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2024年4月、労働条件明示のルールが改正!労働者を雇用する際や契約更新時に注意しておきたいポイントを社労士が解説します。

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企業への影響を見ていきましょう。

2024年4月から、労働者を雇用する際や、契約更新を行う際の労働条件の明示について、ルールが改正されることになりました。直前に慌てないよう、今のうちから対応の準備を進めておきたいものです。

今回は、労働条件明示のルールについて理解を深めることに加えて、改正のポイントをしっかりと押さえておきましょう。社労士がわかりやすく解説していきます。

 
目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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労働者を雇用の際に注意すべき「労働条件明示のルール」とは?

改正される「労働条件明示のルール」とはそもそも何でしょうか

労働者を雇用の際に注意すべき「労働条件の明示のルール」とは、労働基準法第15条において規定されているものです。労働者を雇用する際、労働者と雇用契約を締結することになります。その場合には賃金や労働時間、休日の規定等の労働条件を明示する必要があります。これは、労働条件を明示することで、企業と労働者の間に、“言った、言わない”や“そんなつもりではなかった”“聞いていたことと違う”など、食い違いが生じたりといった労使のトラブルを防止するためです。労働者が不当な労働を強いられないよう、あらかじめ条件を明確にしておき、安心して働いてもらいましょう、ということです。

労働条件の明示(労働基準法第15条)

1. 使用者が労働者を採用するときは、賃金、労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません。
2. 明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。
3. 2の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費等を負担しなければなりません。

企業が労働者に明示した労働条件に相違がある場合には、労働者には即退職する権利も認められています。例えば、労働条件に経理職として明示されていたにもかかわらず、実際は営業職であったケース、勤務地が東京都内で転勤なしと明示されていたが、実際入社したら地方に転勤を命じられたケースなどには、即退職が可能というわけです。加えて、もし就職のために住居を転居した場合であれば、必要な旅費等も企業側が負担すべき、と規定されています。

具体的に労働条件をどのように明示するかについては、労働基準法施行規則第5条において、次のように定められています。

 
  絶対的明示事項 相対的明示事項
対象 正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、すべての労働者

 

明示の方法

書面等

※労働者が希望すれば、電子メールやFAXSNS等でも明示可能。ただし、出力できるものに限られます。

口頭でも可能

※口頭でも可能ですが、書面等で明示できるものは対応しておいたほうがベター。
内容

1労働契約の期間に関する事項

2期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

3就業場所・従事すべき業務に関する事項

4始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇などに関する事項

5賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期、昇給に関する事項

6退職に関する事項(解雇の事由を含む)

7退職金に関する事項

8臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

9労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

10安全・衛生に関する事項

11職業訓練に関する事項

12災害補償・業務外の疾病扶助に関する事項

13表彰・制裁に関する事項

14休職に関する事項

なぜ「労働条件明示のルール」が改正されるのか?

背景も見ていきましょう。

労働者を雇用する際、互いの認識違いや説明不足といった労使のトラブルを防止するために労働条件明示のルールが規定されています。さらに2024年4月からは新たな明示事項が4項目追加されることになっています。

 

改正の背景としては、多様化する労働契約や処遇の改善に対応するためです。1つは有期契約労働者の無期契約転換への対応です。無期転換とは、有期契約の労働者が同じ企業で通算5年を超えて更新された場合には、従業員の申し込みがあれば、期間の定めのない労働契約に転換されるというものです。有期契約を企業が濫用しないため、そして働く人のための雇い止め不安を解消し、処遇の改善を目指しています。2つめには、働き方の多様化に伴って、勤務地限定正社員、職務限定正社員といった労働条件にも対応できる明示が求められるようになったことがあります。

2024年4月に改正される「労働条件明示のルール」の変更点

分かりやすく解説します。

2024年4月に改正される「労働条件明示のルール」の変化点は、4つあります。従来の労働条件明示のルールに加えて、以下の4つの事項を追加することになります。

1 就業場所・業務の変更範囲

すべての労働契約締結時には、労働条件の絶対的明示事項として、「就業場所・従事すべき業務に関する事項」を明示することとされています。今回の改正において、「変更の範囲」を追加する必要があります。この「変更の範囲」とは、将来の人事異動や配置転換などによって、変わる可能性のある就業場所・業務の内容を指します。

(就業の場所)
・雇い入れ直後:愛知県本社
・変更の範囲:愛知県本社および東海地方の支所
(業務内容)
・雇い入れ直後:経理業務
・変更の範囲:経理業務、総務業務、人事業務

ただし、就業場所や業務内容が限定されていない場合や特定が難しい場合には、以下の記載も可能です。

(就業の場所)
・会社の定める事業所
(業務内容)
・会社が指示する業務
 

2 更新上限の有無と内容

有期労働契約(更新含む)の締結時には、「更新上限の有無」の記載が必要です。更新上限を有とする場合には、その「更新回数または通算契約期間の上限」を記載しなくてはなりません。新たに更新上限を設けたり、更新上限を短縮する場合には、有期労働者本人に説明する必要があることも忘れてはなりません。

3 無期転換申込機会

4 無期転換後の労働条件

今回の改正により、有期労働契約で無期転換ルールの対象となるとき、無期転換を申し込む権利が発生することになります。その権利が発生するタイミングごとに無期転換できる旨、転換後の労働条件を明示する必要があります。

 

2024年4月改正前までに、企業の人事労務担当者が確認すべき対応事項とは?

しっかり押さえておきましょう。

2024年4月からの「労働条件の明示ルール」の改正。新たに労働契約を締結する際や、有期労働契約の更新を迎える場合には、新しいルールに沿って運用していかなくてはなりません。従来の「労働条件の明示ルール」に加えて、新たな4つの改正点を追加していく必要があります。企業の人事労務担当者にとっては、4月の忙しい時期に慌てて対応するのでは間に合わないこともあります。今のうちから、準備を進めておきましょう。

とくに現在すでに有期労働契約のもと、勤務している従業員の労働契約・労働条件を確認することは重要です。2024年以降に、無期転換の申込を行う権利が発生する従業員の有無は、早急に確認しておくべきでしょう。今回の改正は、無期転換の権利が発生するタイミングごとに、その旨の明示が必要とされています。有期労働契約である契約従業員、パートやアルバイト従業員を多く雇用する企業は、とくに注意が必要です。しっかり労働契約期間や無期転換のタイミングなどを管理していないと、後々労使のトラブルに発展することもあります。

無期転換への申込権発生のタイミングとは?

無期転換は、同一の企業との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合に、有期契約労働者の申込によって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるというものです。申込があれば、無期労働契約が成立し、企業側は断ることはできません。この有期労働契約の「5年」は、通算期間となります。

 

無期転換ルール(参照:厚生労働省)https://muki.mhlw.go.jp/

有期雇用特別措置法による例外ケース

法改正後、無期転換への申込を行う有期契約の従業員も増えるでしょう。そのため、無期転換後の従業員のための就業規則整備も検討しなくてはなりません。無期転換のルールは、申込があればすべて受け入れなくてはなりませんが、「有期雇用特別措置法による例外」も認められています。就業規則に盛り込むなどの対応が必要なケースもあるでしょう。自社の有期契約従業員の在り方について、今一度考え、整理しておく必要があります。

高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例(参照:厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000075676.pdf

 

まとめ

DXやIT活用に関してのご相談は
とうかいにお任せください。

2024年4月からの改正である「労働条件明示のルール」ですが、まだまだ時間があるからとのんびりしてもいられません。とくに有期労働契約の従業員を抱える企業は、早急に準備を進めたいところです。まずは自社の有期労働契約従業員の契約状況、無期転換ルールに照らした結果状況など、現状把握が必要です。法改正に対応した労働条件通知書や労働契約書の準備はもちろんのこと、無期転換に関する明示事項については、日頃の労務管理をしっかり行なっていないと、ついうっかり忘れていた、ということにもなりかねません。企業の状況によっては、就業規則の見直しが必要な場合もあるでしょう。
 

当社はさまざまな人事労務領域の問題・課題へのアドバイス、フォローを行なっています。もちろん、今回の労働条件明示のルールの改正のような、重要な対応タスクについても、しっかりサポートさせていだきます。自社の労働条件通知書や労働契約書が、法に適ったものなのか、法改正にどのように対応したらよいのか、ご心配な点があれば、まずはご相談ください。

 

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