新たに社員の採用が内定したとき、人事労務担当者は本人に準備してもらう書類を案内したり、手続きの準備がさまざまあります。手続きによっては届出の締め切りが早いものもあるので、予めの準備が肝心でしょう。とくに社会保険に関する手続きは重要なものの一つです。
ただ、もし入社予定の社員が「年金手帳が見当たらない」「年金手帳を失くした」「基礎年金番号も知らない」と申し出た場合、人事労務担当者のみなさんはどうしますか?
今回は、年金手帳を失くしてしまったり、基礎年金番号がわからない場合の対応方法を社労士自身が解説していきます。
社会保険労務士法人とうかい
執行役員 社会保険労務士 小栗多喜子
同社、人事戦略グループマネージャーを務め、採用・教育を担当する。商工会議所、銀行、Adeco,マネーフォワードなどセミナーや研修講師も精力的に行っている。労働法のアドバイスだけではなく、どのように法律と向き合い企業を成長させるのかという経営視点でのアドバイスを得意としている。
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人事労務担当者が社員の入社手続きを行うには、本人に準備してもらうものがいくつかあります。とくに早めに準備しておきたいのが、「年金手帳」や「基礎年金番号」といった社会保険に関する手続きに必要な書類です。社会保険手続きは、社員が入社後5日以内に所轄の年金事務所へ届け出なくてはなりません。書類に不備があれば健康保険や厚生年金保険の加入手続きが遅滞してしまいます。人事労務担当者は、内定後の段階で入社時に必要な書類として「年金手帳」や「基礎年金番号」を準備しておくよう、アナウンスすることも多いのではないでしょうか?
そもそも「年金手帳」は、日本において公的年金制度に加入すると交付されているものでした。茶色、オレンジ色、青色など、年金制度の加入時期によって、手帳の表紙色が異なっています。現在、会社に在職している社員やこれから入社する社員の多くが、オレンジ色、青色など、それぞれの年金手帳を持っていることになります。
茶色 |
昭和35年10月〜昭和49年10月までに国民年金の被保険者資格取得手続きを行なった人
オレンジ色 |
昭和49年11月〜平成8年12月までに被保険者資格取得手続きを行なった人
青色 |
平成9年1月〜令和4年3月までに被保険者資格取得手続きを行なった人
ただ、この「年金手帳」、実は2022年4月に廃止されました。したがって、2022年4月1日以降に初めて年金制度に加入する人は、「年金手帳」は交付されず、基礎年金番号通知書が交付されることになっています。
人事労務担当者が社員の入社手続きに利用している「年金手帳」や「基礎年金番号」。手続きが遅れないためにも早めに準備しておきたいものです。しかしながら、よくあるのが「年金手帳が見当たらない、失くしたのかも」と言われるケース。では「基礎年金番号はわかるか?」と訊ねても、「基礎年金番号もよくわからないし、知らない」と、年金手帳も基礎年金番号も行方知れずという回答されることもあります。人事労務担当者としては、“困った”“面倒…”でしょう。
しかも、2023年6月より、資格取得届等の届出には、「マイナンバーの記載が義務」付けられたのです。入社する社員に対し、マイナンバーの提出をお願いしなくてはなりません。
「年金手帳が見当たらない」「基礎年金番号もわからない」場合には、『基礎年金番号通知書再交付申請書』の提出をし、基礎年金番号の確認を行います。2022年4月以降は「年金手帳」の交付は廃止されましたので、たとえ紛失しても再交付はできません。その代わり、基礎年金番号通知書が再交付されることになります。「年金手帳」もない、「基礎年金番号」もわからないといった場合には、基礎年金番号通知書の再交付手続きを、会社(事業主)経由で行うというわけです。ただし、この申請を行う際には、入社直前に被保険者として使用されていた会社の名称や所在地を記載する必要がありますので、注意が必要です。こちらにも、2023年6月から義務付けられたマイナンバーの記載が必要です。
もし入社までにかなり期間の余裕があれば、予め本人に年金手帳の紛失による基礎年金番号通知書の再交付手続きをしてもらうということも考えられます。ただ、内定後にすぐ入社が予定されている場合には、会社(事業主)経由で再交付の申請をしたほうが迅速でしょう。
「年金手帳を紛失した」「基礎年金番号もわからない」「再交付を申請する」 結局のところ、届出をするにはマイナンバーの記載が必要ということになります。マイナンバーの記載がないまま提出すると従来は処理を行ってくれるケースもありましたが、今後はマイナンバーの記載がされていない場合は、不備書類として返戻されることになります。手続きの遅延にもつながり、入社した社員が健康保険を利用する際に困ったりということにもなりかねません。
ただし、社員からマイナンバーを収集する際には、「利用目的の明示」と「本人確認」を行う必要があります。取り扱いには十分に注意をしましょう。
会社が社員を雇用する際は、さまざまな入社の手続きを行います。これまで社会保険などの被保険者資格取得届を提出するには、基礎年金番号を記入しなければなりません。このため社員から年金手帳を預かり、手続きを進めているケースが多くありました。入社時に人事労務担当者が預かり、そのまま会社で保管しているケースも非常に多くありました。ただ、会社保管は法律で義務づけられているものではありません。入社後もさまざまな手続きの都度、社員に年金手帳の提出を依頼するより、そのまま保管していたほうが、担当者の面倒が少ないという判断だったのかもしれません。今のように労務管理クラウドや電子申請も進んでいなかった時代は、都度、年金手帳などで基礎年金番号を確認することもあったでしょう。本来は、手続きが済めば社員に返却して構いません。一方で社員に保管してほしい、と頼まれるというケースもあるでしょう。会社で保管運用していればOKですが、個別保管に対応するのは手間もかかりますし、預かっている社員の管理をしなくてはいけませんので、あまりおすすめしません。最近では、会社で保管するケースも少なくなってきているようです。
長らく入社手続きに欠かせなかった「年金手帳」が廃止されることになり、そのかわりに「基礎年金番号通知書」と「マイナンバー」で手続きを行えるようになりました。手続きも電子化が進む、行政機関に出向かずとも手続きが完了するようにもなっています。人事労務担当者にとっては、年金手帳を保管する手間もなくなりますし、加えて手続き自体も楽になってきているでしょう。とはいえマイナンバーの取り扱いには慎重にならざるを得ませんので、気を遣う部分はあるかもしれません。
当社においては、入社時の社会保険手続きのサポートをはじめ、さまざまな手続き・申請・届出を最新の法律に沿って、適切なタイミングで正しく行っています。多くの人事労務担当者のみなさんの負担軽減にもお役に立てるのではないでしょうか。自社の社会保険をはじめとした手続業務にかなり時間を割いている、業務量が多いなどご負担があれば、まずはお問合せください。