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これで解決!会社が行う従業員やその家族が産休・育休に入るときの手続き

今や、妊娠・出産をした女性が産休や育休を取ることは当たり前という時代になってきました。

産休・育休取得に関しては、妊娠中の産前休業から始まり、出産後、育児休業が終了して職場に復帰するまで、継続した対応が求められます。社会保険や雇用保険等各種制度で手続きが必要になりますが、妊娠中は急な体調の変化で連絡が取りづらくなることも想定されますので、人事労務担当者として早めの対応を心がけておきましょう。

 
目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


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https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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産前産後休業(産休)とは

混同しがちな定義を押さえましょう。

一般的に産前産後休業を省略して産休と呼んでいます。産休には産前休業と産後休業があり、それぞれ内容が異なります。

具体的な期間は、産前休業は出産予定日前の6週間・多胎妊娠の場合は14週間(出産日当日も含む)、産後休業は出産翌日から8週間を指します。

法律上では

「6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」(労働基準法第65条第1項)

「使用者は、産後8週間を経過しない女性を、就業させることができない。」(同条第2項)

と定められています。

つまり、産前休業の場合は本人からの申し出が必要であり、産後休業は必ず取得させなければならないものになるのです。

ただし産後休業の例外として、産後6週間が経過した後は、医師から許可がおりて本人の希望がある場合、就業が可能です。

 

従業員から妊娠の報告を受けたとき

急な対応とならないよう、事前に制度を周知しておきましょう。

従業員からの妊娠の報告。会社側としては驚きもあるかもしれませんが、従業員やその家族にとって、妊娠・出産は喜ばしいことです。まずはあたたかい気持ちで話を聞き入れます。

きっと本人も様々な感情を持ちながら会社に報告していることでしょう。

報告を受けた際の態度で不安を与えることがないように応対すると同時に、出産予定日や最終出社日、産前休業や育児休業の希望、職場復帰の有無などを確認します。

妊娠初期は、心身ともに不安定になりやすい時期でもありますので、時差通勤制度等、社内で利用できる制度があれば知らせるとともに、それらを利用するかどうかもヒアリングしておくと良いですね。

すべての対応が従業員本人からの妊娠報告により始まりますので、妊娠が分かったら早めに報告できるよう、普段から社内でコミュニケーションの取りやすい雰囲気づくりが望まれます。

従業員へ産休取得の確認をする(「産前産後休業届」を受理する)

従業員へ産休取得の希望を確認します。産前休業については本人の申請によりますので、いつ頃から休業に入りたいのかすり合わせをしておきます。

それによって会社として引き継ぎや人員補充のスケジュールを立てていきます。

社内規程で「産前産後休業届」など産前産後休業取得のために必要な届出があれば、提出してもらいます。

産休取得に必要なものを依頼・確認する

従業員が産休を取得するにあたり、必要なものを具体的に説明します。

産休を取得することが確実になった段階で、従業員へ以下のものを事前に依頼・確認しておきます。

これらの書類は、提出できるタイミングや医師等から証明を受けられる時期等がそれぞれ異なるため、あらかじめその旨も本人へ説明しておくとスムーズです。

  • 社内規程等に基づく「産前産後休業申請書」等の産休取得に関する書類の提出
  • 産前産後休業中の連絡先(里帰り出産の場合は帰省先の連絡先もあると尚可)
  • 産前産後休業中の交通費の返却(6ヶ月定期券等の購入など既に支給してある分の精算)
  • 産前産後休業中の住民税の普通徴収への切り替えの希望の有無
  • 出産手当金受給に関する申請書や医師等の証明
  • (出産後)子どもの戸籍抄本や住民票等、子どもを扶養に入れる場合の確認書類の提出
  • 出産手当金等の各種助成や給付金について
    (申請を会社が代行できるものの場合、代行希望の有無もあわせて確認)

各種手続きについて、会社が代行できるもので本人がそれを希望する場合には、母子手帳のコピーなど別途必要なものが発生してきますので、その点も伝えます。

これらの事項に加えて、出産を終えたらその旨を会社に報告してもらうようにも伝えておきましょう。

従業員が産休に入るとき

産休期間中の手続きになるため、里帰り出産の有無なども確認しましょう。

従業員の産前産後休業は雇用形態や雇用期間によらず、産前産後の時期にあてはまるすべての女性が対象となります。

例えば、契約社員やパートといった有期雇用労働者の場合でも、申請すれば産前休業が取れますし、出産後は申請がなくても産後休業の対象となりますので覚えておきましょう。

会社が産休や育休制度の利用を妨げるような言動を取ったり、妊娠・出産を理由として減給や解雇等不当な扱いをすることは、マタニティハラスメント(マタハラ)に該当します。

近年、社会的関心の高まりもあり、マタニティハラスメントの防止措置が法律で義務付けられていますので、妊娠した従業員との間でトラブルにならないよう適切に対応しましょう。

以下で産前産後休業時に申請すべき手続きについて述べます。

「産前産後休業取得者申出書」を提出する

産休に入る従業員が社会保険に加入している場合、産前産後休業中は一定の期間について社会保険料が免除になります。

手続きは産前産後休業期間中に、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構(事務センター)へ提出することで対応可能です。

これにより、産前産後休業開始月から終了日の属する月の前月までの期間について、事業主分と被保険者分の双方の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が支払い免除となります。

免除となっても被保険者の資格や将来受け取る年金額に影響はありません。

免除の申請については産休期間中であれば上記の申出書によりいつでも手続き可能ですが、免除対象である休業期間は出産予定日を起点として算出されます。

注意点として、産前に本書類を提出し出産予定日以外に出産をした場合は、休業期間が変更となることがあるため「産前産後休業取得者変更(終了)届」を別途提出しなければなりません。

そのため、特段の事情がない限り、実務上は出産した後の産後休業期間中に提出する会社が多いようです。

従業員から出産の報告があったとき

一つずつ押さえましょう。

従業員から出産の報告があった際は、出産後に対応する手続きを進めます。詳細は以下で説明していきますが、出産育児一時金についてはほとんどの場合産院で処理をしてくれるので、その旨も伝えておくと親切です。

また、育児休暇を取得することになっている場合は、休暇期間等を再確認しておくのも良いでしょう。産後は心身のバランスを崩しやすい時期でもありますので、応対する際は不要な誤解を与えないよう配慮します。

出産手当金の申請手続きをする

出産手当金は、健康保険の被保険者となっている従業員が出産により休業している間、会社から報酬がない場合に支給されるものです。 

対象期間中に報酬が支払われたときは原則として出産手当金はありませんが、支払われた報酬額が出産手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

「健康保険出産手当金支給申請書」という書類を全国健康保険協会や健康保険組合へ提出することで手続きを行います。

医師や助産師からの証明が必要となりますので、基本的には被保険者である従業員本人の強力も必要ですが、勤務状況等事業主が証明する欄もありますので、最終的には会社から提出することが一般的です。

医師・助産師記入欄に直接記入や証明をしてもらうことが難しい場合は、療養担当者意見書等の医師や助産師による意見書を別添することでも手続きできます。

支給の対象となる期間は出産の日以前の42日間と出産後56日間の範囲内で会社を休んだ日になります。

支給額は休業1日につき標準報酬日額の2/3とされ、休業した日数分が支給されるので、従業員から問い合わせがあった際には目安として答えてあげても良いですね。

出産育児一時金の申請手続き方法を伝える

出産育児一時金は、健康保険が適用されずに高額になりがちな出産費用の補填として設けられた制度です。

本制度について、会社側が対応するべき手続きは特にありませんが、出産した家庭がもらえる給付としては大きなものになりますので、従業員の方で万が一申請が済んでいない場合は情報を伝えてあげましょう。

出産育児一時金と家族出産育児一時金の2種類があり、それぞれ被保険者および被扶養者の出産について支給されます。

妊娠85日(4ヶ月)以後の出産が対象で、一児につき42万円(出産した医療機関が産科医療補償制度の対象外である場合は40万8,000円)が支給額となっています。

申請方法は「直接支払制度」「受取代理制度」「産後申請」の3種類ありますが、多くの医療機関では直接支払制度を導入しているので、既に本人が医療機関と本制度の利用について合意書を取り交わして手続きが完了しているケースがほとんどです。

しかし、小規模な医療機関や助産院等では直接支払制度が利用できないこともありますので、その場合は受取代理制度や産後申請のいずれかで出産育児一時金を請求する必要があります。

出産育児一時金は従業員やその家族の当事者で申請するものになります。申請の時効は2年なので、申請することを知らなかったり忘れたりすることがないよう周知しておくと良いかもしれませんね。

「健康保険被扶養者異動届」を提出する

ここからは、誕生した子どもに関する手続きについて述べていきます。

生まれた子どもはその日から被扶養者として健康保険の資格を持つことになります。

子どもを自社の従業員の扶養に入れる場合、会社が「健康保険被扶養者異動届」を全国健康保険協会や健康組合へ提出する手続きを取ります。

その際、原則として続柄を確認するためマイナンバーが必要になります。

マイナンバー通知カード等の発行を待つと時間がかかるので、出生登録等済ませたら住民票をマイナンバー入りで発行してもらうのが一番早いかと思います。

マイナンバーの手配に時間がかかる場合、必要があれば従業員側で続柄確認書類を取得してもらいます。

本来の手続き期限はその事実があった日から5日以内とされていますが、そもそも出生届を提出していないと役所で続柄を確認する書類が取得できない等、出産後の忙しさや手続きの多さを考えると現実的ではありません。

しかしながら、保険証の発行に影響する手続きになりますので、会社側としてはできる限りの対応を心がけると良いでしょう。

手続きが完了次第、誕生した子どもの保険証が届きますので、速やかに従業員へ交付します。 

給与所得者の扶養控除(異動)申告書を変更する

健康保険の手続きもさることながら、税金に関する手続きも重要です。

生まれた子どもが従業員の扶養親族となる場合は、直近の年末調整の際に提出された「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」への追記が必要となります。

また、子どもが12月に生まれて既に年末調整用の書類が提出済の場合は、それらを訂正したり年末調整をやり直したりする可能性もあります。

従業員にはなるべく早めに「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」を変更してもらいましょう。

従業員が育児休業に入るとき

育休を取得できる労働者には要件があります。

そもそも育児休業(育休)とは、育児・介護休業法によって定められており、1歳に満たない子を養育するために休業する制度を指します。

そのため産前産後休業とは性質が異なり、育児休業を取得できる者も法律で明示されています。

以前は有期雇用労働者に対して複数の条件が設けられていましたが、2022年4月施行の法改正により、雇用形態にかかわらず育休が取得できるよう条件が緩和されました。

それにより、契約社員やパートなどの有期雇用の従業員は子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に契約が満了することが明らかでない場合は、これまでの雇用期間等にかかわらず育児休業の取得対象となりました。

上記「子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に契約満了することが明らかでない」場合の判断基準としては以下の2点を満たすことが必要です。

  1. 育児休業の申出があった時点で、契約の更新がないことが明らかにされていない
  2. 会社が「更新しない旨」を明示されていない

 

しかし例外として、あらかじめ労使協定を締結することにより、以下に該当する者は育児休業の適用除外とすることが可能です。

  1. 引き続き雇用された期間が1年未満である者
  2. 育児休業の申出日から1年以内(育児休業の延長に関しては6ヶ月以内)に雇用関係が終了することが明らかである者
  3. 所定労働日数が週2日以下の者

 

また、育児休業を取得したい従業員は、休業開始の1ヶ月前までに会社へ申出をすることになっています。

社内規定等で「育児休業申出書」などの決まった書類がある場合は提出してもらったうえで手続きを進めましょう。

育休の開始日と終了予定日も決定しておきます。

通常は出産後8週(56日)が経過した時点からが育児休業のスタートとされます。

一般的には従業員の提出した「育児休業申出書」等の書類に対して、会社が「育児休業取り扱い通知書」というような育児休業中の諸条件を記載した書類を発行することで手続きを進めていきます。

会社から発行する通知書には、育休の申出を受理する旨・開始日と終了予定日・育休の申出を拒否する場合にはその理由・育休中の待遇や復職後の賃金等の労働条件を明示します。

育児休業中の社会保険料の免除手続

産前産後休業と同様に、育児休業中も事業主と従業員双方の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除となります。

手続きは会社が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構(事務センター)へ提出することで行います。

免除期間についての考え方は産休時と同じく、休業を開始した月から終了月の前月まで(育児休業終了日が月末の場合はその月まで)です。

育児休業は場合により子どもが2歳になるまで延長が可能です。

休業期間の延長や当初の予定よりも前に休業を終了する場合は、前述の書式「育児休業等取得者申出書」上の「A.延長」「B.終了」という欄に終了(予定)日を記入して提出する必要があります。

なお、育児休業に関する社会保険料は、最大で子どもが3歳に達するまでの期間について免除が可能です。

育児休業給付金の受給資格の確認手続

育児休業給付金とは、育児休業をしている従業員が雇用保険の被保険者であり、一定の要件を満たす場合に給付されるものになります。

まず、休業開始前の2年間に被保険者期間(11日以上勤務した日がある月)が12ヶ月以上あること、次に、休業開始前の賃金の8割以上にあたる金額が支給されていないこと、休業中に就業した場合は、その日数が10日以下または80時間以下であることが挙げられます。

上記の要件を満たせば、育児休業中の男性社員も給付を受けることが可能です。

以下で具体的な申請手続きについて説明します。

育児休業手当金の申請手続

育児休業中の従業員が、育児休業手当金の給付対象であることが分かったら、申請手続きを行いましょう。

基本的には会社側が「育児休業給付受給資格確認票」「(初回)育児休業給付金支給申請書」「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の書類を提出することが必要です。

さらに上記に添付する書類として、賃金台帳や出勤簿、記載した賃金等の内容を確認できる書類、母子手帳のコピー等が必要になります。

申請手続きは原則2ヶ月ごとに行います。上記の書類すべてが必要になるのは初回申請時のみで、2回目以降は「育児休業給付金支給申請書」と賃金台帳・出勤簿の提出で問題ありません。

育児休業給付金は育児休業の延長が認められる場合は、最長で2年間給付を受けることができます。

従業員が育児休業から復帰するとき

育児休業終了の時も手続きが必要です。

これまで、従業員の産休・育休に関わる諸手続きを見てきましたが、最後に従業員が育児休業から復職する場合に必要となる対応を解説していきます。

復職後、下記の要件に該当する場合は会社として速やかに対応しましょう。

育児休業の終了届

育児休業を当初の予定より早く終了し職場復帰した場合、「育児休業取得者申出書終了届」を日本年金機構(事務センター)へ提出します。

当初の申出どおりに育児休業を終えた場合は改めて提出する必要はありません。

また、企業独自に設けた「育児休業復職届」等の職場復帰に関連する書類がある場合は規程に則り従業員に提出してもらいます。

社会保険料の報酬月額変更届

育児休業終了後は短時間勤務等により、産休・育休前より給与が下がるケースが考えられます。

社会保険では、3歳未満の子どもを養育している被保険者が休業を終了後3ヶ月間に支給された給与の平均額について、従前の標準報酬月額と比較して1等級以上差がある場合に、4ヶ月目から標準報酬月額を改定することができます。

ただし、育児休業終了日の翌日の属する月以後3ヶ月のうち、少なくとも1ヶ月は出勤した日が17日以上あることが条件です。

申出には「健康保険・厚生年金保険 育児休業終了時報酬月額変更届」が必要で、提出先は日本年金機構(事務センター)や健康保険組合です。

厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申し出

職場復帰後に勤務時間の短縮措置等で給与が下がり、前項の報酬月額を変更すると、たしかに控除される社会保険料は低く抑えられますが、その分、将来受け取る年金額に反映されてしまいます。

そこで、復職後、3歳までの子どもを養育する期間において、短時間勤務などにおける標準報酬月額が、産休・育休前の標準報酬月額と比較して下がった場合、将来の年金額に従前の標準報酬月額が反映されるようにみなす特例制度が設けられています。

上記の報酬月額変更届と併せて申請することによって、実際に給与から控除される保険料は抑えることができつつも、将来の年金額は子どもを養育する前の報酬月額で算出されることになるのです。

この特例は子の養育が始まった月から子が3歳になる月の前月までが対象です。

手続きには「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」と戸籍謄本等子どもの続柄が確認できるものや従業員との同居を確認するための住民票の写しを提出することが必要です。

まとめ

お気軽にご相談ください。

従業員の妊娠・出産・育児に関わる手続きは、妊娠の報告時から復職に至るまでの長期間に及び、内容も複雑で多岐に渡ります。

毎年決まった時期に必ず対応する種類のものでもないため、不慣れな分、対応に時間がかかることも予想されます。

女性の社会進出が進んでいる昨今、産休・育休に関する手厚いサポートは従業員の働きやすさや企業イメージに直結します。

慣れない分野に時間や労力をかけるよりも専門家の手を借りることで、本来の業務に注力できる環境が整います。手続き漏れやミスも防ぐことができ、おすすめです。

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