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ジョブ型雇用とは? 導入のメリット・デメリットと従来のメンバーシップ型との違いを社会保険労務士が解説します。

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「人的資本経営」について、人事・労務の専門家である社会保険労務士が解説していきます

大企業をはじめ、中小企業においても導入するケースの多い「ジョブ型雇用」。働き方の変化が進む中、従来型のメンバーシップ型雇用からシフトされつつあります。欧米からスタートしたジョブ型雇用が、日本において定着するのかは、未知数の部分もあります。とはいえ、ジョブ型雇用のメリット・デメリットを知り、自社における雇用のあり方、人事制度について考えてみることも一つです。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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ジョブ型雇用とは?

そもそも「人的資本経営」とは何なのでしょうか?

ジョブ型雇用とは、企業が人材を採用する際に、あらかじめ仕事内容を明確に定義し、仕事内容と報酬を結びつけた雇用のかたちを言います。具体的な仕事の内容(ジョブ)が定義されるので、従業員にはその仕事内容に基づいたスキル、役割責任が求められるのが特徴です。欧米ではかなり前から普及しているこのジョブ型雇用の仕組みですが、日本においても仕事への考え方の変化や多様化によって、徐々に普及しつつあります。

最近では、大企業をはじめ中小企業においても、ジョブ型雇用を取り入れる企業もあり、“我が社でも導入を検討してみたい”という経営者や人事の方もおられるかもしれません。

これまでの日本の雇用のあり方とだいぶ異なる部分も多く、企業風土・文化にも影響することから、慎重にみる向きがあるのも事実です。とはいえ、よい面もあれば、懸念点があるなど賛否両論があるのは、どのような人事制度においても、同じことです。自社の現状の人事の課題や、今後のビジョンと照らしながら、自社にとっての採用や雇用のあり方を検討していきたいところです。

 

ジョブ型雇用とメンバーシップ型や職能型の違いとは?

背景「人的資本経営」の具体事例をまとめた「伊藤レポート」についてお話しします。

長らく日本では、メンバーシップ型と呼ばれる雇用の形が一般的でした。今でも多くの企業で、このメンバーシップ型の雇用、人事制度を採用されているでしょう。
メンバーシップ型の特徴は、

・総合職などとして新卒で一括採用を行うなど職務を限定していない
・年功序列、終身雇用
・勤務地が限定されておらず、転勤や異動がある
・職務内容によってはローテーションが行われる

といった、従業員に仕事を割り当てる方式です。かつて、昔の日本の企業では、就職し定年まで面倒みる代わりに従業員の忠誠心や帰属意識を高める、といった面が多く見られました。最近は、転職も当たり前となって、年功序列、終身雇用といったものは少なくなりつつあります。ただ、新卒一括採用、採用されてからはじめて配属される部署や職務が決定することは、まだ多いのではないでしょうか。

 

 

メンバーシップ型と同義的に使われるのが職能型と呼ばれるしくみです。職能型においては、過去の実績のなかで培われたであろう能力に応じた処遇がされます。等級に応じた基本給などをイメージしてもらえればよいでしょう。「○○ランクの人材は、概ねリーダークラスの業務がこなせる層である」といった運用をしている企業もあるのではないでしょうか?従業員を育成していくにも、階層別研修などを通じて、成長支援を行なっていくといったケースが多く見られます。

一方で、ジョブ型雇用は、欧米で取り入れられていた雇用制度で、日本においては外資系企業などで導入されるケースが多いものでした。ただ、最近では日本においても、仕事への考え方の変化や働き方の多様化によっても、ジョブ型雇用に目を向けられることが多くなってきました。従来の日本企業のあり方への疑問、このままではグローバル化についていけない、といった課題感も背景にあるでしょう。

ジョブ型雇用の特徴は、

・仕事内容、職務記述書(ジョブスクリプション)が明確である
・仕事内容に応じた労働条件が提示される
・必要なスキルがはっきりしている
・期待される目標や責任範囲が定義される

といった、従業員は約束した仕事と目標を達成する、企業は約束した待遇と報酬を提供するといった方式です。会社の仕事に必要なスキルを持った人材を採用するということになります。メンバーシップ型と大きく異なるのがわかるはずです。

【メンバーシップ型とジョブ型の違いのイメージ例】

  メンバーシップ型 ジョブ型
仕事の振り方 従業員の適性などに合った仕事を振る 必要な仕事に適した人材を採用する
人材 ゼネラリスト スペシャリスト
仕事の内容 大枠の仕事内容が決まっているが、細かく定義されていることが少ない 細かく職務記述がされている
報酬 年齢、経験年数、社歴などによって変わる スキルや期待目標の達成度など評価で変わる
職務コースなど 総合職で入社し、管理職を目指すといった階段式に上がっていく スペシャリストとしての専門性を高めていく。専門範囲の中に管理職があるケースも。
労働条件 終身雇用ベース 必要な仕事がある範囲での雇用
採用 新卒一括採用,ポテンシャル重視 中途採用,即戦力の期待
研修・教育 従業員の適性などを見ながら、教育していく 自身でスキル向上を行う。企業はスキルを高めるためのサポートは行う

時代遅れとも揶揄されるメンバーシップ型ですが、一概に悪いわけではありません。かつての日本企業にとっては、会社の帰属意識を高め、一致団結して業績を上げていくといった組織運営上、必要な雇用のあり方であったはずです。時間をかけて人材を教育・育成していけるという良い面もあるでしょう。

ただ、人口減少やグローバル化の波のなかで、新卒一括採用ができるのも一部のメジャーな企業に限られたり、そもそも働く人材が多様な働き方を望んでいるなど、時代にフィットしなくなった部分も多いのが実情です。ジョブ型雇用に注目が集まりだしたのも、そうした背景があるのです。

ジョブ型雇用のメリット・デメリットとは?

「人的資本の情報開示」は義務?分かりやすく解説します。

メンバーシップ型がダメで、ジョブ型が今どきで良い、という単純な話ではありません。ジョブ型自体は、欧米で何年も前から導入されてきた仕組みです。本来、特段目新しいというわけではないのです。ただ過去からあるはずのジョブ型雇用を、あえて今、日本企業が取り入れるか検討するには、やはりそのメリット・デメリットは、しっかりと理解しておきたいところです。そのうえで、自社に適した運用はどういうものなのか、考えていきたいところです。場合によっては、メンバーシップ型のメリットとジョブ型のメリットを生かしたハイブリッドな制度があるかもしれません。

ジョブ型雇用のメリット

仕事が明確であることがジョブ型の最大のメリットです。企業からすれば、必要な仕事に人材をジャストにアサイン、配置できるため、無駄な人員を減らすことができます。メンバーシップ型では、従業員に対して仕事をアサインするので、場合によってはアサインする仕事がみつからない、というケースもあり得るのです。その点、ジョブ型は仕事が人材をアサインするので、余剰な人員がいない、というわけです。無駄な人員を削減できるというと、メンバーシップ型の企業からすると、なんだか冷たいようにも感じますが、人材のパフォーマンスを最大限に発揮できる方法ともいえます。働く人材にとっても、ジョブ型のメリットはあります。新卒一括採用で、企業に入社したものの、“営業”なのか、“経理”なのか、“総務”なのか、入社しないとわからないというものに抵抗感がある人も少なからずいるでしょう。色々な業務を経験できる、というのはメンバーシップ型の魅力ではありますが、“この仕事をしたい”という人材にとっては、ジョブ型の職務が明確な仕事とのほうがよい場合もあるのです。自分の望む職務を選べ、会社都合による部署異動や職種変更がありません。

さらに、ジョブ型は企業にとって賃金を適正化するために大きな効果をはたします。メンバーシップ型においては、年功序列・終身雇用といった社歴や等級に応じて賃金を支払う必要があるため、パフォーマンスが低い人材においても、ある一定程度の賃金が発生することになります。対し、ジョブ型においては、職務の責任範囲や期待目標が明確なため、それに応じた報酬を支払うことになるのです。もちろん、ジョブ型雇用においても、与えた責任範囲がこなせなかったり、期待目標をクリアできないといったケースが発生しないとは限りません。しかしながら、職務に対する報酬の定義がある分、評価がしやすいというメリットもあります。従業員にとっても、ジョブ型はスペシャリストになればなるほど、それに応じた報酬を手にいれることができるというメリットがあります。

 
ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用にはデメリットの一面もあります。長らく日本企業を支えてきたメンバーシップ型からの脱却は、そう簡単なことではありません。従来の組織マネジメントが根本から変わることでもあります。企業の持つ風土や文化といったものは変化するものとして考えなくてはなりません。ジョブ型雇用は、仕事内容や責任範囲を明確に定義するので、仕事の成果が重要視されます。従来の会社への忠誠心といった日本企業の感性のようなものは薄くなっていくでしょう。仕事さえ完遂できれば、あとはOKということになりがちです。個人主義的な仕事のやり方にシフトしてしまう可能性が非常に大きいでしょう。

また、従業員自身の「自分の仕事はここまで」というものが明確になりますので、いままで誰かが知らずにやっていてくれたというような仕事は宙に浮いた状態になるかもしれません。そのような仕事は、ジョブ型雇用を機に一掃してしまおう、という割り切りをするか、浮いた仕事を職務として再定義するかといった作業も発生します。企業にとって、ジョブ型雇用を導入するということは、緻密に仕事の内容を定義しなおす必要が生じるのです。

 

日本では失敗? ジョブ型雇用の導入事例

上場企業の開示すべき「人的資本の開示項目」を詳しくご紹介します。

メンバーシップ型に慣れ親しんだ日本企業にとって、ジョブ型へのシフトはかなりの準備と体力が必要となってきます。なんとなく導入してみよう、、は失敗の落とし穴にはまります。そもそもジョブ型雇用を導入するには、仕事の定義はもちろんのこと、定義された仕事内容、期待する成果が果たせているかをマネジメントや評価する人材も必要となってきます。ジョブ型を導入したのはいいけれど、運用していく人材が従来のメンバーシップ型の考え方から切り替えが進まないと、ジョブ型への移行が難航することになるでしょう。

とはいえ、実際に導入を始めている企業も多くあります。どのような取り組みをしているのか参考にしてみてはいかがでしょうか。

【ニトリ】
全社でジョブ型雇用を一斉に導入するのではなく、ジョブ型を適用する従業員と適用しない従業員をわけて運用する仕組みを取り入れています。スペシャリストとゼネラリストを両輪で活用していこうという意図がみられます。

【三菱ケミカル】
幹部社員、管理職にジョブ型の導入をスタートしました。社内公募制で企業に必要な職務を定義し、応募を募ることで、従業員自ら希望する職務に応募できるよう制度を整えました。

【カゴメ】
等級制度を年功型から職務型への移行を進め、実力主義の制度へと変更、管理職以上には業績や評価と連動した報酬制度へと体制を変えています。

まとめ

ヒトに詳しい社労士が揃っております。ぜひお気軽にご相談ください。

注目の集まる「ジョブ型雇用」ですが、欧米のやり方そのままの導入は、難しいと言えるでしょう。そもそもアメリカのジョブ型雇用とヨーロッパのジョブ型雇用も同一ではありません。それぞれの企業文化に応じて特徴もあります。ゆえに、日本においては日本独自のジョブ型雇用を見つけていく段階にあるのです。企業自身が、試行錯誤しながら制度を導入していくことが重要でもあります。ジョブ型雇用といった名称の如何に関わらず、どうしたら自社の人材を資本として活躍してもらえる制度を整えられるのかが重要なのです。

驚くほど速いスピードで変化するビジネス環境の中、企業の雇用のあり方や人事制度については、日々考え、トライアンドエラーを繰り返しながら対応していく必要があります。経営者や人事担当者にとっては、非常に重くやりがいのあるテーマでもあります。

当社においても、人事の専門性を生かし、さまざまな企業のお悩みをサポートしていきます。人事制度の構築や改訂にお悩みであれば、ぜひ一度ご相談ください。

 

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