労働基準法における休日とは、労働契約上、労働の義務がない日を指します。
休日にはさまざまな種類があり、それぞれに違いやルールがあります。
もし企業がルールを破り労働者に対して休日を与えなかったり、休日出勤に対して適切な賃金を支払わなかったりすれば、労働基準法違反となり罰せられます。
そこで今回は、休日の定義から、企業が労働者に休日に仕事をさせる際の考え方、休日手当や残業代の計算方法などについて社労士がご紹介します。
経営者や管理職、人事・労務担当者が知っておきたい休日に関する注意点を具体的にまとめましたので、疑問解決に役立つでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
社会保険労務士法人とうかい
執行役員 社会保険労務士 小栗多喜子
同社、人事戦略グループマネージャーを務め、採用・教育を担当する。商工会議所、銀行、Adeco,マネーフォワードなどセミナーや研修講師も精力的に行っている。労働法のアドバイスだけではなく、どのように法律と向き合い企業を成長させるのかという経営視点でのアドバイスを得意としている。
主な出演メディア
その他、記事の監修や寄稿多数。
取材・寄稿のご相談はこちらから
休日にはさまざまな種類があり、労働基準法で定められている休日には、「法定休日」と「法定外休日」の2種類があります。
労働基準法違反やトラブルを未然に防ぐためにも、使用者・労働者のそれぞれが法定休日と法定外休日の違いを正しく理解しておくことは重要です。
ここからは、法定休日・法定外休日の概要や法定休日を特定するメリット・デメリットをご紹介します。
また、多くの会社の就業規則に定められている「振替休日」「代休」「年間休日」についてもご紹介しますので、しっかり理解しておきましょう。
法定休日とは労働基準法で定められている休日のことで、以下のように定められています。
使用者は労働者に対して毎週少なくとも1日以上の休日を与えなければならない
変形労働時間制の場合は、4週間を通して4日以上の休日を与えなければならない
変形労働時間制とは、労働時間を月単位・年単位で調整することができる制度です。
変形労働時間制を適用する企業で、4週4休の適用を就業規則等で定めている場合は、1週間に1日以上の休日を与えていなくても問題ありません。
日本では日曜日を法定休日にしている企業が多いですが、必ず就業規則に規定しなければならないという決まりはありません。
1週間の起算日を就業規則等に規定していなければ暦通り「日曜日」が起算日となります。
なので法定休日を特定していない場合でも、起算日から1週間のうちに休日が1日以上あれば法定休日を与えていることになります。
法定外休日とは会社が任意で定めた休日のことで、法定休日以外の休日のことをいいます。
例えば、土曜日・日曜日の週休2日制を導入している企業で、日曜日を法定休日にしている場合、土曜日が法定外休日となります。
振替休日とは、もともと休日と定められていた日を労働日とする場合、代わりに近接する他の労働日を休日にすることです。
振替休日を取得するには、事前に労働日と休日を入れ替えなければなりません。
振替休日はあらかじめ休日と労働日を入れ替えているので、休日労働にはなりません。
ただし、振替休日によって週40時間を超える場合には、40時間を超えた部分については割増賃金を支払わなければならないので注意しましょう。
労働基準法に振替休日の取得制限期限についての規定はありませんが、基本的には、労働基準法115条で定められている「賃金その他の請求権の時効」が適用され、3年で時効を迎えて休みを取る権利が失効します。
しかし、実務上は賃金計算期間内に振替休日が取れない場合は、「賃金の支払い5原則」である【全額払いの原則】の観点から、週40時間を超えた部分について割増手当の支払いが必要となります。
そのため、就業規則等では振替休日は給与計算期間内に取得するというルールを設けることがおすすめです。
代休とは、上記で述べた振替休日とは逆で、休日出勤した場合に休みを後日与えることです。
振替休日が「事前」に休日を変更するのに対し、代休は「事後」に代わりとなる休日を決めます。
代休の場合はもともと休日だった日に働いてもらったので休日労働となり、割増賃金を支払わなければなりません。
代休も法律上、取得制限期間は決まっていませんが、振替休日同様に3年で請求権が時効となります。
求人広告や採用ページなどでよく見かけるのが「年間休日105日」という規定です。
なぜ年間休日は105日なのでしょうか。
法定休日の項目で述べたように、労働基準法では以下のように定められています。
1日の労働時間を8時間、1週間の合計が40時間以内でなければいけない
1年は約52週なので、52週×40時間=最大年間労働時間2080時間となります。
そして最大年間労働時間2080時間÷1日8時間=260日となり、この決まりでも年間の所定労働日数は260日としていることが多くなっています。
これらのことから、企業の多くが年間休日を105日に規定しているのです。
週休2日制を導入する理由は、労働基準法第32条に「1日の労働時間を8時間、1週間の合計が40時間以内でなければいけない」と定められているからです。
例えば、労働時間9時~18時(休憩1時間を含む)、月曜日~金曜日が労働日と定められている会社の場合、
8時間(1日の労働時間)×5日(労働日数)=40時間
休日と休暇はどちらも働かない日という点では同じですが、いくつか違う点があります。
ここでは、休日と休暇の違いについて詳しく解説します。
休日とは、労働義務がもともとない日のことです。
例えば、会社の就業規則に月曜から金曜まで、1日8時間の週40時間勤務、土日休みと定めているとします。
その場合、一般的には月曜から金曜までが労働義務がある日、土日が労働義務のない日になります。
土日のように労働義務がない日のことを休日といいます。
ひとつ注意しなければならないのが、いつが休日になるかは会社の就業規則によって変わってくるという点です。
カレンダーでは祝日になっていても、就業規則に祝日を休日と定めていない場合は休日とはなりません。
休暇とは、労働義務はあるが労働を免除された日のことをいいます。
例えば、上記の休日の定義のような就業規則の会社の場合、労働義務のある月曜と火曜の労働を免除されたとします。
この場合、この労働を免除された月曜と火曜の休みのことを休暇といいます。
ただし、夏季休暇や年末年始休暇が休暇にあたるか休日にあたるかは企業によって異なります。
休日には法定休日と法定外休日の2種類がありますが、休暇にも「法定休暇」と「特別休暇枠」の2種類があります。
法定休暇とは労働基準法によって定められた休暇のことで、年次有給休暇や生理休暇、子の看護休暇などがあります。
年次有給休暇以外の法定休暇は有給でも無給でもかまわず、決定するのは企業です。
労働者の賃金に関係することなので、トラブルを防ぐためにもあらかじめ就業規則に細かい条件を記載しておきましょう。
一方、特別休暇枠とは企業が独自に定めた休暇のことです。
例えば、リフレッシュ休暇やバースデー休暇などがあり、特別休暇枠は福利厚生として企業価値を高め、労働者のワークライフバランスの手助けをするといった目的があります。
労働基準法に定められている休日とは法定休日のことです。
法定休日とは、1週間に最低1日もしくは4週間のうちに4日以上の休日を与えなければならないという規定でした。
では、企業が労働者に法定休日を与えなかった場合、何か罰則をうけるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
企業が労働者に法定休日を与えなかった場合、労働基準法により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
労働基準法における「1日」とは、同じ日付の0時から24時までの連続した24時間を意味します。
よって、前日12時から24時までと翌日0時から12時までを休日として与えても、時間的には連続24時間ですが日付をまたいでいるので休日を与えたことにはなりません。
ただし、交代制勤務や旅館業などは例外です。
労働基準法では、以下のような法定労働時間、休憩、休日に関する制度が定められています。
しかし、急なトラブルなどに対応するため法定労働時間を超える残業や休日出勤を労働者にお願いすることもあるでしょう。
その場合、企業と労働者の間で事前に「36(サブロク)協定」を書面で締結し、労働基準監督署へ届け出を提出しなければなりません。
また、労働契約や就業規則に36協定の範囲内で時間外労働や休日出勤を義務付けることを記載しておく必要もあります。
もし、企業が労働者と36協定を結ばずに時間外労働や休日出勤をさせた場合、労働基準法違反となり「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
法定休日に休日労働をさせた場合、割増率は35%となります。
【割増率の計算方法】
基礎賃金(1時間あたりの賃金)×1.35(割増率)×法定休日労働時間=法定休日賃金
【基礎賃金の計算方法】
月給(手当は一律支給のものを含めて計算)÷月平均所定労働時間数
例えば、基礎賃金が2,000円で8時間休日労働をさせた場合の割増賃金は以下のようになります。
2,000円×1.35×8時間=21,600円
企業は21,600円の法定休日賃金を労働者に支払わなければなりません。
法定休日に休日労働をさせ残業をさせた場合、残業手当は付かないので残業代を支払う必要はありません。
ただし、法定休日の22時~24時については、別途25%の深夜割増手当を含めた60%(35%+25%)の割増賃金の支払いが必要です。
【深夜手当の計算方法】
基礎賃金×1.6(深夜の割増率)×休日深夜労働時間数=残業代(深夜手当)
例えば、基礎賃金が2,000円で22時~24時の2時間残業をさせた場合の割増賃金は次のようになります。
2,000円×1.6×2時間=6,400円
よって、企業は6,400円の残業代を労働者に支払わなければなりません。
法定外休日に労働者を働かせ残業させた場合、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えると割増率25%の賃金を支払わなければなりません。
【法定外休日出勤の計算方法】
基礎賃金(1時間あたりの賃金)×1.25×法定外労働時間数=法定外休日労働手当
例えば、基礎賃金2,000円の労働者が労働日の月曜~金曜までは残業なしで7時間ずつ、法定外休日の土曜日に出勤し7時間働いたとします。
この場合、月曜~金曜までの5日間で35時間働いていることになり、土曜日に働いた7時間のうち5時間は割増賃金が発生しませんが、残り2時間は残業扱いになるので25%の割増賃金が発生します。
【割増賃金の計算方法】
2,000円(基礎賃金)×1.25(割増率)×2時間(法定外労働時間)=5,000円(残業代)
また、法定外休日に深夜労働(22時~午前5時)を場合の割増率は、法定時間内であれば25%、法定労働時間を超えたら50%です。
さらに、法定外休日に労働し、月の残業時間数が60時間を超えた場合には、割増率50%となります。
以下に該当する場合、労働基準法違反にあたる可能性が高いです。
法定休日に時間外労働・休日労働をさせる場合、対象となる労働者やどんな場合に時間外労働・休日労働が可能かなど会社の独自ルールの詳細を決めなければなりません。
36協定を締結せずに時間外労働や休日出勤を強制させると違法となります。
労働基準法の「時間外労働の上限規制」に、「時間外労働は原則、月45時間、年360時間を上限とする」と定められています。
これは、長時間労働による心身の負担を可能な限り減らし、労働者のワークライフバランスの実現をはかるために導入された対策です。
上限を超えて働かせると労働基準法違反となり「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」となるので注意しましょう。
ただし、特別な事情がある場合、使用者と労働者の合意があれば上限を超えることは可能です。
法定休日に休日出勤や時間外労働をさせた場合、会社は割増賃金を支払わなければなりません。
よくあるのが、「管理職は休日出勤や時間外労働の割増賃金は不要」という間違いです。
「管理監督者は労働時間や休日に関する規定から除外する」と労働基準法に規定されていますが、管理監督者=管理職ではありません。
管理監督者とは、「経営者と立場が同じ」「出勤・退勤の裁量権を持っている」「賃金等に優遇措置が講じられている」などの条件を満たす人のことを指します。
部長や課長などの管理職はあくまでも社員のひとりです。
管理職の労働時間や休日に関する取り扱いも一般社員と同じであるため、割増賃金額をきちんと算出し支払いましょう。
「休日」について、人事労務を整備しきれず誤った方法で運用されているケースも少なくありません。どうやって改善していこうか、未払いや罰則はあるのかなどお不安がある場合は専門家に一度相談してみることをおすすめします。
法定休日の特定や変更の手続きにはルールがあります。
労働者とのトラブルにもつながる可能性があるので、法定休日の扱いについてしっかり把握しておきましょう。
労働基準法には法定休日を定めなければならないという規定はありません。
もし法定休日を特定していない場合、法定休日を与えたかどうかどのように判別するのでしょうか?
会社の就業規則に起算日となる曜日が決められている場合はその曜日から、起算日が決められていないときは日曜日から1週間以内に休日を与えていれば法定休日を与えたことになります。
もし、起算日や日曜日から1週間以上休日を与えていない場合、どの日を法定休日と考え、割増賃金を払えばよいのかわかりません。
トラブルになるケースもあるので、どの日に割増賃金を支払うのか事前に決め、内容を就業規則に書いておく必要があります。
では、法定休日を規定するメリットとは一体何なのでしょうか。
法定休日を特定するメリットには以下のようなものがあります。
反対に、法定休日を特定することにデメリットがある場合もあります。
それは勤務日が労働者によって違う場合です。
このような場合は休日も労働者によって違うので、法定休日の曜日を特定してもその日に休める人もいれば休めない人も必ず出てきてしまいます。
勤務日が労働者によって異なる場合には、労務管理上、法定休日を特定しないほうがよいでしょう。
労働条件の改善など正当な理由があれば法定休日の変更は可能です。
ただし、労働者全員の同意が必要になります。
法定休日を変更する際の手続きの流れは以下の通りです。