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労働時間状況把握の実効性確保

勤怠管理の方法が変わる?!2019年4月以降の勤怠管理とは?

2019年4月1日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が施行されます。なかでも、企業が対応すべき大きな改正の1つが「時間外労働の上限規制の導入」です。改正の背景には、大手広告代理店従業員の過重労働による労災問題が社会問題化されたこと、時間外労働の上限規制を法制化する機運が高まったことの2点があげられます。また2017年1月20日に公開された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」に沿って、労働時間を適正に把握し、長時間労働による過労死が起こらないよう、適切な方法を厚生労働省が指示するものとなっています。

 そこで、着目したいのが、ガイドライン策定時点では、事業者の労働時間把握は「責務」とされていたものが、今改正では「義務」とされていることです。適正な労働時間把握されていない場合、罰則として、雇用主に半年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることにもなります。

 
つまりタイムカード等で出退勤の記録を残していないだけで罰則の対象となるのです。今後は、ガイドラインに沿った労働時間の把握がより一層求められることになります。
 
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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働き方改革で求められる企業の労務管理とは?

 

労働基準法において、企業は、労働時間を正確に把握するなど、労働時間を適切に管理する責務があります。しかしながら現状は、労働時間の自己申告制の不適正な運用などによって、過重労働や割増賃金の未払いといった問題など、企業の労務管理を適切に行っていない状況が発生しています。

 一方で、多様な雇用形態や勤務体系など従業員の働き方の変化が進む今、企業の労務管理が一層難しくなっています。とくに今改正にも関わる労働時間の把握は、知らなかったでは済まされません。労働時間は賃金の支払いと密接な関係があるからです。大きなトラブルとなるまえに、従業員の勤怠管理について、見直しておきたいものです。

 

1.知っておきたい「労働時間」と「時間外労働」とは?

労働時間とは、仕事に従事している時間のことですが、企業の労務においては、一般的に労働基準法に定められた「法定労働時間」を指します。労働基準法第32条に定められている法定労働時間は、原則として1日8時間、1週間に40時間以上を超えて働かせてはいけないと定められています。法定労働時間を超えて働く場合は、「時間外労働、休日労働」として、36協定(労働基準法第36条)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。また、時間外労働には割増賃金が発生し、割増率についても規定があります。(労働基準法第37条)

【時間外労働の割増についての規定】

60時間以下

25%以上

60時間を超える

50%以上

休日労働

35%以上

深夜業

25%以上


 ※中小企業における60時間以上の割増率50%以上は2023年4月1日以降です。

 2.休憩時間

労働基準法第34条では休憩時間と休憩の3原則を、以下のように定めています。

【休憩時間】

労働時間が6時間を超える

45分以上

労働時間が8時間を超える

1時間以上

【休憩の3原則】

休憩は労働の途中で与える

8時間の勤務時間が終わった後に、1時間の休憩が付与される」というような場合は違法。

休憩中は勤務から解放されなければならない

休憩中は電話番や来客対応などの業務とは離れ、自由な時間を与えなければならない。休憩中にこれらの対応などのために職場から離れられないことが日常化している場合、その時間は労働時間としてカウントされる可能性もある。

休憩は一斉に付与しなければならない

従業員全員一斉に休憩を与えなければならない。ただし、労使協定が締結されている場合や、以下の業種の場合は、この規定が適用されない。そのため、従業員に交代で休憩を与えることができる。運輸交通業、商業、金融、広告業、映画、演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業


3.対象となる従業員

企業は、すべての従業員の勤怠管理を行う義務を負います。改正前においては、「勤怠管理の適用外」とされていた管理監督者、みなし労働時間制(専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制・事業場外労働)に該当する従業員においても、2019年4月以降は勤怠管理の対象となります。

4.勤怠管理の目的

労働基準法では従業員の労働時間や休憩時間、休日などについて、事業者が遵守しなければならない基準を明確に定めています。勤怠管理を行う目的は、以下の2つがポイントです。

・コンプライアンス

企業は、法律で定められた労働条件、労働時間に沿って、従業員が働けているか管理する責任があります。労働時間を管理する方法についても、「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録する」か「タイムカード、IC カード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録する」ことが求められています。また、その記録について、3年間の保存が義務付けられています。

これらの法令に違反すると、労働基準監督署からは是正勧告などの指導や、従業員から未払い残業代を請求する訴訟を提起されたりするリスクがあります。

・従業員の健康を守る

時間外労働や休日出勤による過重労働が続き、疲労が蓄積すると、脳や心臓の疾患が発症するリスクが高まります。場合によっては、過労死に繋がることもあります。企業は適切に勤怠を把握し、必要に応じて業務調整をしたり、産業医面談を受けさせたりするなどの対応が必要となってきます。

働き方改革関連法 2019年4月以降 何が変わるの?

2019年4月から施行される「働き方改革関連法案」のうち、勤怠管理に関わる大きなポイントとしては、「時間外労働の上限規制」が導入です。 

残業時間の上限は、

原則として月45時間・年360時間とし、
臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

施行時期
大企業 20194月~  中小企業 20204月~

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を超えることはできません。

・年720時間 以内
・複数月平均80時間 以内 休日労働を含む
(「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内)
・月100時間 未満 休日労働を含む
・月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当します。

また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。

※上記に違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

 また、労働基準法と同時に改正される法律に、「労働安全衛生法」と「労働時間等設定改善法」があります。これらの中にも、今後の勤怠管理に大きく影響する内容が盛り込まれています。

1)労働時間の適性把握に関するガイドライン

ガイドラインには「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除くすべての労働者」を対象とすることが示されています。

「勤怠管理の適用外」とされていたのは、管理監督者等の責任者や専門型裁量労働制、企画型裁量労働制、事業外労働に関するみなし労働時間制が適用される従業員です。しかし、今回の法改正で「勤怠管理の適用外」とされていた管理監督者や専門型裁量労働制、企画型裁量労働制、事業外労働に関するみなし労働時間制が適用される従業員においても、勤怠管理が義務化されます。つまり、法改正以降は、管理監督者等についても一般従業員と同様に記録しなければいけなくなるのです。

労働時間の管理方法についても、「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録する」か「タイムカード、IC カード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録する」ことが求められています。41日以降は、他の従業員と同様に管理監督者等も同じ方法で労働時間を記録する必要があります。 

2)管理監督者も勤怠管理が必要に
 管理監督者等も健康管理の観点から、法改正後は正確に労働時間を把握し、適度な休憩や休日の取得を勧奨することが求められています。

 時間外労働の上限規制対象とならない場合であっても、管理監督者を含むすべての従業員の過重労働に配慮しなければならないということなのです。

エクセルでも大丈夫?勤怠管理ソフトの選び方

今回の法改正では、「労働時間の客観的な記録」が求められています。適正に把握する勤怠管理のための環境整備が必要です。また、日々の労働時間はもちろん、1ヶ月合計、複数月の平均で上限を超えないようにと、細かく管理していかなければならず、担当者の負担にならない管理方法が求められます。

今一度、自社の勤怠管理が法改正に適切に対応できるか、以下の勤怠管理の方法を参考に、見直してみましょう。

1)スマホアプリでの勤怠管理
スマートフォンを利用した、出退勤を打刻するタイプ。GPS機能を利用して、打刻した位置情報を残すことが可能です。リアルタイムに勤怠表に反映されますので、営業社員の直行・直帰やテレワーク勤務の方など、オフィスから離れた場所であっても、どこからでも確認可能です。中小企業の場合、個人のスマートフォンを使用して打刻をさせている場合もありますが、会社貸与のスマートフォンを使用させる方が望ましいでしょう。

2)ICカードでの勤怠管理
ICカード打刻は、FeliCaに対応する社員証や、SuicaなどのIC系交通カード、おさいふケータイなど、打刻機にかざすだけで、スムーズで簡単に打刻ができるのが魅力。紙のタイムカードと違い、タイムカードの購入や打刻後の保存管理の手間など、ランニングコストの削減にも繋がります。また、集計が自動で行われるため、時間短縮が期待できます。ただし従業員の入れ替えに伴うICカードの書き換えの手間や専用のICカードの場合、ICカード自体のコストが割高な場合もあります。見栄えはいいですが、意外と手間がかかるのも事実です。

3)専用ソフトでの勤怠管理
従来のタイムカードと異なるのは、勤怠の打刻だけではなく、勤務時間の集計や有給休暇の管理なども行えるのがほとんど。働き方改革の推進で、企業は労働時間を正確に管理するのはもちろん、これからの時代は多様な勤務形態に対応していかなくてはなりません。出退勤の管理のみにとどまらず、労務管理に関わる管理業務を、手間をかけずに正確に行えるのがメリット。

4)エクセルでの勤怠管理
簡単な勤怠管理ならば、エクセルでも十分です。残業時間や休日出勤の計算も、普段エクセルを使い慣れている方なら、問題なくこなせるはずです。ただし、従業員が増えてきたり、複雑な就業形態に対応する必要が出て来る場合には、集計が煩雑になったり、ミスの原因になるもの。企業規模に応じた選択が必要かもしれません。

 

「労働時間の客観的な記録」の視点で考えると、紙のタイムカードは当然ながら、エクセルなども自己申告によるもののため、不正打刻が起こりやすく「データの改ざん」問題に発展することも。これらの打刻での勤怠管理方法は、客観的な記録とみなされなくなる可能性もあります。今後の勤怠管理のためには、専用ソフトを導入する企業も多くなると見込まれます。

勤怠管理ソフトの導入方法

 導入するソフトを選定し、スムーズに運用開始できるよう、予め設定が必要です。自社の就業規則、組織体系、雇用形態などに基づき、必要な情報をシステムに登録します。手動で入力せず、CSVファイルでデータを取り込めるサービスもあります。事前に必要な情報をまとめておきましょう。 

勤怠管理ソフトを導入し、設定をする場合、3つの方法が考えられます。

1)自社で設定
2)専門家に依頼しての設定
3)システム業者の設定

いずれの方法であっても、トライアル期間を設け、正確に情報が反映されるか、管理がしやすいか、担当者の作業負荷などの確認を行い、導入、運用開始をするのが望ましいでしょう。また、サポートの体制についても事前に確認しておくことが大切です。サポート対応が有料の場合もあり、導入後に思わぬコストがかかるケースも。とくに初めて勤怠管理システムを導入する際は、注意が必要です。 

勤怠ソフトの落とし穴

導入したソフトが会社の勤怠ルールに合わず、別のソフトに変更したケースも。せっかく導入したにも関わらず、失敗したといことにならないよう、注意しましょう。 

1)法律的な落とし穴

変形労働時間制が導入されているにも関わらず、反映することができない場合や個別の会社ルールの対応ができない場合があります。個別の会社ルールはほとんどないと思われがちですが、労働時間や休日数なども会社ごとに違います。月曜日から金曜日に毎日8時間勤務だとしても祝日はどう扱うのか、年末年始の休暇はどう扱うのか等、個別のルールが発生します。自社に合った運用ができるソフトを選びましょう。 

2)運用の落とし穴

運用を開始し始めたら、トラブルが続出するといったケースも。たとえば、ICカードを利用し、勤怠管理ソフトと連携させて運用を行う場合など、従業員がこのICカードを忘れ、その日の勤怠が確認できず、結果、自己申告されたものを入力しなくてはならない、といった、例外事項が発生します。ある程度、いろいろなケースを想定し、上長の承認ワークフローが滞らず、管理に支障をきたさないような運用を検討しておく必要があります。 

3)給与計算の落とし穴

勤怠管理ソフトでの集計データがそのまま給与計算ソフトに取り込めるかなど、集計データが、給与計算ソフトに取り込めず、手入力をするなどの失敗がないよう、予め連携機能など確認しておきましょう。勤怠管理ソフトのみで完結するものではありません。企業全体の効率化を図るなら全体の連携を意識してみましょう。 

まとめ

名古屋の社労士小栗です。

すべての従業員の勤怠管理を行いましょう

2019年4月から、企業はすべての従業員の勤怠管理を行う義務を負います。管理監督者、みなし労働時間制(専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制・事業場外労働)に該当する従業員においても、2019年4月以降は勤怠管理の対象となります。

勤怠管理とは、各従業員の出勤・退勤・休憩時間の時間の管理です。まずは、すべての従業員の出勤・退勤・休憩時間の記録を徹底しましょう。

勤怠管理ソフトの導入を検討しましょう。

働き方改革関連法には、残業時間の上限規制や年次有給休暇の5日取得義務も定められています。残業時間の上限規制や年次有給休暇の5日取得義務についても勤怠管理と同様に対応が必要です。

 残業時間や年次有給休暇の取得について働き方改革関連法を遵守できているのかを確認する際に紙の出勤簿やExcelではかなりの時間がかかります。現在紙の出勤簿やExcelで勤怠管理を行っている場合は、勤怠管理ソフトの導入を検討されてはいかがでしょうか。

勤怠管理ソフトのメリット(勤怠管理ソフトごとに使用できる機能が異なります)

・勤務時間の集計が自動で行える
・残業時間が多い人に自動で注意喚起が行えます
・年次有給休暇の管理ができます
・スマートフォン等を利用して事業所外での出退勤の記録も取れます
・クラウドの勤怠ソフトの場合は、どこでも従業員の勤務状況がリアルタイムで把握できます

弊社では勤怠ソフトの導入の際の支援も行っています。

・どの勤怠管理ソフトを選べばいいか分からない
・勤怠管理ソフトの導入はしたいが導入する暇がない
・勤怠管理ソフトを導入しているが法律を遵守できているか不安

上記のいずれかに該当する場合は、ぜひご連絡ください。
働き方改革関連法が遵守できる会社を一緒に作っていきましょう。

 

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