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就業規則とストレスチェック
ストレスチェック制度について社労士がわかりやすく解説します。

就業規則とストレスチェック
ストレスチェック制度について、
社労士がわかりやすく解説します。

ストレスとは切っても切り離せない現代。仕事や家庭、お金や健康、人間関係など悩みを抱える人は少なくありません。さらに、最近の新型コロナウイルス 感染拡大に伴って、ウイルス感染への恐怖感や雇用不安などによる大きなストレスは、多くの人たちのメンタルに悪影響を与えています。

ストレスがかかった状態が長期に渡ると、うつ病をはじめとしたメンタル不調が起こるリスクが高まります。メンタルヘルスのリスクがかつてないほどに高まる今、企業は従業員のメンタルヘルスリスクの可能性を取り除くため、早めの対策を講じる必要があります。

今回は、社会問題ともいえるストレス対策として、2015年に義務化された「ストレスチェック制度」を理解しながら、企業が行うべきメンタルヘルス対策のヒントを探していきましょう。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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ストレスチェック制度とは?

2015年に義務化されたストレスチェック。効果的に活用するヒントをご説明します

ストレスチェック制度とは、従業員のストレスチェックとストレスチェックの結果に基づいた医師の面接指導の実施等を企業に対し義務づける制度です。

ストレスチェックは、ストレスに関する質問に従業員が回答し、その結果を集計・分析・評価することで、ストレス状態を調べる簡易的な検査です。従業員の心理的な負担を把握し、メンタル不調などのリスクを探ります。リスクの高い従業員への面接指導や、集団分析を通して環境整備をはじめとした事後措置を行います。

ストレスチェック制度は、2015年に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」において、創設されました。今まで、企業ごとに行っていたメンタルリスク対策について、ストレスチェックとして制度化し、方法やルールが明文化されたのです。

常時使用する労働者が50 人以上の事業場では1年以内に1回のストレスチェックを実施することが義務づけられています。

ストレスチェック制度の義務化の背景

うつや自殺者などを自社から発生させないために、ストレスチェックはしっかり押さえておきましょう。

ストレスチェック制度の義務化の背景には、日本の社会問題が深く関係しています。厚生労働省が行った労働安全衛生調査(実態調査)結果によれば、現在の自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は58.0%に及んでいます。

日本においては、非常に多くの人がストレスを抱えながら働いている状況にあることが伺えます。ストレスによるメンタルヘルス不調をうったえる労働者や休職する労働者も多いのが現状です。とくに、ストレスを溜め込み、何の対策も行わずに働かせたとすると、精神や身体に悪影響を及ぼし、うつ病や心身症といった病気はもとより、自殺という最悪の事態も招きかねません。

精神障害等の労災補償件数も増加しており、早急な対策を講じる必要性から、2015年、労働安全衛生法の改正に舵が切られたのです。

これまでの労働安全衛生法では、長時間労働による健康被害を防止するため、主に時間外労働を規制することに重きがおかれていました。しかしながら、メンタルヘルス不調の原因は長時間労働に限定されることではありません。

総合的なメンタルヘルス対策が必要なことから、労働安全衛生法を改正し、ストレスチェック制度を義務化することになったのです。

ストレスチェック義務化の目的とは?

従業員のメンタル不調を未然に防ぐ取り組みは、今後の企業にとって重要な施策のひとつです。

ストレスチェック義務化の大きな目的は、労働者のメンタル不調を未然に防ぐことです。多くの企業においては、従業員のストレスを把握することで、リスクを排除し、従業員のメンタルヘルスを健全に保つことは、大きな課題でしょう。なぜなら、従業員のストレスに起因するメンタル不調は、業務の生産性やモチベーションなどの低下はもちろん、休職に至った場合に抱える人的コストはとても大きいものです。さらに、メンタル不調は、長期的な治療が必要な場合も多く、罹患後のケアなど影響も広範囲に渡ります。

“制度が義務化されたので、とりあえずストレスチェックを行なっておけばいい”という表面的なスタンスでは、本来のメンタル不調を未然に防ぐ「一次予防」としての目的は果たせません。

ストレスチェックを行い、従業員が自分自身の抱えているストレスへの気づきのほか、会社が従業員のストレス状況を把握することで、ストレスの原因となる職場環境の改善を行うことが目的です。ストレスチェック制度が義務化された背景を考えれば、その必要性がご理解いただけると思います。

ストレスチェックの活用の方法とは?

ストレスチェックは、結果を分析して改善策を実行することが肝。取り組みなくして、効果はありません。

2015年に義務化されたストレスチェック制度ですが、実際、企業は効果を感じているでしょうか? 前述の厚生労働省の平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所のうち、ストレスチェックを行った事業所の割合は 62.9%[平成 29 年調査 64.3%]となっています。

このうち分析結果を活用した事業所においての活用内容は、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」が 46.5%となっています。ストレスチェックが義務化されたことにより、企業のメンタルヘルスに対する考え方は徐々に変化し、実際にメンタルヘルス対策を独自に始めている企業も増えつつあります。活用のポイントについて、みてみましょう。

経済的損失の防止のために

2009年の厚生労働省の調べによれば、メンタル不調が原因で自殺やうつになった方々の経済的損失額は、およそ2兆7千万円にも上るといいます。10年ほど前の数字ではありますが、休職者や自殺者が与える、社会的・経済的損失の大きさがわかります。

ストレスチェックなどの企業のメンタルへルス対策は、対策自体が直接、会社に利益をもたらすものではありません。しかしながら、従業員のメンタルヘルス対策を行うことで、メンタル不調を早期に発見ししたり、ケアやサポートを行うことで、自殺やうつなどの発生を防止することにつながります。経済的損失を防止するための長期的なメリットと考えられます。企業にとっても、ストレスチェック結果を分析し、職場環境の改善や業務効率化が果たせれば、残業代などのコスト削減につながるかもしれません。

企業としての信用信頼。優秀な人材確保のために

優秀な人材確保のためには、メンタル不調者を出さない職場づくりが必要不可欠です。そのためにストレスチェックをメンタルヘルス対策ツールとして役立てたいものです。従業員のストレスチェック後の改善策は、従業員と企業間の信頼をつなぐのみならず、従業員のモチベーション向上や、優秀な人材の流出防止にもつながるかもしれません。採用コストの抑制にも効果があるでしょう。ストレスチェックは、単なる制度対応ではなく、人事戦略としてこれからの企業にとって重要な施策の一つになっていくのではないでしょうか。

逆にストレスチェックなどメンタルヘルス対策を怠っていたり、ストレスチェックでメンタル不調を把握していたにも関わらず、問題を放置した場合の、デメリットは大きいでしょう。「ストレスチェックを実施したのに、会社は対応してくれない」と従業員の不満が蓄積したり、場合によっては従業員から訴えられてしまう可能性もあります。

ストレスチェックで集団分析。デジタル化して効果測定を。

ストレスチェックは、チェック結果を生かしてこそ。ぜひともデジタル化して集団分析・効果測定を行いたいものです。ストレスチェックの結果には、職場環境の改善のためのヒントがたくさん詰まっています。経営者、衛生委員会、人事担当者などが、職場改善のための議論を行うにも、何らかのエビデンスがなければ、説得力がありません。ストレスチェックの集団分析等は、具体的に数値として、何かしらの傾向が出るものです。ストレスチェックに役立つサービスや、運用サポートをしてくれるサービスなど、色々ありますので活用してみるのもよいでしょう。今まで客観的なデータとしてなかなか把握することが難しかった職場の傾向を、ストレスチェックを利用することによって、説得力のあるメンタルヘルス対策につながりうるのではないでしょうか。

ストレスチェック実施の方法は?

ストレスチェックは、プライバシーに関わる事項が多くあります。取り扱いは慎重に行いましょう。

ストレスチェック制度の具体的な実施の方法をみていきましょう。

義務化対象となる事業所は?

義務化対象となる事業所は、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」です。「事業場」なので、単に従業員が50人以上の法人ということではありませんので、注意が必要です。ただし、50人未満だからといって、ストレスチェックを実施する必要がないというわけではありません。従業員の心と体を守り、生き生きと働けるようにするには、50人未満の事業場であっても取り組みの効果はあるでしょう。

常時使用する労働者とは?

最近は雇用形態も様々です。常時使用する労働者の意味を確認しておきましょう。一般定期健康診断の対象者と同様です。

① 期間の定めのない労働契約により使用される者

② 期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約期間が1年以上である者

③ 期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者

④ 期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約更新により1年以上引き続き使用されている者

⑤ 1週間の労働時間数が同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

ストレスチェックを行う頻度は?

会社は従業員に対して1年内ごとに1回、定期的にストレスチェックを行う必要があります。年1回いつ実施するかは企業の任意です。繁忙期の後など、業務の負荷や負担度合いを判断しやすいでしょう。

ストレスチェックの実施の流れは?

①ストレスチェックを実施する旨の方針、実施日などの従業員への告知

②調査票を用いたストレスチェック

厚生労働省が推奨している「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」が一般的に使用されていますが、外部サービスなどでは、これら簡易調査票を網羅したストレスチェックサービスなども様々あります。

③ ストレス状態の評価

回収した調査票をもとに、ストレス状態の評価を行います。産業医や保健師、厚生労働省が定める検修を受けた看護師などが行います。

④ 結果の通知

調査票をもとにストレス状態の評価を行った結果を、直接従業員本人に通知します。

⑤ 高ストレス者に対する医師の面接指導

ストレス状態の評価の結果、高ストレス者と判断された従業員には、産業医など医師による面接指導を促します。原則、本人の希望により面接を受けることになります。医師の面接指導により、業務転換や休養が必要と判断された場合には、会社は必要に応じて改善措置を行います。

労働安全衛生法では、ストレスチェックの結果を産業医などの医師、従業員本人以外は知られないようなしくみとなっています。本人の同意がある場合には、会社側が知ることもできますが、プライバシーに関わる個人情報ですので、取り扱いには十分注意です。当たり前ですが、この結果により、従業員に不利益な対応を取ることも禁止されています。

⑥ 職場ごとのストレス傾向を分析

従業員個々のストレス度合いを確認することのほかに、会社としてストレスが発生している要員を分析し、人員補充や業務量のコントロールなどの問題点を解決していくことで、未然にメンタル不調や健康被害を防ぐための措置を講じていく必要があります。

⑦ 所轄労働基準監督署への報告

毎年、ストレスチェックの結果や面接指導の実施状況を、所轄労働基準監督署に報告しなくてはなりません。この報告を怠ると、50万円以下の罰金が科せられます

ストレスチェック制度は就業規則に規定すべき?

ストレスチェック項目を就業規則に規定する場合には、専門家である社会保険労務士がご相談をお受けします。

これまでご説明してきた義務化されているストレスチェック制度ですが、就業規則に記載する法令上の義務はありません。しかしながら、ストレスチェックで高ストレス者と判定され従業員に対して、会社は業務内容や労働時間の変更を指示する可能性もあり得ます。こうした措置を行う場合に備え、就業規則に規定しておくほうがよいでしょう。厚生労働省の「モデル就業規則」においても、ストレスチェックに関する項目が記載されています。

厚生労働省 モデル就業規則

(ストレスチェック)

第59条  労働者に対しては、毎年1回、定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。

2 前項のストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。

3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を命ずることがある。

厚生労働省「ストレスチェック実施プログラム」とは?

厚生労働省の「ストレスチェック実施プログラム」をご存知でしょうか。ストレスチェック義務の対象となる会社はすでにご利用されているかもしれません。一方、義務化の対象ではない会社では、まだ取り組んでいない場合も多いかもしれません。その場合には、厚生労働省「ストレスチェック実施プログラム」を利用してはいかがでしょうか。会社規模を問わず利用でき、従業員のストレスチェックはもちろん、結果の集計・分析、労働基準監督署への報告書も作成できるので便利です。

まとめ

労務コンサルティングチームの中村です。
一度ご相談ください。状況を整理します。

いかがでしたでしょうか?
ストレスチェックが義務化されて5年目となりますが、まだまだ生かし切れていない会社や対応できていない会社もあるのではないでしょうか?
また、今回の新型コロナウイルス 感染拡大の影響により、さまざまなストレスリスクが発生していることと思います。
企業の対応が後手に回らないためにも、法律で決まったことだからというわけではなく、自社の状況に合わせて、適正に実施していくことが求められます。実施したいがどうしたらよいかわからない、情報の取り扱い方は?など、ストレスチェックに関わるご相談は、お気軽にお問い合わせください。

御社の状況に合わせたご提案をさせていただきます。

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代表取締役 清野光郷 様

KRS株式会社 代表取締役 清野光郷様

岐阜県 鳶工事業 従業員数23名

労務相談の顧問や就業規則の整備をお願いしています。そもそも私自身の考えになりますが、社員の成長と私自身の成長が、会社自体の伸びにつながると考えています。そして、そのためには働くための当たり前の体制が整備された「まともな会社」であることが前提となるでしょう。そこの組織づくり・成長する基盤づくりを進めるにあたっての不安点をよく相談しています。

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