勤怠管理システムを導入したくても、さまざまなサービスがあり、自社に合ったシステムが何なのかわからないといった声を多く聞きます。多くのサービスの中から、自社に適した勤怠管理システムを選択するためには、従業員規模や雇用形態などによっても、選ぶポイントが異なります。そこで、今回は、勤怠管理システムのなかでも、導入を検討することの多い「jinjer勤怠」と「KING OF TIME」を取り上げ、比較しながら選び方のポイントを、ITに詳しい社会保険労務士が解説していきます。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
・NHK「あさイチ」
・中日新聞
・船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
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サービス残業問題などが社会問題として取り上げられるなど、働く人と労働時間に関するトラブルは注目を集めるニュースのひとつです。とくに長時間労働は、体も心も壊してしまったり、労災事故を発生しやすくするなど、大きな問題に発展することが多いものです。残念なことに、過労死や自殺といった問題もなくなっていません。年々、従業員の勤務時間に関する法令が厳格になってきたのもそうした背景があるからです。
会社は、働く従業員の勤務状況を把握し、過重労働などが発生していないか、法令などに沿った運用がされているか、管理していかなくてはなりません。従業員の健康維持は、会社が果たす役割の1つであり、適当に出退勤を記録しておけばよい、というものではないのです。出退勤は記録していても、月に1度給与計算する時に確認するといった管理方法では不十分です。従業員の勤務状況を正確に、リアルタイムに把握しておかなければなりません。長時間労働の傾向が見られた時点で対応していかなければ、過重労働抑制のための対応も後手に回ってしまいます。
出退勤の記録を入力する負担を軽減し、集計ミスなどを発生させないためにも、従業員の勤務状況が適切に管理できるシステムが必要と言えるのです。法律上では、従業員の勤怠情報システムを利用すべきとは定義していません。「原則、労働時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」とうたってはいるものの、その手法については各企業に任されています。とはいえ、客観的で正確な記録を行うには勤怠管理システムなどを利用し、運用することが、人事労務担当者にとっても、従業員にとっても、手間なく効率のよいものと言えるでしょう。
今では、多くの企業で勤怠管理システムが導入されています。ただ、従来オンプレミスで利用していたシステムをSaaSのサービスに切り替えたい、多くのサービスがあるので自社にあったシステムを見直したい、といった企業も増えてきました。
そこで、今回は勤怠管理システムのなかでも、人気のある「jinjer勤怠」「KING OF TIME」に注目してみます。
とくに利用方法についてあれこれ調べなくても、比較的簡単・直感的に利用できる勤怠管理システムが「jinjer(ジンジャー)勤怠」です。UIもシンプルで見やすいため、管理する人事労務担当者ももちろんですが、実際に勤怠打刻を行う従業員にとっても、申請や操作方法が簡単です。
【jinjer勤怠の機能】
出退勤管理 さまざまなデバイスでの 打刻が可能 | 有休管理 年5日取得義務などの アラート機能もあり | ワークフロー 10段階までのワークフロー 設定が可能 | 予実管理 予実管理、AIの残業予測 も可能 |
集計機能 100項目以上の集計項目の 設定可能 | シフト管理 シフト申請承認機能で他店舗へのヘルプ依頼機能もあり | アラート機能 36協定時間などの アラートも可能 | 多言語対応 英語、タイ語、ベトナム語 など多言語対応も可能 |
【料金プラン】
初期費用:10万円
月額300円〜/人
1 さまざまな勤怠管理機能が追加料金なく利用できる
jinjer勤怠の魅力は、追加料金なく、多彩な機能が利用できることも魅力です。多くの勤怠管理システムでは、機能を利用するためにオプション追加しなくてはならないこともあり、費用がかかるケースも発生します。Jinjer勤怠の場合にはその心配がありません。もちろん有料オプションのものもありますが、勤怠管理機能に限れば、追加料金が発生しません。
2 スマホの管理画面がある
意外と便利なのが、管理画面の操作をスマホで行えるというものです。多くの勤怠管理システムは、管理画面についてはPCのwebブラウザを利用するものが多いはすです。Jinjer勤怠の場合には、スマホからアクセスできるので簡単・便利です。
3 Jinjerシリーズでトータルに管理できる
Jinjer勤怠のほかにも、jinjer給与、jinjer人事労務、jinjer経費といった連携可能なサービスも豊富です。勤怠管理システムと合わせて、給与計算システムなどの導入や変更も検討している場合には、シリーズで導入すると、利便性が高まるでしょう。
「KING OF TIME」は、SaaSの勤怠管理システムの中でも、非常に人気のサービスです。出退勤の打刻手段が豊富で、ICカードを利用した打刻方法から顔認証や指紋認証といったものまで、企業に合った打刻手段を選べるのが魅力です。またサポート体制が充実しているので、自社の就業規則にマッチさせるための機能設定をカスタマイズしたり、必要な帳票が出力できます。多様な労働時間制を導入している企業などにとっては、うれしいサービスではないでしょうか。
【KING OF TIMEの機能】
出退勤管理 | 有休管理 | ワークフロー | 労働時間制 | アラート機能 |
打刻手法が多様。指紋認証やGPS打刻なども可能 | 入社日からの休暇の自動付与設定や会社独自のオリジナル休暇も管理可能 | 5段階までの ワークフロー設定が | フレックスや変形労働などさまざまなルールに対応可能 | 指定する条件設定で過重労働を抑制できる |
データ出力 | 補助項目 | シフト・スケジュール管理 | 多言語対応 | 集計機能 |
さまざまな形式でのアウトプットが可能 | オリジナルに項目設定が可能で、工数管理などにも利用可能 | シフトやスケジュール登録も可能。予実管理や人件費概算管理にも利用可能 | 英語、タイ語に対応可能。海外のタイムゾーン設定も可能 | 100項目以上の集計項目の設定可能 |
【料金プラン】
初期費用0円
月額費用300円/1人あたり<30日無料トライアルあり>
1 打刻手法が豊富
勤怠の打刻手法が16種類と圧倒的に豊富です。他システムと比べてその数は非常に多いので、自社のニーズに合った打刻手法が必ず見つかるはずです。
2 豊富な機能で業務効率化が実現できる
プロジェクトの工数管理などもできるので、勤怠管理とプロジェクト管理として予実管理が可能なのは、うれしい機能です。勤怠管理以外の機能も豊富にあるので、活用場面が多いでしょう。
3 システム連携機能が優秀
システム連携できるサービスが多いので、自社で利用しているサービスとのシナジーも狙えます。
人気の勤怠管理システムである「jinjer勤怠」と「KING OF TIME」
どちらもそれぞれにメリットがあります。どのような観点で選べばよいのでしょうか。まずは勤怠管理システムを選ぶ際に、前提として気をつけておきたいポイントがいくつかあります。
ここが一番の肝になるでしょう。自社にとって必要な機能を洗い出しておくことをおすすめします。例えば、飲食店などであれば、シフト制で勤務している場合も多く、シフト管理機能が必要ということになります。また、外回り営業が多い会社であれば、出先で出退勤記録機能が必要ということになります。
勤怠管理システムを通じて集約された勤怠情報は、給与計算や労務管理でも利用されることになります。自社で使用している給与計算・労務管理システムとの相性は確認しておくべきです。昨今は、多くのシステムがAPI連携可能であったり、CSV取り込みが行えますが、念のためにも確認しておくことをおすすめします。
勤怠管理システムといっても、SaaSやオンプレミスであるかによってもその費用は異なります。初期費用はもちろん、ランニングコストもチェックしておきましょう。機能の充実度によって費用も異なってきますので、しっかりチェックしておきます。
前提となる自社のニーズを洗い出し、周辺システムの利用状況を洗い出したら、次は実際に「Jinjer勤怠」と「KING OF TIME」を比較検討していきます。どちらも優秀な勤怠管理システムですが、いくつかの違いがありますので、以下の比較ポイントに沿って選ぶとよいでしょう。
【機能を比較する】
jinjer勤怠は、勤怠管理をはじめシフト管理、タイムカードの自動化、同じシリーズの給与計算機能など、幅広い機能が提供されています。一方、KING OF TIMEは、多くの打刻バリエーションがあるように勤怠管理に強みがあります。従業員の出退勤時間の管理、休暇申請、勤怠レポートなどに焦点を当てています。自社の勤怠管理に必要な機能を明確に把握しておきましょう。シフト管理、給与計算、休暇管理など、具体的なニーズに合致しているかどうかは重要です。オンプレミスのシステムと異なり、SaaSなので合致しなければシステム変更をすればよいという考え方もありますが、やはり導入にはコストも手間もかかりますので、初めにしっかりと要件定義をしておくことで、後から“失敗だった”ということを避けられます。両方のシステムの機能と機能の差異を比較し、自社の要件に最も適したものを選びましょう。
【インターフェースを比較する】
jinjer勤怠は、シンプルで使いやすいユーザーインターフェースが魅力です。利用が慣れていない人でも、直感的な操作が可能です。人事労務担当者も従業員自身も簡単に利用できるでしょう。KING OF TIMEも慣れれば使いやすいですが、jinjer勤怠よりも多くの機能があることから、UIの面でわかりにくい点があるかもしれません。システムの使いやすさであるUIは非常に重要です。デモや無料トライアルなどを利用して、実際の使用感を評価してみることもおすすめします。
【カスタマイズできるか比較する】
jinjer勤怠、KING OF TIMEもある程度カスタマイズオプションを提供しています。もちろんSaaSのサービスなので限界はありますが、企業のニーズに合わせてカスタマイズできるため、特別なカスタマイズが必要でない限りは問題ないでしょう。ただ、特定の業種や組織に特化したカスタマイズを希望する場合には、勤怠管理システムでオプションなどの提供があるか、柔軟なカスタマイズが可能かどうかを確認しておくべきでしょう。
【料金体系を比較する】
jinjer勤怠とKING OF TIMEの料金体系は、プランや従業員の利用規模によって異なります。初期費用のあり・なしも異なりますので、自社の予算に合わせて検討しましょう。単に安いほうを選択すると最適な解決策ではない場合もあります。まずは機能や利用場面、活用方法とのバランスを考慮することが重要です。
【サポートとアップデートを比較する】
勤怠管理システムのサポートやアップデートの頻度や方法も考慮すべき要素です。jinjer勤怠とKING OF TIMEも定期的なアップデートやバグ修正などサポート体制は充実されています。トライアルなどを利用してみて、自社に合っているかなども確認しましょう。
いくつかの比較ポイントを考慮しながら、自社の要件や予算に最も合致する勤怠管理システムを選ぶことが重要です。Jinjer勤怠もKING OF TIMEも、人気の勤怠管理システムだけあって、どちらもおすすめですが、デモやトライアルを活用して、実際の使用感や機能性を評価することも大切です。
勤怠管理システムの種類は豊富で、単に出勤や退勤、休日・休暇を記録するものから、さまざまな業務活用を前提にしたものまで多くあります。正確な情報の管理ができることは大前提ですが、そのほか勤怠情報を活用して、給与計算・休暇管理、人事管理などの業務やシステムとの連携なども想定しながら、どのような勤怠管理システムが自社のニーズに合致するのか、正しく見極めたいモノです。
今回ご紹介したjinjer勤怠とKING OF TIMEは、数ある勤怠管理システムのなかでも人気が高く利用する企業が多いものです。打刻機能のほかにも、さまざまな業界・業種に応じた管理機能を備えていますので、これから勤怠管理システムの導入や切り替えを検討している企業にとっては、選択肢となりうるのではないでしょうか。
当社では、ITに詳しい社労士が揃っております。もちろん御社に合った勤怠管理システムの導入や活用方法もご相談を受けさせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。