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就業規則と残業申請制
導入する際の注意点について解説します。

就業規則と残業申請制。
​導入する際の注意点について解説します。

「働き方改革」の中で、重要テーマとして挙げられる長時間労働の削減。そのための施策として、従業員が残業を予め事前に申請し、それに対して上司(会社)が承認した場合にのみ残業を行うという「残業申請制」の仕組みを取り入れている会社もあります。今回は残業申請制について、導入する際の注意点などについて解説していきます。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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残業申請制のメリットとデメリット

社労士の小栗です。
残業申請制のメリット・デメリットを踏まえたうえで、導入を検討しましょう。

 

残業は本来、上長により「残業命令」という形で指示されるものです。
しかし、実態としては、上長が常に指示を行うこともできず、黙示的に残業が指示されたとみなされるケースが多くあります。
残業の指示がなく、残業を行うことが常態化した組織の場合、本当に必要な残業なのか?それともただ残っているだけなのか線引きが難しくなってしまいます。

もちろん働いた分に関しては、残業代の支払いは必要ですが、ただ残っているだけで、本当は働いていない分の残業に対してはルールを定めておく必要があると考えられます。

残業申請制を導入することで、こうしたリスクを防ぐことができる場合もあります。しかし残業申請制をとったからと言って直ちに申請されていない残業の支払いを免れるものではなありません。ルールを明確にし、正しく運用する必要があります。

では、「残業申請制」を導入した場合、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。

【メリット】

サービス残業や不必要な残業を防止できる

従業員からの“申請”というワークフローが加わることで、残業をするための合理的な理由が必要となります。残業代目当ての生活残業や、なんとなく他の人が退社しないから残業している、定時時間内にダラダラ仕事を続けたために仕事が終らなかったために生じた残業など、不必要・非効率的で無駄な残業を減少させられます。

適切な労働時間を管理することで、メンタルヘルスへの負担を減らせる

残業を行う場合には、上司(会社)が残業を承認する必要になるので、長時間の残業時間の抑制や減少につながります。上司(会社)が、残業が多い従業員を把握しやすいため、業務の進捗の遅れやプロジェクトのトラブルなど、早期に改善をする手立てを打てるなども可能でしょう。長時間労働によって、心身の不調をきたす従業員のメンタルヘルスの改善推進につながると言えます。

【デメリット】

残業申請制の形骸化

従業員が“申請”し、上司が“承認”するワークフローをこなすだけ、形骸化してしまっているケースもよくあります。どうしても残業せざるを得ない場合などについて、上司が承認した場合のみ残業を認めるなど、一定のルールがない限り、単なるワークフローを回すだけの無意味なものになってしまいがちです。

 

残業申請制のルールの定め方

「残業申請制」を導入する場合には、一定のルールが必要です。以下のポイントに着目するとよいでしょう。

●申請ルートの設定

従業員が申請した場合に残業を認めるのか、上司が残業指示をした場合に残業を認めるのか、またそのいずれもなど、どういった場合に残業申請を認めるのか、社内の申請ルートを定める必要があります。

●承認基準の設定

残業を必要とする理由についての基準を設けます。「納期を引き延ばすことができない」などの理由を具体的にしておくほうがよいでしょう。承認を行う役割(上司)は、その承認基準に沿って残業の許可を出します。

 

残業申請制運用の注意点

労務支援チームの島です。残業申請制は適切な運用を行わなければ認められないことが多い制度です。

残業申請制は、残業代の支払いに大きく関わるものですから、導入の際には運用方法も明確にしておく必要があります。

運用上、「承認」が、残業を許可する上司次第であると適切な運用をしているとはいえません。どのような場合に「承認しない」のかをルールとして明確にしておく必要があります。また、どのような場合に残業を申請するのか従業員間でも共通の認識を持つ必要があります。

また原則として、実際に働いた事実があり、残業の申請が行われたのであれば、承認する必要があります。残業申請制を導入する目的が単純な残業削減とならないように注意が必要です。

残業申請の導入は簡単なようで、導入・運用していくには細心の注意が必要です。従業員に任せきりだった残業時間の管理が、いきなり申請制度に切り替えても、なかなか徹底されないことも多いのが実情です。勤怠の実績を確認しながら形骸化しないよう適切な運用が必要です。

会社の残業に対する方針、36協定、業務内容に照らして適切かなど、検討していきます。労働組合などがある場合には、協議が必要な場合もあります。

また、運用前には、残業を指示し承認する役割である上司への教育周知、従業員への周知徹底が必要です。申請がなく、ただいるだけになっている残業に対しては賃金の支払いを行わない旨の周知が必要です。

 

理由によって残業の申請を却下できるのか?

前述のように、残業申請制の導入にあたって、申請・承認に関する基準を明確にし、全従業員に周知しておく必要があります。

無断での残業には給与を支払わないと予め就業規則に規定しておきます。
こうしたことが明確に従業員に周知されていないと、必要としない残業だからと、残業を却下したとしても、従業員が残業してしまった場合、残業代を請求されるケースもあるからです。会社は従業員の仕事の量や労働時間を把握し、実態と申請が違っている場合は適宜指導を行い是正を続ける必要があります。

後日の残業申請を却下できるのか?

「残業申請制」を導入すると必ず出てくる問題が、後日の残業申請はどうなるのかという問題です。原則、会社は後日の残業申請を認めないとルール化することが多いと思います。とはいえ、突然にプロジェクトでの不具合で残業してしまった、申請していないが後日でもよいか?ということがよく起こります。

こうした場合には、原則として会社側は残業を認め残業手当を支払う必要があります。労働時間は会社の指揮命令下にある時間であり、会社のためにやむを得ず残業をした場合は、残業が生じたとみなされ、必要があって行った分の残業代を支払わなくてはなりません。そうしたケースが多いことが予想される場合は、運用ルールを今一度検討する必要があるでしょう。

恒常的に残業を申請しないで残業する従業員への対応は? 

必要もないのに勝手に残業をしている、申請がないまま残業をしているといったケースもあります。本来、会社の指揮命令下になく、従業員が勝手に会社に残っている時間は労働時間には含まれません。だからこそ、ルールを作り、就業規則に明記し、全従業員に周知するなど、その運用を適正に行なう必要があるのです。そうした下地づくりがなければ、残業が生じたとみなされ、残業代を支払う必要が発生する可能性が出てきてしまいます。

また、申請をしないでサービス残業を行っている従業員もいるかもしれません。こちらについても、従業員が申請せず勝手にやっているからと、黙認するのは危険です。黙示的指示が働いているとして会社側が支払いの義務を負うことになります。残業申請制が形骸化しないように会社、上司が注意を怠らず、どうしても残業が必要な際には毎回の申請を徹底させるのと合わせ、適切な業務配分が重要と言えます。労働時間内で終わらない量の仕事を与えていた場合、従業員が申請をせずに行ったとしても残業時間とみなされます。例えば、納期等が元々の労働時間内では守れないケースなどが該当します。

徹底したルールと運用があっても、サービス残業や申請をせずに残業をする従業員がいる場合には、個別にヒアリングや指導を行なっていく対策が必要です

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

残業代を抑制する目的のみで残業申請制を導入したいと考えられる経営者の方もいらっしゃいます。ですが、この場合はリスクのみが増加するだけなので、おススメしません。
従業員から見たときに経営者のスタンスも疑われますので、必要な人材が流出してしまう危険性が高いです。
残業申請制の目的は残業の削減と生産性の向上です。
残業申請制を導入し、記録上の勤怠と実際に働いた時間が大きく違う場合は注意が必要です。
申請がなければ、働かせても残業代を払わなくてもよくなるわけではないからです。
運用は注意が必要なことが多いので専門家に相談されることをおススメします。

残業申請は何分で定めるべきか?


残業を申請するにあたっては、従業員の中には申請の時間が長すぎるケースが必ず出てきます。残業申請の目的の一つは、長時間残業の抑制といった面もあります。従業員の申請するままの時間を承認していたのでは、本来の目的がはたされません。1日・1週・1か月など、残業の限度時間なども精査しておく必要があります。36協定に照らして、決定しておきましょう。残業の承認を行う上司は「この作業に見合った時間が申請されているか?」といった点も判断すべきです。

また、どのようなときに申請するかも定めます。1分でも残業するなら申請するのか、1時間以上残業をするなら申請するかなど、定めておく必要があります。残業時間は、会社によって“30分未満は切り捨て”など、会社独自のルールを設けているところもありますが、これは労働基準法に反します。労働基準法の考え方に合わせて設定しましょう。

フレックスタイム制の残業申請をどうするか?

フレックスタイム制とは、一定期間(=清算期間)についてあらかじめ決められた総労働時間の中で、労働者が日々の始業・終業時刻や労働時間を自ら決めることができる制度です。もちろん、このフレックスタイム制にも決められた時間を超えた時間外労働は、いわゆる「残業」の扱いになります。ただ、フレックスタイム制は、会社と従業員の双方が制度を正しく理解していなければ、長時間労働などを引き起こす可能性もあります。2019年4月の法改正により、この清算期間が1か月から3か月までに延長できることになりました。清算期間によっても、労働時間管理をどう行っていくか慎重に運用方法を決めておくことが大切です。

フレックスタイム制の残業時間の計算ルール

フレックスタイム制における残業時間とは、定めた清算期間内の総労働時間を超過した時間を指します。そのため、総労働時間を超える分に対しては残業代を支払う必要があります。たとえば、清算期間が30日、総労働時間が160時間の場合、同月に170時間働いたとすると、10時間分の残業代を支払うことになります。

フレックスタイム制の残業管理は難しい?

フレックスタイム制の難しいところは、従業員の労働時間・残業時間を正確に把握しにくいことです。フレックスタイム制は、従業員の自由意志で出勤や始業・就業時刻をコントロールできる部分があります。それゆえに労働時間管理を厳密に行わなくても良いようなイメージを持つ方もいるようです。

しかしながら、フレックスタイム制で残業時間を正しく計算するためには、従業員の労働時間を正確に把握する必要があるのです。運用方法をきちんと決めておかなければ労働時間の管理に大きな負担がかかるでしょう。

時間外労働は、本来、従業員の自由で行なうものではなく、会社の命令もしくは従業員が申請し、会社が承認することで行うものです。しかしながら、フレックスタイム制度において、日々の始業・就業時刻を記録するだけの労働時間管理では、時間外労働が発生するかどうかは、清算期間の最後にならないとわかりません。これは従業員の長時間労働防止の面でも大きな欠点です。

とはいえ、最近では、フレックスタイム制に対応したITツールなどが増えています。残業時間の制限などを設定すれば、一定の基準を超えるとアラートが出たり、フレックスタイム制に応じた残業申請・承認機能を有している勤怠システムなどあります。これらのツールなども利用しながら、自社の運用方法を検討していくことをおすすめします。

テレワークの残業申請をどうするか?

テレワークでも、通常のオフィス勤務同様に従業員の労働時間管理は必須です。テレワークは労働時間の把握などが困難な場合に“みなし労働”を適用することも多いですが、労働時間管理や残業代の支払いを免れるわけではありません。とはいえ、テレワークはオフィス勤務に比べ、頻繁に対面のコミュニケーションを取るわけではありません。“ここまで言わなくてもわかるだろう”といった曖昧な説明や指示のまま業務を進めていると、気付いたら長時間残業になっていたということがありがちです。

そのため、テレワークにおいても、業務の指示や報告の仕方をはじめ、残業申請をどのように運用するかは、会社ごとに工夫をする必要があるでしょう。

テレワーク は最近増えてきた働き方です。会社も従業員もしっかりとルールを理解し運用していかないと思わぬトラブルが発生します。就業規則に盛り込み、しっかりと従業員に説明しておくことが大切です。テレワーク であっても、通常の労働時間管理同様のレベルが必要ですので、しっかりと認識して運用していきましょう。

 

残業申請はどのように行うべきか?

残業申請については、「残業申請書」などの書式を作成し、従業員が利用できるように用意しておきます。労務トラブルを防ぐうえでも、必ず判断材料として必要になりますので、口頭で申請するということではなく、かならず書面を残せるようにしましょう。ネット上にひな形がたくさんありますので、自社用にアレンジするのも一つの手。とはいえ、紙の書式で残業申請書を運用するのは、なかなか大変なものです。その申請書を作製する時間があったら、仕事をして早く帰りたいというのが従業員の本音です。申請に手間をかけるのであれば、Webでの申請管理も検討してはいかがでしょうか。

残業申請制を導入するのであればクラウド型勤怠管理
システムがおススメ。

残業の管理でもっとも重要なのが、正確に労働時間を把握することです。紙のタイムカードや、エクセルなどを使って記入する勤怠表ではいくらでも加工もできてしまいますし、修正も可能です。加えて、紙の書式を管理する手間や効率性を考えれば、webのクラウド型勤怠管理システムを活用するのがおすすめです。最近のクラウド型勤怠管理システムの多くは、残業を希望する従業員がWEB経由で上司に残業申請を行うためのワークフローが整備されていたり、残業申請が無いまま残業をしている従業員をピックアップできる機能をを持っているものもあります。何より、36協定で定めた時間をアラートとして設定できたりと、単なる打刻記録にとどまらず、労務管理を行うための機能が充実していますので、残業申請制の導入を検討している会社は、併せてクラウド型勤怠システムの導入もおすすめします。

就業規則と残業申請制のまとめ

残業申請制導入の前に一度ご相談ください。

いかがでしたでしょうか?
残業申請制を導入するメリットは不要な残業の削減ができることです。
例えば、渋滞回避のために早出を行い、事務所でコーヒーを飲んでいるなど不就労の時間に対して残業代の支払いを行わなくてよくなることです。なんの対策もとらない状態では、出社時に「出勤」を打刻してしまうと残業代の支払いが必要になってしまいます。
もちろん、実際に働いた分の賃金の支払いは必要であることは言うまでもありませんが、打刻の区別がついていない場合は、出社しコーヒーを飲んでいるだけだとしても賃金の支払いが必要なのです。

会社の人件費には限りがあります。原資そのものを増やすこととあわせて、適正な配分を行うことが重要です。
そのためには頑張って働いてくれた従業員に多く分配すべきです。

残業申請制はそうした考えを実現できるひとつの方法ではありますが、運用がしっかりしていないと否認されてしまうのも事実です。
残念なことに、残業申請制を導入したのに、運用が適切に行われない事例も多いからです。

残業申請制の導入をお考えであれば一度専門家にご相談ください。
経験豊富な専門家であれば、適切な運用を指導できます。

解説動画はこちら!
残業のルール。残業時間中の自己研鑽は?
注意点について社労士が解説します。

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労務相談の顧問や就業規則の整備をお願いしています。そもそも私自身の考えになりますが、社員の成長と私自身の成長が、会社自体の伸びにつながると考えています。そして、そのためには働くための当たり前の体制が整備された「まともな会社」であることが前提となるでしょう。そこの組織づくり・成長する基盤づくりを進めるにあたっての不安点をよく相談しています。

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