人事労務担当者であれば一度は耳にしたことのある「ジョブカン」。バックオフィス業務を効率化・サポートするさまざまなサービスが展開されています。有名どころの“ジョブカン勤怠管理”をはじめ、“ジョブカン給与計算”“ジョブカン経費精算”など、企業規模を問わず、多くの企業で利用されています。
今回は、企業経営を支えるバックオフィス業務の効率化のために「ジョブカン」全8シリーズをピックアップし、ITに詳しい社会保険労務士が丁寧に紹介していきます。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
・NHK「あさイチ」
・中日新聞
・船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri
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ジョブカンは、バックオフィス業務の効率化支援のための各種システムサービスです。中小企業から大企業まで企業規模を問わず利用されている人気のサービスです。ジョブカンには9つのサービスが展開されており、それぞれのサービスを連携することでさらなる業務効率化にも役立つのが特徴です。
【ジョブカンの9つのシリーズ】
シリーズ名 | 内容 |
ジョブカン勤怠管理 | 従業員の勤怠管理に利用 |
ジョブカン経費精算 | 従業員の経費申請や精算に利用 |
ジョブカン採用管理 | 採用業務における応募者管理に利用 |
ジョブカン労務HR | 従業員の労務管理に利用 |
ジョブカンワークフロー | 社内のあらゆる申請〜承認をワークフローシステムで利用 |
ジョブカン給与計算 | 従業員の給与計算に利用 |
ジョブカン会計 | 会計システムとして利用 |
ジョブカン見積/請求書 | 請求書や納品書などの作成に利用 |
ジョブカンApps | 業務用のアプリ作成に利用 |
【ジョブカンのその他サービス】
サービス名 | 内容 |
ジョブカンBPO | バックオフィス業務のアウトソーシングサービスとして利用 |
ジョブカン勤怠管理は、ジョブカンシリーズの中でも一番メジャーなもので、すでにご利用の会社も多いかもしれません。従業員の出勤・退勤時間や休暇情報などを記録し、集計するためのサービスです。フレックス制や裁量労働制といった勤務形態にも対応できるため、従業員の勤務形態に合わせて柔軟な勤怠管理が可能となります。シフト管理や工数管理にも対応していますので、小売店や工場勤務の従業員の複雑な勤怠管理にも大いに活用できるでしょう。また、出退勤時刻の打刻も、専用の端末やスマートフォンアプリ、指静脈認証打刻など多様な打刻方法が可能なため、さまざまな職場環境に合わせた利用が魅力です。
従業員の打刻データは、オンライン上で管理者や上司がリアルタイムで確認することができます。必要な情報を共有することができるので、遅刻や早退、欠勤情報の把握や、長時間労働に対し、適切な対応を行うことができます。また、有給休暇や特別休暇などの休暇情報を管理することもできます。従業員からの休暇申請を管理者や上司は承認することができます。
労働時間の正確な記録や労働法を遵守した運用は、年々厳しくなる一方です。しかしながら勤怠管理業務は、非常の多くの手間がかかるものです。企業としてはコンプライアンスに対応すべきなのは当たり前ですが、業務に関わる人事労務担当者の業務負荷は大きな課題でありました。また従業員の勤怠情報を把握すべき管理者や上司たちの業務負荷も大きいものでした。そこで、ジョブカン勤怠管理は、従業員の勤怠打刻に柔軟に対応するだけでなく、勤怠データを自動的に集計し、各従業員の労働時間や残業時間などを計算することで、給与計算や勤怠データの分析が容易になります。勤怠管理業務に関わる業務負荷軽減に大きく役立っているというわけです。
ジョブカン経費精算とは、従業員の経費の管理と精算を行うためのサービスです。従業員の出張費用や交通費や接待費など経費を効率的に管理、精算するために重宝されています。バックオフィス業務の中でも、従業員の経費精算は非常に面倒で手間がかかるものの、ミスが許されない業務の一つです。従業員が利用した経費情報を入力し、領収書や請求書といった必要な証憑を添付して申請することで、管理者や承認者は、Webブラウザ上で申請情報を確認し、承認や差し戻しを行うことが可能です。これまで、紙書類を用いて押印している会社にとっては、劇的な変化を感じられることでしょう。
経理担当者にとっては、経費の申請・承認が完了したデータをもとにFBデータが生成できるので、振込業務においてもネットバンキングでデータを取り込むだけでOKなので、手入力の手間やミスを防止できます。
また、ジョブカン経費精算を利用することで、各従業員の経費利用状況の把握も簡単になります。経費の分類やプロジェクトごとの集計など、さまざまなレポートや分析機能も提供されています。これにより、経費の傾向や使途を把握し、予算管理や経費削減策の立案に役立てることができます。申請履歴や承認履歴も残りますので、経費処理の効率化や透明性の向上を図ることができます。また、紙の領収書を保管管理の手間削減のためには、データ化できる経費精算システムは不可欠です。電子帳簿保存法やインボイス対応もしていますので、経費処理の手間やミスを軽減し、業務の効率化を促進します。
ジョブカン採用管理とは、採用活動を効率的に進めるためのサービスです。企業の採用活動は、求人媒体への情報掲載から応募者の管理、選考プロセスごとの進捗管理、面接スケジュールの調整、選考結果の共有など、さまざまな採用業務が発生します。忙しい採用担当者にとって、これらの業務をこなしながら、よりよい人材を見抜き、アプローチすることは、非常に労力がかかります。人材へのアプローチや会社の魅力づけは手を抜けません。すこしでも負担を軽くするには、やはり応募・選考に関わるルーチンワークの部分をいかに効率よくこなすかにかかっています。そこで、ジョブカン採用管理は、応募者からの応募データの一元管理や、書類・面接選考状況、面接のスケジュールの調整、評価の記録や関係者との情報共有といった手間のかかる作業を効率化できるのです。
ダッシュボード上に応募者の状況やプロセスを表示する機能も搭載されていますので、採用活動の把握が容易になります。
採用業務の効率化が進むことで、よりよい人材にスピード感をもってアプローチできますし、やりとりも円滑に進むことになります。
ジョブカン労務HRとは、従業員の労務管理業務を自動化したり、効率化を進めるために特化したサービスです。従業員の入社から退社まで、このジョブカン労務HRを利用することで、人事情報を一元管理できるので、業務の正確性や効率性を向上させることができます。
例えば、従業員が入社した際には、従来であれば従業員に関する各種書類を回収して、それぞれのシステムに入力したり、手続き書類に転記するといった作業が必要でした。ジョブカン労務HRにおいては、Webブラウザ上で、従業員自身に従業員情報の入力を依頼することも可能です。また、各種手続きに関する帳票も作成できますし、社会保険等の電子申請にも対応しています。
その他、年末調整時の書類の配布回収がWebブラウザ上で完結できますし、マイナンバー管理も可能です。人事労務業務の面倒な手続きの多くが、ジョブカン労務HR上で解決できるのはうれしいポイントです。
ジョブカンワークフローは、ジョブカンの業務プロセス管理機能です。企業において、業務決裁に関するプロセスは切ってもきれない重要なものです。しかしながら、従来、業務決裁は紙書類で各決裁者にハンコをもらうなど、決裁完了までに手間がかかったり、途中で停滞し時間がかかったりと、非効率な面が多くありました。そこで、ジョブカンワークフローでは、企業内の業務プロセスを効率化し、作業タスクや申請の進捗管理を明らかにし、承認フローの自動化によってスムーズな業務決裁・承認を支援するツールとなっています。主に、タスク管理、各種申請・承認フローの自動化を目的に、企業ごとに必要に応じてワークフローを設定することができます。申請者が記載した事項のデータが、設定した上司や関係者への承認プロセスが進行します。紙での回覧やメールやチャットでのやり取りも必要ありません。極力、手動の確認作業を省き、迅速な承認プロセスが進行していきます。また、期限がタイトな申請などについても、関係者に対してリマインダーを送信するといった支援機能も搭載されています。
また、何より進捗状況や承認状況を容易に把握したり、履歴が残ることで、内部統制上の円滑な運営も期待できます。
ジョブカン給与計算とは、従業員の勤怠情報、労働条件等に基づいて給与を計算します。ジョブカンシリーズとのスムーズな連携で、より効率的な給与計算が可能です。
ジョブカン給与計算では、基本的な給与計算に必要な機能が揃っていることはもちろんですが、従業員は自身の給与明細をオンライン上のマイページで確認することができ、またスマホにも対応しているので利便性が高いのが特長です。
給与計算担当者にとって、給与計算業務を行ううえ、ミスや漏れが一番気になるところです。ジョブカン給与計算では、ToDoリスト機能を活用することで、確認業務やタスク漏れがないようチェックできるのもうれしい機能です。
ジョブカンシリーズの中でも新しいのがジョブカン会計です。巷には数多くの会計システムがありますが、どのような会計システムが自社に適しているのかよくわからないといったこともあるでしょう。機能の優れた会計システムは多くあり、機能もコストも同水準であったりすれば、なおさら会計システム選びに迷ってしまうでしょう。そこで会計システム選びの1つのポイントとすると、他のバックオフィス業務とのシナジー効果が測れるかという点でしょう。経費精算データや給与計算データ、請求書機能などとの連携は大きな効率アップが見込めるはずです。とくに同シリーズの利用は、ストレスなくデータ連携が可能となります。
ジョブカン見積/請求書とは、商品やサービスの見積書の作成から、請求書の発行が可能となります。請求情報の一元管理が可能で、請求書の送付状況や入金状況を把握できます。未回収の請求や滞納の管理が簡単にできますし、顧客への支払い期限の通知や確認を行うことができます。
分析機能も搭載していますので、請求書の集計や売上分析など、収益分析や管理にも役立つでしょう。
ジョブカンAppsとは、ジョブカンシリーズの拡張機能の役割や社内のデータ資料の集約を行うなど、業務改善やDX推進を担います。プログラミングの知識がなくともアプリの作成も可能とあって、専任の情報システム部門の担当者の手を煩わすことなく、各業務担当者がアプリを作成・利用が可能となります。
ジョブカンBPOとは、バックオフィス業務のアウトソーシングを可能とするものです。BPOはビジネスプロセスアウトソーシングの略であり、ジョブカンでBPOを実現するというものです。そもそもジョブカンシリーズは、企業のバックオフィス業務の効率化を目的に設計されたサービスです。企業の担当者がそれぞれのサービスを利用することが前提となっています。一方でジョブカンBPOは、バックオフィス業務を外部にあうソトーシングすることで、システムサービスの削減やそれに伴う人件費の削減などを目的にされています。パートナー社労士とも連携されているので、専門家の目線で各種労働法に準拠し、就業規則に則った運用が実現できるというものです。自社にとって必要な部分だけをアウトソーシングすることも可能なので、人手が足りない業務、専門知識が必要な業務などに限定してアウトソースするといった活用も可能です。
多くのサービスを展開しているジョブカンシリーズ。バックオフィス業務のほとんどが網羅されているので、シリーズで利用することで、それぞれのシナジーが大いに発揮できることでしょう。ユーザは、一つのID/パスワードでそれぞれのサービスの利用ができます。
無料のお試し期間もあるので、まずは利用して体験してみることもおすすめします。サポート体制も、メールやチャット、電話などでも行えるので、安心です。
前段ではジョブカンのシリーズ利用をおすすめしましたが、もちろん既存の自社システムとの連携も可能です。シリーズ利用のようなシームレスな連携は難しいものの、API連携に対応している外部システムも多数あります。またcsvデータでのやりとりもできます。
シリーズを一気に導入は難しいものの、コンパクトに導入をしてみたいという企業においては、例えば、労務HRと給与計算から導入してみるといったことも可能です。どのような導入方法がベストなのかは、会社に合わせた業務フロー、導入方法をアドバイスしてくれる社労士もいますので、利用してみるのもよいでしょう。