦情処理に関する条項

10 労使協議制に関する条項

11 団体交渉に関する条項

12 平和条項

13 争議行為に関する条項

14 効力

15 附則

 

「労使協定」

労使協定の種類は幅広く、さまざまな様式や届出内容があります。労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結するためには、書面に記し、両者の署名または記名押印が必要です。労使協定については、労働基準監督署に届け出が必要なものもあります。

【届け出が必要な労使協定例】

時間外・休日労働に関する協定

労働時間制に関する協定(1週間・1か月・1年単位の変形労働時間制、専門業務型・企画業務型裁量労働制など)

労働協約は期間を定める場合、最大3年まで有効期間が定められます。

「労働協約」「労使協定」の
有効期間

労働協約

「労働協約」は、使用者と労働組合がそれぞれ署名・押印をすれば有効です。名称が「確認書」や「覚書」であっても、「労働協約」として認められます。そして、労働協約に有効期間を定める場合は、締結の日から上限3年間とされています。3年を超える期間の定めは、3年の期間を定めたものとみなされます。また、期間を定めていない場合には、労働協約を解約する際は、予告期間が必要となってきます。予告期間は90日とされていますので、解約すべき日の、90日前までに解約の意思表示をしておかなくてはなりません。

労使協定

「労使協定」は、前述のように36協定をはじめとした労働基準法により労働基準監督署に届け出てはじめて有効になるものと、届け出が必要のないものとがあります。
「労使協定」の有効期限は、法律で決まってはいませんが、36協定など有効期限の上限が決まっている労使協定もあります。

労働協約の有効範囲

「労使協定」が労働者の過半数労働者と締結するのに対し、「労働協約」の場合は、その労働組合の組合員にのみ適用されるのが原則です。ただし、適用を受ける労働者数が事業場の4分の3以上となる場合には、残りの労働者にもその労働協約が適用されます。小規模な企業などでは、過半数労働組合の代表者が、労働者の過半数代表者を兼ねるかたちで、労使協定を締結しているケースもありますので、自社の従業員数、労働組合の組合員数などは、きちんと確認しておく必要があります。

【労働協約と労使協定の有効範囲の例】

労働協約の効力が発生するための要件

労働協約が効力を有するには、以下の要件を満たす必要があります。

・書面に合意内容を記載すること

・会社と労働組合の双方が、署名または押印すること

「覚書」「確認書」であっても、労働協約として認められる

合意内容を書面化し、会社と労動組合双方の署名や押印がされていれば、「労働協約」という表題の書面に限らず、「協定」「覚書」「確認書」などという名称やメモ書きの書面であっても、労働協約に該当するケースがあります。

「労働協約」に違反するとどうなるの?罰則は?

使用者が労働協約に違反した場合は、罰則が適用されることがあります。

「労働協約」は労働組合と使用者が、団体交渉などで合意した内容を書面に記載し、署名・捺印する性質上、非常に強い効力を持っていますが、当然、労働基準法などの法律に違反することはできません。とはいえ、労働基準法は、労働者保護を目的とされていますので、合意内容が労働基準法違反となることは、一般的にはあり得ません。ただし、合意した労動協約があるにもかかわらず、使用者側が労動協約に違反した場合には、労働基準法第92条違反による罰則(30万円以下の罰金)や、労働組合法第7条違反により申し立てがあった場合には、改善命令や罰則が適用されることもあります。

「労働協約」の作成と届出

様々な種類のある「労使協定」は、労働基準監督署に届け出る必要があるものと、届け出が必要のないものがあるというのは、先に述べたとおりです。
では、「労動協約」はどうでしょう?労使協定と同様に労働基準監督署への届出が必要でしょうか? 
「労動協約」は、労働基準監督署への届け出義務はありません。
ただし、労働組合員がその事業場の4分の3以上で、その事業場の過半数代表者を兼ねている場合などは、「労使協定」は届け出をする必要があります。「労動協約」と「労使協定」の違いをよく確認しておく必要があります。

就業規則と労働協約の位置づけ

「労働協約」は、就業規則や労働契約よりも、非常に強い効力があるのが特徴です。労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約は無効となり、労働契約に定めのない部分についても、同様です。さらに、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならないと規定されており、就業規則により優先されることになります。

また「労働協約」と「就業規則」は、労働条件に関わる事項についての決まりごとのため、内容が重複したり、場合によっては整合が取れていない場合もあります。こういった場合には「労働協約」が優先されるということなのです。

労働組合員がその事業場の4分の3以上などの場合は、組合員以外の従業員も含め、つまり全従業員に、労働協約が適用されることになります。一方で、労働組合員が社員の過半数に満たない場合は、労働組合員は労働協約に、組合員以外の従業員は就業規則が適用されます。

このように、強い影響力のある「労動協約」でも、有効期間を明示しないまま、古い内容のままといった場合には、その内容は効力がありますので、実情を異なる場合がある場合には、改めて「労働協約」結んでおく必要があるかもしれません。労働組合がある会社は、今一度、過去の労働協約の内容を確認しておくとよいでしょう。

労働組合がある場合の就業規則の改定方法

 

労働組合がある会社において、就業規則を変更する際には、労動協約と就業規則との内容に整合が取れているかなど、慎重に進めなくてはなりません。とくに労働組合の組織構成がどうなっているか、前述したオープンショップであるか、ユニオンショップであるかによっても、改定までのプロセスは変わってきます。全従業員が労働組合に加入するユニオンショップ制度の労働組合の場合には、締結した労動協約が全社員に適用されることになるので、通常の就業規則の改定のステップと大きな違いはありません。しかしながら、全従業員が労働組合に加入しないオープンショップの労働組合の場合には、全社員に適用されるわけではありませんので、労働組合員以外の社員に個別同意を得たりする必要も発生します。以下のプロセスを参考に、就業規則の改定をすすめましょう。

改定点の整理、新制度導入のための骨子を定める

労動組合への説明、団体交渉

労動組合との合意、労動協約の締結

(オープンショップの場合)労動者との個別の合意

就業規則を改定、社内周知

こんな場合はどうなる? 労働協約・就業規則・労働契約の効力

前述のように、「労働協約」は、非常に強い効力があります。法令(労働基準法)>労働協約>就業規則>労働契約 

といった優先順位が原則になります。労働協約は労働組合法を、就業規則は労働基準法を根拠としています。そのいずれも、労働法規に反することはできません。

個別の労働契約との関係に違いがありますので、確認しておきます。

■従業員の個別の労働契約が、労働協約よりも有利な場合

労働協約の内容が優先されます。従業員に有利な条件なのであれば、OKなのでは?と思いますが、たとえ従業員に有利な労働契約であっても、その部分は無効になります。

■従業員の個別の労働契約が、労働協約よりも不利な場合

労働組合員の従業員であれば、労働協約の内容が優先されます。従業員に不利な条件は、その部分が無効となり、労働協約が優先されます。

■従業員の個別の労働契約が、就業規則よりも有利な場合

個別の労働契約の内容が就業規則で定めている基準よりも有利な場合は、個別の労働契約が適用されます。

■従業員の個別の労働契約が、就業規則よりも不利な場合

個別の労働契約の内容が就業規則で定めている基準よりも不利な場合は、就業規則が最低基準として適用されます。

労働組合法16条

労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働協約に定めがない部分についても、同様とする

まとめ

一度ご相談ください。

労働協約も労使協定も会社と従業員の約束です。ルールを追加するのですから、その作成・締結は慎重になるべきでしょう。しかし、それは経営者側だけでなく、労働者側にとっても同じことです。

経営者・労働者のどちらか一方だけが有利になる変更は今後よりいっそう慎重に改定を行うべきでしょう。労働協約は非常に強い拘束力を持ちます。好景気のころに結んだ労働協約が後々重荷になり、経営を圧迫してしまったという話もあります。労働協約は一度締結をしてしまうと撤回するのは難しいです。

労働協約や労使協定の締結の際は専門家に相談することをおススメします。

当社も無料相談を行っておりますので、不安な点がある場合は一度ご相談ください。

 

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労務相談の顧問や就業規則の整備をお願いしています。そもそも私自身の考えになりますが、社員の成長と私自身の成長が、会社自体の伸びにつながると考えています。そして、そのためには働くための当たり前の体制が整備された「まともな会社」であることが前提となるでしょう。そこの組織づくり・成長する基盤づくりを進めるにあたっての不安点をよく相談しています。

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