就業規則と副業
企業の副業解禁について社労士が解説します。

就業規則と副業
企業の副業解禁について社労士が解説します。

昭和から平成、そして令和の時代に入り、産業構造の変化はもちろん、年功序列、終身雇用、定年退職など、従来の働き方も大きな転換点を迎えています。

人生100年時代のなか、ライフステージやライフスタイルなど、その時々に応じて、自分にあった働き方を選択できるような多様性が求められているように感じます。

このような働き方や生き方が多様化している中で、副業を解禁する企業が増えてきました。大手企業でも、副業を解禁するケースも増えつつあります。また厚生労働省の「モデル就業規則」から副業禁止規定が削除されるなど、副業容認の流れが加速しています。

今回は、自社で副業を解禁するかどうか、また解禁する場合に具体的にどのように就業規則を見直していけばよいかなど、解説していきます。

副業とは?

多様で柔軟な働き方の一つである
「副業・兼業」について、
詳しく解説していきます。
 

副業とは、正社員や非正社員が、本業以外の仕事に携わることを意味します。そもそも日本では、これまで副業というと、本業の仕事の他に収入を得るために、会社にバレないようにアルバイトなどをするといったイメージがありました。企業においても、多くは副業禁止の規定を設けるなど、副業を推奨する企業は珍しいものでした。

しかし、最近ではさまざまな仕事を経験、身につけることで、本業に役立てるといったキャリア形成を意味する場合もあり、副業を解禁する動きも増えています。

働き改革を推進する国の動きも、2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をまとめたほか、「モデル就業規則」からも副業禁止規定が削除されました。

そこで、気になる「副業・兼業の促進に関するガイドライン」と照らしながら、“副業・兼業”について、みていきましょう。

まず「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、“副業・兼業”とされています。この副業と兼業に違いはあるのでしょうか。最近では、“副業・兼業”のほかに、「複業」「パラレルワーク」「ダブルワーク」「サイドビジネス」など、さまざまな言葉を見聞きすることも多くなりました。

しかし、実は“副業・兼業”については、それぞれに具体的な定義などはありません。ざっくり言うと、収入を得るために携わる本業以外の仕事を指すといわれています。とはいえ、それぞれ微妙なニュアンスや意味合いが異なる部分もありますので、確認してみましょう。

副業 アルバイトとのかけもちする場合

一般的には、主な仕事以外に就いている仕事を指すことが多いようです。「本業」といわれる仕事をしている人が、アルバイトやパートをかけもちしたり、株式投資などで収入を得ている場合を副業と呼んでいます。副業は、収入やそのアルバイトやパートなどに費やす時間や労力が、本業に比べて少ないというのが特徴です。

兼業 個人事業主として働く場合

本業の職務以外に、他の事業に従事したり、自ら事業主などとして事業を営むことを、兼業と呼ばれます。企業の会社員として勤務する一方、個人事業主として事業会社を経営するといたケースが該当します。

企業は副業を解禁するべきか?メリットデメリットは?

副業・兼業を希望する労働者が増える一方で、企業にとっては課題やリスクもあります。自社にとってどのような影響があるのか、明確にしておきましょう。

企業は副業を解禁するべきか。

働き方改革の流れにより、大手企業において徐々に副業を解禁する企業があるとはいえ、中小企業にとっては、副業を解禁すべきかどうかは、経営者にとって大きな悩みどころでしょう。貴重な人材が外部流出してしまうのではないか、機密情報や営業ノウハウなどが流出しないかといった懸念もされるでしょう。検討にあたっては、企業側・従業員側双方にどんなメリット・デメリットがあることを知っておく必要があります。

副業 従業員のメリット・デメリット

●メリット

①収入アップ

当たり前ですが、副業の収入により、総収入がアップするメリットがあります。収入が上がることで金銭面でのゆとりを持つことができるでしょう。

②キャリア形成

本業とは別の仕事の経験が新たな知識やスキル、経験、新たな人脈を得るなど、キャリア形成に良い影響をもたらすこともあるでしょう。

●デメリット

①ワークライフバランスが難しい

副業をするということは、本業以外に労働時間が増えるということであり、プライベートの時間とのバランスをどう取っていくかは難しいところです。また、労働時間が増えれば、休息時間が減るということでもあり、健康管理にも、より留意が必要になるでしょう。

②税金などの手続きが必要

副業先の収入への税金の手続きなど、本業の会社で年末調整を一緒に行ってくれるのか、自身で確定申告を行うかなど、税金の処理は忘れずに行わなければなりません。また、副業の収入額によっては、税額にも影響しますので、基本的な税金の知識は必要になるでしょう。また、雇用保険の適用などについても、しっかり理解しておかないと、後々トラブルになることもあります。

副業 企業のメリット・デメリット

●メリット

①従業員のスキルアップ

従業員が副業を行うことで、新たな知識やスキル、経験を得ることは、大きなメリットです。自社だけでは、得られないスキルや経験は、新たにビジネスのノウハウや知識を広げることにもつながり、結果的に自社への利益として還元されることにつながります。

②優秀な従業員の流出を防止

優秀な人材は、自己実現のために成長の場を求めることも多いでしょう。副業を会社側が認めることで、優秀な人材が流出してしまうことを防ぐことにもつながります。自分らしい働き方を求める人材にとっては、副業を解禁している企業は魅力といえます。

③人材の確保

流出を防止する一方、副業の人を受け入れるという点において、アルバイト・パートや業務委託に人など、副業を希望する人材に間口を広げることで、自社の人材確保につながります。また、外部人材を採用することで、自社にないスキルや経験を得られる可能性も高まります。

●デメリット

①情報漏えいのリスク

従業員からの情報漏えいについては、漏えい対策など慎重に対応する必要があるでしょう。会社の機密情報や営業上の秘密など、外部に漏れることのないよう、「秘密保持」や「競業避止」などの取り扱いについて、明確にしておく必要があります。

②人材流出のリスク

副業の解禁は、優秀な人材の流出を防止する魅力となる一方で、自社にリテンションできるだけの材料がなければ、従業員が副業の方へ転職してしまうリスクはゼロではありません。

③健康管理や事故など労災となった場合のトラブル

副業を行う従業員は労働時間が増えるため、休息の確保やバランスが難しく、健康管理がより重要になります。労災に発展するような事態になった場合、本業と副業のどちらに原因があるかなど、責任判断が難しいケースも発生するかもしれません。責任の所在を明確にできるような会社と従業員双方にとって悪影響のないルールづくりなどが必要になってくるでしょう。

副業解禁するべき? 押さえておきたい5つのポイント

副業・兼業解禁へ動きだすためには、労働法をはじめとした法律をしっかり押さえておきましょう。

副業を解禁するべきか検討する際には、押さえておきたい5つのポイントがあります。デメリットになるリスクを最大限防ぎつつ、現行の労働法に則り、自社での副業解禁が可能かどうか判断するためのポイントをみていきましょう。

①副業の労働時間の通算

労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。つまり、本業と副業の労働時間は通算されます。そして、労働時間を通算した結果、1日8時間、週40時間の法定労働時間超を超えて労働させる場合は、時間外労働として割増賃金を支払わなければなりません。

ここで注意したいのが、時間外労働として割増賃金を支払うのは、誰かということです。この割増賃金を支払う義務があるのは、雇用契約を後からした事業主ということになります。

基本的に、従業員が事業主Aと雇用契約を締結しており、事業主Bと新たに雇用契約をするのであれば、事業主Aと雇用契約をしている旨を、事業主Bに伝えているはずであるという推定からです。

例えば、従業員が会社Aと先に雇用契約を締結し、会社Bと後日雇用契約を行った場合、会社Aで7時間働いたのち、会社Bで2時間勤務した場合、労働時間は9時間となります。1時間の時間外労働となります。この場合、会社Bは、1時間分の割増賃金を支払う必要があるのです。

また会社Aに勤務している従業員が、先に会社Bで2時間勤務後、会社Aに出勤し7時間勤務した場合には、1時間の時間外労働分の割増賃金を支払うのも、会社Bということです。

つまり、自社が後から雇用契約をした場合は特に、従業員が副業先で、どのような勤務シフトで、どのくらいの時間勤務しているのかを、把握しなくてはならないのです。

②副業の通勤手当の取り扱い

副業OKということになれば、従業員が自社の勤務地から副業先の勤務地への移動するケースも想定されます。通勤手当についてどのような扱いにするか明確にしておかなければいけません。

通勤手当は、法律で支払いが決まっている手当ではありませんので、会社ごとに就業規則に規定しておく必要があります。

③副業中に発生した通勤災害・業務災害の取り扱い

例えば、会社Aで勤務している従業員が、副業先の会社Bに勤務するため移動している最中に通勤災害にあった場合には、副業先の会社Bが労災認定を行うことになります。副業先の会社Bで業務災害にあった場合も同様です。ただし、労災保険の給付は、労災認定を行う事業主、この場合は副業先Bの給与を算定基礎として計算されます。

④副業する従業員への安全配慮義務

労働契約法5条によれば「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。企業が従業員に対して安全配慮義務を負い、違反した場合には損害賠償責任を負うこととなります。

副業を解禁したからといって、この義務を免れるものではありません。従業員が副業すれば、当然ながら労働時間が増加します。長時間労働などで、従業員が健康を害することがないように健康管理をおこなっていく責任があります。

これは自社がメインで副業がサブであろうと、自社がサブで副業がメインであろうとどちらにせよ、労働時間管理をし、安全に配慮する義務があるということです。健康に配慮し、勤務を決定しましょう。

⑤副業する従業員の社会保険の取り扱い

厚生年金保険や健康保険といった社会保険は、勤務している事業所ごとに適用が判断されます。副業先でも加入条件を満たす場合には、複数加入となるわけです。ただし、自身でメインとなる会社を選択することで、保険証などを発行する手続きを行わなくてはなりません。するのが一般的です。雇用保険については、主たる賃金を受ける事業者において加入することになっているので、通常は、本業である会社で加入することになります。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

厚生労働省では「副業・兼業の促進に関するガイドライン」として、Q&A形式で副業・兼業についてまとめています。
少し内容的には難しいですが、副業・兼業を導入するのであれば一読の価値はあります。

副業解禁
就業規則を整備するうえで気をつけるべきポイント

就業規則で一方的な副業禁止の規定は問題です。自社の就業規則を再度見直ししませんか。

副業を解禁する方向で進めるにしても、なんでもOKというわけにはいきません。副業を許可する場合の規定はもちろん、副業を許可できない場合の根拠なども明確にしておきます。2018年、働き方改革の提言により、厚生労働省の「モデル就業規則」から副業禁止規定が削除され、副業・兼業の規定が追加しました。モデル就業規則を見ていきましょう。

副業禁止・制限の規定を明確にすること

合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化することとされています。企業が副業や兼業を制限できるのは、

・労務提供上の支障がある場合

・企業秘密が漏えいする場合

・会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

・競業により、企業の利益を害する場合

としています。とくに企業の影響が大きい事項については、副業が禁止できるようになっていますので、就業規則には必ず盛り込んでおくべきでしょう。副業禁止の規定を設けていない場合に、従業員が副業したことで、懲戒処分をすることができません。

【アルバイトやパート従業員に副業禁止・制限できるか?】

正社員の副業を禁止している会社は多くありますが、パート従業員の副業が禁止されているというところは少ないでしょう。アルバイトやパートで勤務する人は、短時間で勤務しているようなケースが多いもの。長時間労働により本業に悪影響がでるリスクもほぼないでしょう。競業避止や守秘義務に違反しない限り、禁止や制限するケースはないでしょう。

モデル就業規則より

(副業・兼業)

第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

②  労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏えいする場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④  競業により、企業の利益を害する場合

副業は許可制から届出制へ動いている

労働者が、労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由です。副業を禁止・制限できる場合を除いて、これまで許可制として原則禁止していた副業を、届出制にする動きとなっています。

副業の規定を守らない従業員への対応を決めておく

副業禁止事項に該当するような副業を行なっていた従業員について、どのような処分をするか懲戒についても明確にしておく必要があります。例えば、「ライバル会社で副業をしていた」ことを理由に、直ちに解雇するといった処分はトラブルに発展します。副業禁止規定を違反したことで、どういった影響を会社に与えたのか、影響度はどれくらいか、具体的な事実と懲戒の処分が見合うかどうか判断が必要になってきます。

また、副業を許可した場合であっても、時間管理や健康確保など副業を行うルールを明確にしなければ、就業規則を規定するだけでは、運用できないでしょう。従業員が不公平感や不信感を持たないよう、会社と従業員の双方が、それぞれの働き方を尊重してしっかりとルール守っていくという理解を進めていく必要もあります。

 

まとめ

副業・兼業をめぐる労働法や実務を、企業の状況に合わせて社会保険労務士の視点でアドバイスします。

働き方改革により、副業・兼業の動きはさらに進んでいくと思われます。副業・兼業に関する法的な注意点を押さえておかないと、思わぬトラブルになることもあるでしょう。

どのような副業を認めるのか、労働時間をどのように把握するか、社内への理解浸透をどうするかなどを検討すべき事項は、多々あります。副業の取り扱いやスムーズに企業内に導入するためには、必要に応じて専門家にご相談することをおすすめします。

しかしその際注意していただきたいのが、副業・兼業の解禁が本当に必要なことなのかどうかを自社の実情に合わせて考えることです。
公営労働省が言っているから…と解禁した結果トラブルになることもないわけではありません。

まずは自社の成長です。自社を成長させるための一つの選択肢として副業や兼業が必要だと感じたら導入すべきです。その際はぜひ弊社にご相談ください。

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