「手取り時間とは?」
東京都が「社員の余暇時間を増やす中小企業」に最大230万円の奨励金を支給
東京都の小池都知事が発言した「手取り時間」が注目されています。従業員の働きがいを高め、人材確保や離職防止につなげることを目的として、従業員の余暇時間を増やす中小企業に対して最大230万円の奨励金を支給する施策を発表しました。
日本は生産年齢人口が減少しており、今後も減少が見込まれています。人手不足がますます深刻になると考えられる中で、従業員の生産性を高めたり、DX化を促進して業務の効率化・省人化を進めたりすることは欠かせません。
今回は、「手取り時間」の基本的な意味合いや、企業が従業員の福利厚生を充実化させるメリットなどを解説します。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
・NHK「あさイチ」
・中日新聞
・船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri
取材・寄稿のご相談はこちらから
まずは、企業が従業員の手取り時間を増やすメリットや、東京都が掲げる新しい施策の背景について見ていきましょう。
従業員の手取り時間を増やし、ワークライフバランスを充実させることにより、満足度や生産性が向上するメリットが期待できます。
業務の時間を縮減し、従業員がリフレッシュできれば、新しいアイデアが湧く可能性があります。また従業員が子育てや趣味に時間を充てることで、全体的な生活の質が向上し、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
さらに、業務から解放される時間が増えれば、ストレス軽減効果も期待できます。心身の健康を保ち、快適に働ける環境を整備すれば、離職率が低下するメリットも期待できるでしょう。
小池都知事は、新年の挨拶の中で「1日24時間0分0秒の時間をいかに節約し、スムーズな流れのなかに都民の自分時間、手取り時間を増やす」と言及しています。
手取り時間を増やす取り組みを推進している背景として、人々の意識・行動・ライフスタイルの変化を挙げています。生産労働人口が減少する中で生産性を維持するには、あらゆる場面でのDX化が欠かせません。
また、業務量は変わらない中で手取り時間を増やすためには、業務の効率化や省人化が欠かせません。そこで、業務のデジタル化やDX化の推進、生成AIを徹底的に使いこなすことの有効性についても述べています。
率先して都庁に勤務している職員の手取り時間を増やすために、計画的な休暇の取得を求めています。また、フレックスタイム制を活用した週休3日や女性職員のキャリアップを後押しする仕組みなど、働き方の選択肢も増やす予定とのことです。
東京都の支援内容を解説します。
予算案に30億円を計上し、都内1,400社を対象として、従業員の余暇時間を増やす中小企業に最大230万円の奨励金を支給する施策が行われる予定です。
フレックスタイム制や家族のための特別休暇制度、先輩従業員が後輩の相談に乗るメンター制度などの導入状況に応じて、奨励金を算定します。
また、従業員へ理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)対策をする企業に対して最大40万円、対策の周知や支援窓口の設置などをする業界団体に最大100万円を支給する施策も実施される予定です。
能力とスキルを有する従業員がメンタルヘルスを損ねて離職してしまうのは、会社にとっても社会全体にとっても損失です。そこで、企業のカスハラ対策を促進し、従業員のメンタルヘルスだけでなく雇用も守るための施策が行われます。
なお、知事査定を経た予算案は1月31日に発表される予定で、具体的な支援内容は今後明らかになるでしょう。
東京都の取り組みが与える影響を見ていきましょう。
東京都が率先してワークライフバランスの実現に取り組み、職員の手取り時間を増やせば、民間企業や地方にも波及するメリットが期待できます。
2024年は「人手不足倒産」が過去最高を記録していることからも、労働力の確保は喫緊の課題です。民間企業が従業員の手取り時間を増やすための取り組みを積極的に行えば、採用活動において優位性を持てるでしょう。
各企業が福利厚生を充実化させるメリットを認識し、人手を確保するための努力や創意工夫を行えば、世の中全体が働きやすい環境になることが期待されます。従業員の満足度が向上すれば、離職率が低下して自己都合退職による雇用喪失を防げるでしょう。
首都である東京都がワークライフバランスを積極的に推進することで、地方自治体や地方の企業にも影響する可能性があります。地方でも魅力的な働き方を実現できれば、東京一極化を軽減し、地方創生にもつながるかもしれません。
セキュリティに関連する具体的な対策を見ていきましょう。
「手取り時間」を増やすための取り組みは、企業の実情に合わせて行う必要があります。他社の取り組みを参考にしたり、自社で独自の取り組みを考えたりして、可能な範囲で制度の導入を進めましょう。
具体的な取り組みとしては、以下が考えられます。
さまざまな方法が考えられるため、一律の正解はありません。ただし、人手不足の深刻化が予測される中で、「求職者から選ばれるための取り組み」を行わないと、競争力を失ってしまうでしょう。
鶴見の経営視点のアドバイス
事業運営に欠かせない従業員を確保できなければ、人手不足倒産につながってしまうリスクもあります。人材の定着や人材の採用に課題を抱えている企業ほど、手取り時間を増やすための取り組みは欠かせません。
今後、「手取り時間」という言葉は世間に浸透するかもしれません。人材確保や人材採用を有利に進めるうえで、手取り時間の増加だけでなく、企業内部の福利厚生を充実化させる重要性は高まっています
さまざまな対策が考えられますが、自社の状況に合わせて最適な制度を導入し、従業員の満足度を高めていきましょう。
従業員の手取り時間を増やすための選択肢となるのが、業務のアウトソーシングです。生産性が乏しい業務をアウトソーシングできれば、従業員はコア業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上につながるでしょう。
社会保険労務士法人とうかいでは、社会保険手続きのアウトソーシングを承っています。従業員1,000名以上の大企業も対応しておりますので、企業規模に関係なくお気軽にご相談ください。