人事労務管理は、従業員のイベントが発生する都度、書類作成や行政機関への提出など、煩雑な作業を行わなくてはなりません。会社の規模が大きくなるにつれ、属人的な作業は限界となり、人事労務管理に関するシステムを検討するようになってくるのではないでしょうか。人事労務管理システムは、書類の作成や電子申請まで人事労務担当者の負担となっている作業をサポートしてくれる機能が多くあります。そこで今回は、その中でも利用者の多い「オフィスステーション」に着目し、「e-Gov」や「マイポータル」を利用して、電子申請をより便利に行うための、事前準備や使い方などを解説していきます。
社会保険労務士法人とうかい
執行役員 社会保険労務士 小栗多喜子
同社、人事戦略グループマネージャーを務め、採用・教育を担当する。商工会議所、銀行、Adeco,マネーフォワードなどセミナーや研修講師も精力的に行っている。労働法のアドバイスだけではなく、どのように法律と向き合い企業を成長させるのかという経営視点でのアドバイスを得意としている。
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『オフィスステーション』とは、クラウドで提供される人事労務管理のひとつです。あらゆる人事労務業務に関わる手続きや処理が行えます。会社に応じて必要な機能をセレクトして利用できるのが特徴です。加えて、帳票対応数の多さは、他の人事労務管理クラウドに比べ、一歩リードしている印象です。104種類の帳票に対応しているため、ほとんどの手続きはこの『オフィスステーション』で対応可能でしょう。また、法改正や様式変更なども定期的に更新されるので、書類の不備による差し戻しも防止できます。「e-Gov」や「マイナポータル」との連携が可能ですので、電子申請もスムーズに行えます。行いたい手続きが画面上でストレスなく完結できることは非常に大きなメリットでしょう。
【オフィスステーション】
人事労務管理クラウドを利用したいものの、費用が高い、使いたい機能が限られているなど、お悩みの場合もあるでしょう。例えば、「有休管理は勤怠システムで管理している」「給与明細は給与システムのほうで利用したい」といった場合には、オフィスステーション労務を利用すればよいわけです。使いたい機能をセレクトできるので、非常に便利です。
【オフィスステーションのラインアップ】
○オフィスステーション労務 社会保険の手続きをはじめとした作業の効率化にメリットの大きいのが、このオフィスステーション労務。ペーパーレス、電子申請など、格段に業務効率が向上します。
○オフィスステーション年末調整 社員からの年末調整書類の回収やチェックが簡単に。年に1度しかない業務とはいえ、従業員が多い会社にとって、この業務の負担軽減は非常にメリットが大きいものです。
○オフィスステーション給与明細 すでに給与計算システムなどをご利用の場合には、給与計算システムのオプションで給与明細web配信を利用しているケースは多いかもしれません。こちらは、ご利用の給与計算システムにweb配信の仕組みがない場合などでも、簡単に利用できますので、紙の給与明細を印刷したり、封入している作業が削減できます。
○オフィスステーション有休管理 Excelでの管理を行なっている場合もあるかもしれません。ただ、Excelでの管理は煩雑になりますし、従業員が多くなれば間違いが起きやすくもなります。年次有給休暇が年5日取得義務化され、ますます有休管理が重要になっていますので、有休管理のためのクラウドシステムは非常に利用しやすいものとなっています。
○オフィスステーションマイナンバー 従業員からマイナンバーカードの控えコピーを受け取るケースはありませんか? もしもそのコピーを紛失したり、管理方法がずさんであれば後々大問題に。セキュリティがしっかりとしたシステム上でマイナンバーの収集や運用を行うことをお勧めします。 |
『オフィスステーション』は、利用人数に応じた従量課金をベースに料金設定されていますので、従業員が少ない会社で利用しやすいでしょう。
○料金(参考)
登録料:110,000円 月額利用料:440円/従業員1名 ※従業員が10名以下の場合は、一律4,400円 |
社会保険や労働保険の手続は、人事労務担当者にとって負担の大きい仕事の一つです。とくに、手続きや届出を紙書類でやりとりしている場合には、記入の手間、役所に届出に出向く、書類のファイリングなどの作業が発生します。書類に誤りがあれば、差し戻し、再記入して届出、といった同じ作業が再度発生してしまいます。ぜひとも電子申請を利用して、作業や移動時間の削減をしたいものです。そこで利用するのが「e-Gov」です。「e-Gov」とは、総務省が運営する行政情報のポータルサイト。さまざまな行政手続きの電子申請が可能です。無料で利用できるため、ぜひ利用したいものですが、いくつかの難点があります。“操作が複雑なこと”“事前準備が面倒”“わかりづらい”といった声も聞かれます。徐々に改善されつつはあるものの、まだまだネガティブな意見も聞かれます。
そこで利用したいのが、『オフィスステーション』と連携することにより、「e-Gov」で電子申請をする機能です。「オフィスステーション」は、多くの帳票が用意されていますので、わざわざ役所に出向かずとも、「e-Gov」電子申請連携で手続き・届出が可能です。しかも、「e-Gov」単体で電子申請するより、操作も簡単でわかりやすく、処理することが可能です。
「e-Gov」を使いこなし電子申請を行うなら、外部連携APIを利用し『オフィスステーション』に連携することをお勧めします。
『オフィスステーション』は、直感的に操作が可能で、「e-Gov」単体で電子申請を行うより、断然便利です。『オフィスステーション』自体はクラウドシステムであるため、利用登録をし、会社情報や従業員情報を設定すれば利用可能です。PCにシステムをインストールするなどの必要はありません。続いて、「e-Gov」を利用するための事前準備を確認しておきましょう。
STEP1 電子証明書を取得する
電子申請には、「電子証明書」の取得は不可欠です。電子証明書の発行機関はさまざまありますので、自社に適した発行機関の中から、電子証明書を取得します。電子証明書の取得には、数日から数週間かかるものまでありますので、手続きや届出期限が迫っている場合には、まず電子証明書取得の手配に取り掛かることをおすすめします。
STEP2 「e-Gov」アカウントの取得する
『オフィスステーション』の利用準備が整ったら、「e-Gov」アカウントの取得も忘れずに行いましょう。「e-Gov」アカウントは、「e-Gov」サイトから取得することが可能です。すでにアカウントをお持ちの場合でしたら、STEP3を行うことになります。
【「e-Gov」サイト】
STEP3 「e-Gov」アカウントを『オフィスステーション』に紐づける
「e-Gov」アカウントの取得ができたら、『オフィスステーション』にその情報を紐づけることになります。『オフィスステーション』のメインページから、利用者登録として「e-Gov」アカウントを登録する画面があります。
STEP4 電子証明書を登録する
STEP1で取得した電子証明書を、『オフィスステーション』に登録します。
STEP1〜4まで終了すれば、各種手続きの電子申請が可能になります。
社会保険や労働保険の電子申請を行う場合、「e-Gov」を利用した申請の他に、「マイナポータル」を利用した電子申請も可能です。
「マイナポータル」とは、2017年にスタートした国民の行政手続きがオンラインで可能となるサービスです。各行政機関が保有する個人情報の内容確認や、オンラインでの申請が可能です。ただ、労務管理においては、現時点では対応する申請種類は限られており、まだまだ普及率が高いとは言えない状態です。しかし、近い将来には健康保険証のマイナンバーカード利用なども予定しており、徐々に普及していくことでしょう。さらに、年末調整などにおいては、従業員が加入している生命保険料控除の証明書のデータ対応が進んできています。従業員が提供した各種証明書データなどを利用して、マイナポータル連携機能を通して、提出することも可能になってきます。人事労務業務において重要な役割を担うことになっていくでしょう。
【「マイナポータル」サイト】
「マイナポータル」との連携には、事前の準備が必要です。マイナポータルAPI連携のしくみを使って、『オフィスステーション』に連携することになります。
STEP1 gBizIDプライムアカウントを取得する
マイナポータルのAPI連携には、gBizIDプライムアカウントを取得する必要があります。
【gBizIDプライムアカウントの登録】
デジタル庁:https://gbiz-id.go.jp/top/
STEP2 「gBizIDプライム」アカウントを『オフィスステーション』に紐づける
「gBizIDプライム」アカウントの取得ができたら、『オフィスステーション』にその情報を紐づけることになります。『オフィスステーション』のメインページから、利用者登録として「e-Gov」アカウントを登録する画面があります。
人事労務管理クラウドの中で、手続業務において一歩リードしている感のある『オフィスステーション』
人事労務管理のシステムやサービスは、自社に合ったシステム選びが非常に重要です。その中でも従業員が多い、契約形態が様々、入退社が多いといった企業には、手続き業務の利用が便利な『オフィスステーション』はおすすめです。膨大で煩雑な作業の効率化できることでしょう。
ただ、初めてシステムを導入するなど不明点や不安点が多いのも実際です。労務担当者が社会保険や労働保険の知識がなく、不安ということもあるかもしれません。その場合には、システムや電子申請に詳しい社労士に相談することをおすすめします。
当社では、ITに詳しい社労士が、会社に合ったシステム選びのご相談も受けています。煩雑で膨大な労務事務にお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。