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社労士が解説!就業規則の周知の方法と注意すべきポイント

社労士が解説!
就業規則の周知の方法と注意すべきポイント

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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就業規則は作成することも重要ですが運用することが何よりも大切です。

「就業規則」は会社と従業員の約束事です。就業規則はさまざまなルールが記載されている大切なものです。法改正の都度、企業環境の変化に対応するため、ブラッシュアップしていく必要もでてきます。ただ、最も重要なことは、就業規則の「作成」よりも、それを従業員に「周知」し、実際に運用し、浸透させていくことです。

どれだけ立派な就業規則を作成したとしても運用できなければ意味がありません。

今回は、就業規則の作成後、従業員への「周知」に着目し、周知の方法や注意すべきポイントについて解説します。

就業規則の周知と義務とは?

「就業規則」を新たに作成したり、変更した場合は、所轄の労働基準監督署への届け出が必要です。しかしながら、届け出をしたからといって、それで終了ではありません。

この「周知」については、労働基準法第106条において、「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」としています。

就業規則を届出後、従業員に、就業規則の内容を「周知」させて、はじめて効力をあらわすという意味です。周知の際より注意したいのが、この「周知」の意味です。作成・変更した時にだけ「周知」すればよいというわけではありません。従業員が就業規則の内容を確認したいと思ったときには、いつでも確認することができる状態にする必要があるのです。就業規則は、会社の意向で作成できるものなので、作成や変更がされる際には、会社に法的手続きを課し、従業員を保護するといった意味合いがあります。

就業規則の場合は、就業規則の作成を怠った場合は作成義務違反、届け出を怠った場合は届出義務違反になります。さらに、周知についても、罰則が科されており、従業員の周知がされていない場合は「周知義務違反」となります。是正勧告や指導、場合によっては罰金が科されるケースもあります。

会社が怠ると、労使間トラブルが発生し労働審判や裁判に発展した際、従業員にきちんと周知していなかった場合は、就業規則自体が無効とされる場合もあるので、しっかりと押さえておきましょう。

 

就業規則の周知の方法は?

労働基準法では、会社の従業員への就業規則の周知方法についても定めています。
周知は、以下の3つの方法のいずれかとされています。

1)常時各事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付けること

休憩スペースや更衣室、その事業所の従業員が、誰でも手に取れるような場所に置いておくことが必要です。また、各事業所とは、支店、店舗、工場などそれぞれの事業所のことです。それらが複数存在する会社においては、それぞれ掲示または備え付ける必要があります。

2)書面を従業員に交付すること

就業規則のコピーを従業員に渡すことでの周知です。ただし、従業員の外部への持ち出しも可能になることから、会社によっては、外部への持ち出し制限などが必要な場合もあるでしょう。

3)パソコンなどでデジタルデータとして記録し、従業員がいつでもアクセス閲覧できるようにする

最近ではこの「パソコンなどでデジタルデータとして記録し、従業員がいつでもアクセス閲覧できるようにする。」方法が一般的な方法となってきました。社内サーバーがある場合におすすめです。ただし、2)書面交付同様に、外部への持ち出しが可能となるので、会社情報を外部へ漏らしたくない場合などは、データにダウンロード制限や印刷制限をかける等の対応が必要になってくるかもしれません。

【周知されたことにならない周知の方法】

① 一部の従業員のみに周知されている

特定の事業所の従業員だけ、管理職だけ、就業規則を見たいと申し出た従業員だけ、といった、一部の従業員のみに周知している場合は、周知義務を満たしているとはいえません。

② 口頭の説明のみで周知されている

全従業員は対象としたものの、口頭のみで説明した場合は、周知義務を満たしているとはいえません。必ず、書面で、明示できるようにしましょう。

 

就業規則の周知のタイミングは?いつ行うの?

労働基準法のうえでは、就業規則を作成・変更した際には、従業員に周知すればよいとしていますが、周知のタイミングまで詳しく言及していません。通常、労働基準監督署への届け出の後、従業員に周知することで就業規則の作成・変更手続きは終了します。しかしながら、前述したように「周知」しなければ、意味がありません。就業規則に拘束力を持たせるには従業員に周知させなければなりません。極端なことをいえば、就業規則の作成または変更手続きにおいて、意見聴取や労働基準監督署への届け出を怠ったとしても、従業員に周知させていれば就業規則は法的拘束力を持つこともあります。

よって、会社は、いつから就業規則を適用したいのかを決めた上で、手続きの流れを把握し、周知する(効力を発生させるタイミング)を検討する必要があります。

実務のうえでは、従業員への周知のタイミングは、計画的にすすめることをおススメします。
余裕をもって周知を行い、経営者と従業員が十分な話し合いをしながら進めることが重要です。

就業規則はどの規則までを周知しなければならないの?範囲はどこまで?内規の周知は必要? 

トラブルになりやすい労働時間や休み、お金に関するルールは周知することが望ましいでしょう。

就業規則は会社のルール、従業員に周知しなければならないのは、前述のとおりです。しかし就業規則だけでは会社のすべてのルールを網羅できていない場合もあります。給与規程、退職金規程、慶弔見舞金規程、旅費規程などを別に設けたり、この中で決められない細かなルールについては、内規として定めている会社も多くあります。

では、この内規も、周知義務があるのかというと、判断が難しいところです。

判断としては、その内規が就業規則の一部として認められるかどうか、また労働慣行となっているかどうかがポイントです。

就業規則は概略を定めていて、詳細は別規程で定めているといった場合には、就業規則の一部となります。一方で、そうした定めがないものの、労働慣行が継続的に続いているような場合は、法的効力が発生するとみなされるケースもあります。

就業規則はあくまでも労働基準法に定められた事項に関するもの、内規はあくまでも内部のルールのため、法的根拠や裏付けがあるとはかぎりません。就業規則の範囲となるもの、それ以外の内部ルールとするもの、そして内規ルールを定める場合には就業規則が優先する旨などを明記するなど、会社側・従業員側双方が認識を共通にしておくことが、無用なトラブルを防ぐことにもつながります。たとえ会社で付帯的に定めた事項だったとしても労働トラブルとなりやすい労働時間や休み、お金に関することは周知しておくべきでしょう。

就業規則の周知は10名未満の場合には必要?

労働基準法では、従業員が常時10名以上の場合は、就業規則の作成が義務付けられています。よって、従業員が10名未満の会社では、作成届出の義務はありません。しかしながら、10名未満の会社であっても、就業規則を作成することによって、会社のルールを明確にして、従業員に周知することが可能です。10名未満の会社が就業規則を作成した場合には、届出の義務はありません。ですが、ルールとして運用するためには周知しておくことが望ましいでしょう。

就業規則は会社のルールです。ルールがあるからこそ従業員は安心して働くことができます。10名未満といえど、作成しておいた方がいいでしょう。

就業規則の周知に関わる判例

実際に、就業規則の周知に関する判例をご紹介します。

【中部カラー事件】

退職した従業員に支払うべき退職金に関し、退職金について定められた就業規則の変更が実質的に周知されていなかったとして、裁判所は変更後の就業規則の効力がないとされました。この退職金制度の変更は、退職金の大幅な減額、支給条件の変更などもあるにもかかわらず、計算方法や変更によるデメリットが十分に説明されていないと判断されました。

会社側は、就業規則の変更に関して、朝礼での2度の説明を実施、また、従業員からの質問を受けた、就業規則も休憩室に常時置き、周知義務を果たしているものとして反論したものの、口頭での説明や書面を見せただけでは従業員に対して周知義務を果たしているとは認めらないとして、就業規則の変更は認めないという判決がされました。

従業員が見られる場所に就業規則があるというだけでなく、不利益変更の場合には従業員が正確に理解できるような形でなければ、実質的周知は認められないと判断されています。

【フジ興産事件】

会社は就業規則に基づき従業員を懲戒解雇しましたが、その懲戒解雇は直前に施行された新就業規則に基づくもので、労働基準監督署に届けられたのが当該解雇の直前であり、従業員に周知されておらず、「周知されていない就業規則による解雇は無効だ」として損害賠償を請求しました。最高裁は、懲戒処分を行うには就業規則を従業員に周知させていることが必要であるとしました。

 

このように就業規則が法的効力を持つためには、従業員への周知が不可欠ということです。

 

不利益変更の際の周知の方法

事業環境や労働環境の変化などによって、会社の判断で就業規則の不利益変更をしなければならない場合も発生します。不利益変更というと、ネガティブなイメージが強いため、許されないのではと思いがちですが、就業規則の変更に合理性があり、就業規則がきちんと周知されている場合には、有効になることもあります。一定の要件を満たせば認められているのです。

① 従業員全員の同意を得られる場合

② 従業員の同意が得られない場合でも、その変更が合理的と認められる場合

ただし、合理的かどうかの判断は、労働契約法第10条をもとに総合的に考慮して判断する必要があります。

就業規則の不利益変更を行う場合には、通常の就業規則の変更とは違い、慎重に進めていく必要があります。従業員の同意を得ないままに、一方的に不利益な変更をし、届出、周知をしたところで、反発を生み、労働トラブルを発生させてしまうだけです。

従業員の周知の前段階で、従業員の同意を得るための、プロセスを踏む必要があります。

従業員に個別面談などで説明する、従業員への説明会を開く、といった機会が必要になってくるでしょう。あわせて、同意書にサイン等をもらうなども必要です。そのうえで、就業規則を変更し、届出、周知をしていくのがよいでしょう。

就業規則の周知のまとめ

いかがでしたでしょうか?

最近、就業規則の周知が適切に行われていたかどうかがトラブルとなることが増えています。就業規則の変更を行ったが、従業員がその変更を知らないということでトラブルになっているケースです。

多くの経営者が就業規則は、労働者代表の意見を聞き、労働基準監督署に届出を行えば周知の義務を果たしたと思っているのではないでしょうか?周知の義務を履行するためには、労働基準監督署に届出るだけではダメです。適切な方法で周知をする必要があります。

就業規則の周知がされていないと、状況よっては就業規則が無効とされてしまうこともあります。

就業規則が無効となってしまうと、企業にとってはさまざまなリスクが発生します。会社の運用の多くは就業規則に従ってされているからです。こうしたトラブルは防げるトラブルだと思います。

正しい知識を持ってさえいれば、正しい手順をおって就業規則の周知を行うことができます。また周知も大切ですが、本当に大切なのは運用です。革張りのケースに入ったどれだけ立派な就業規則を作成したとしても、絵に描いた餅では意味はありません。

就業規則を運用することで会社が成長してこその就業規則です。

社会保険労務士法人とうかいでは就業規則に関する初回無料相談を実施しています。
運用まで含めて就業規則を見直し、会社をよくしたいと思う経営者・人事担当者の方はぜひお申込み下さい。

動画での解説はこちら!
就業規則の周知方法
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KRS株式会社
代表取締役 清野光郷 様

KRS株式会社 代表取締役 清野光郷様

岐阜県 鳶工事業 従業員数23名

労務相談の顧問や就業規則の整備をお願いしています。そもそも私自身の考えになりますが、社員の成長と私自身の成長が、会社自体の伸びにつながると考えています。そして、そのためには働くための当たり前の体制が整備された「まともな会社」であることが前提となるでしょう。そこの組織づくり・成長する基盤づくりを進めるにあたっての不安点をよく相談しています。

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