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【2025年4月施行】厚生労働省が就職お祝い金を原則禁止に!
それでも金銭等の提供がなくならないのはなぜ?

2025年4月から、厚生労働省の新たな方針により、「就職お祝い金」が原則禁止されます。この改正は、求人業界における倫理的な問題や求職者の選択肢を広げるための施策です。求職者が金銭的な誘因に惑わされず、質の高い人材紹介サービスを選択できるようにすることが狙いです。今後、金銭的なインセンティブが制限されることで、求人業界にどのような影響が現れるのか注目が集まっています。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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就職お祝い金禁止への経緯と背景

就職お祝い金禁止への経緯と背景を解説します。

職業紹介事業者からの「就職お祝い金」が禁止される背景には、いくつかの要因があります。今までの求人・職業紹介業界の慣行で、企業や紹介事業者が求職者を集めるために、就職したらお祝い金として金銭を提供するケースがありました。いわゆる「就職お祝い金」です。ただし、目先の金銭の影響で適切な職業選択が妨げられているとの指摘もありました。求職者が労働環境や企業の実態をしっかりと確認することが難しくなっていたのです。

このような状況を踏まえ、厚生労働省は職業紹介事業者に「就職お祝い金」への規制を強化することになりました。ただ、この「就職お祝い金」は、すでに2021年4月より禁止されているもので、2025年4月から、さらに、募集情報提供事業者においても同様の措置を講じることが決定されたのです。

就職お祝い金とは何か

就職お祝い金とは、求職者が就職活動に利用した人材紹介事業者などから、就職が決定した際に支給される金銭や物品を指します。この制度は、人材紹介事業者への求職者の登録を促進するインセンティブとして採用されてきました。求人情報を公開する際にも、求職者へのアピールポイントとしても利用されてきたものです。

過去には、このお祝い金システムを活用することにより、採用活動が活発化し、就職がスムーズに進む効果も見られました。しかし、長期的に見れば、課題も指摘されてきました。なぜなら、就職お祝い金目的に、同じ求職者が繰り返し転職を行うケースが増え、市場の安定性が失われてしまったのです。結果、人材を求める企業と求職者の適切なマッチングを難しくする問題となり、求人全体の信頼性にも影響を及ぼしかねない状況となりました。

厚生労働省による規制強化の背景と目的

2021年4月、人材紹介業者が就職お祝い金を支給することが禁止されました。求職者が金銭的な恩恵だけを基に判断することを避け、より良い就職環境を提供するためです。背景には、お祝い金の提供が労働者の意思決定に影響を及ぼし、求人数や企業の実態を正確に評価できなくなることで、労働市場全体に悪影響を与える可能性が懸念されていたことがあります。厚生労働省は、これまでの経緯や問題点を踏まえ、就職お祝い金を原則禁止する方針を打ち出しました。

そして、今回2025年4月からの規制強化では、その範囲を募集情報等提供事業者も含めることとし、求職者がより正確な情報を基に就職活動を行える仕組みが整備されます。金銭的な誘惑から働く人々を解放し、求職者が適切な判断を行える仕組みを整えることを目的としています。また、この新たな制度は、職業選択における公平性を高めるための基準を設けることにより、健全な労働市場の発展を目指しています。

これにより業界全体の信頼性向上が目指されています。また、労働環境の改善や、採用後の定着率の向上といった効果も期待されています。

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

「この求人サイトからの転職が成功したら、お祝い金◯万円プレゼント」といった売り文句で、求人登録を促すサイトを一時期よく見かけました。最近、減ってきたような気はするものの、一部ではまだ求職者の誘導に利用しているケースもあるようです。これらのお祝い金については原則禁止です。2025年からはさらに規制が強化されますので、もたらす影響を積極的に把握することが重要です。

2025年4月から適用される新制度の詳細

2025年4月から適用される新制度の詳細を見ていきましょう。

2025年4月1日から新たに施行される制度により、募集情報提供事業者による、労働者への就職お祝い金の提供が原則禁止されます。求人サイトや求人情報メディアに対しても、求職者に就職お祝い金の支給することが禁止されるのです。これは求人業界に大きな影響を与えると考えられています。求職者が金銭的な動機に左右されず、自らの適性や希望に合った職場を見つけやすくなることが期待されます。求職者はより信頼性の高い求人情報を得られるようになり、業界全体が透明性を確保しながら成長する基盤が整備されることが期待されています。

提供が禁止される就職お祝い金の具体例

就職お祝い金には、金銭だけに限りません。具体的には、金銭やギフト券に加え、カードやアプリのポイントなど、金銭的価値を持つものも含まれます。たとえば、「転職成功時に○万円プレゼント」といった提供がこれに該当しますが、こうした慣行は新たな規定によって禁止されています。この規定により、求職者が登録するための誘因として金銭的価値のあるものを提供することができなくなります。

募集情報等提供事業者における規制強化の影響とは

募集情報等提供事業者の役割は、求人情報を求職者に提供することに限られます。就職お祝い金提供が禁じられると、その事業モデルが根本から見直す必要も生じるでしょう。求職者が自発的に登録したくなるような魅力的なコンテンツや支援体制の構築が必要です。質の高いサービスを提供することは、短期間の成果だけでなく、企業や求職者との信頼関係を長期的に構築することにもつながります。金銭的なインセンティブを用いずに、いかに求職者を集めるかが重要なテーマとなります。競争が激化する市場での優位性を確保するための重要なカギとなるでしょう。

これまでの成功報酬型のビジネスモデルが通用しなくなるため、質の高い情報提供やサービス向上が不可欠です。しっかりとした情報提供が行われない場合、提供情報の質や信頼性の担保がなければ、業界内での信頼を築くことは難しいと言えます。募集情報等提供事業者に求められるのは、これらの規定に基づき、新しい制度の中でいかに工夫と選ばれる価値を創出するかという点に他なりません。

大矢の経営視点のアドバイス

就職お祝い金目当てに、何回も離転職を繰り返すケースがあったといいます。とくに人材不足の業界では、就職祝い金を受け取った後、すぐに転職し、再度、お祝い金目当てに就職するといった離転職を繰り返すというものです。人材不足の業界では、退職しても比較的容易に次の転職できるため、こうした悪用が続出し、規制が強化されていくことになりました。

原則禁止される金銭等の提供、その例外とは

原則禁止される金銭等の提供、その例外を確認しましょう。

改正指針では「社会通念上相当と認められる程度」を超える金銭等の提供を禁止する、とされています。これが原則、就職お祝い金の提供が禁止というものです。返せば、社会通念上相当と認められる程度であれば、金銭的な提供が例外として認められるということとも言えます。正当な理由に基づく金銭や物品の提供がすべて禁止されるわけではなく、状況に応じて適正な条件が考慮されます。

社会通念上の例外規定が認められる場合

社会通念上、例外として認められるケースがあります。社会通念上相当と認めれられるには、就職後、早期に退職したり、複数回の離転職を繰り返し金銭等を受け取るなどのトラブルを発生させないような金銭等の提供ということになります。例えば、求人サイトサービス向上を目的としたアンケート実施を行い、その結果に基づき抽選で小額の報酬を提供する場合などが該当します。500円程度の電子ギフト券を提供するケースが一般的です。その他、転職フェアでの参加者に対して提供される小額のギフト券が挙げられます。イベントに来場した求職者へは、景品として500円程度のギフト券を付与することが認められる場合があります。このような事例では、目的が明確に定められており、求職者への過剰なインセンティブとして扱われる性質を持たないため、禁止規定に反しないと考えられます。

求職者が不当に誘導されることなく、質の高いフィードバックを得ることを目的としており、基準を守った範囲内で行われる必要があります。この際、提供内容が正確に記録・明細化され、透明性を確保することが重要です。求職者の選択を実質的に侵害しない限り、規定の範囲内で柔軟に対応することが求められています。新たな規制に基づく運用がどのように展開されていくか、その詳細についても明確化が進むことが期待されます。今後も規定の趣旨を十分に理解した上での対応が重要となるでしょう。

2025年施行後の企業や事業者に求められる対策

2025年施行後の企業や事業者に求められる対策を見ていきましょう。

2025年4月から実施される新制度により、企業や事業者は就職お祝い金の禁止に適応した対応が必要です。違反時の指導や罰則もありますので把握しておく必要があるでしょう。違反が確認された場合、許可の取り消しといった厳しい措置が執られる可能性があるため、これに対して準備を整えておく必要があります。

違反時の指導や罰則について

職業紹介事業者は、厚生労働大臣の許可を受けて事業を行っています。お祝い金の提供が禁止される中、違反が確認された場合には、厚生労働大臣より指導や助言が行われます。その指導や助言内容に基づいて、企業や業者に対して改善命令が発令されることがあります。さらに、改善の見込みが認められない場合や再犯が発生した場合には、規定に基づくより厳しい罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。事業の停止命令が下されたり、職業紹介事業者としての許可が取り消される恐れもあります。この許可が取り消されるリスクがあるということです。このようなリスクを避けるためには、事前に該当する法律や規定を十分に理解し、コンプライアンスを徹底した適切な運営を行うことが不可欠です。また、法律改正の動向に常に注目し、違反を防止するためのガイドラインを策定し実践することが、事業者の信頼を守る上で重要となります。

制度対応のために必要な準備と対応策

新制度への対応には、社内ルールの再構築や職業紹介に関する基本事項の再確認を行うことが求められます。規制強化に適応し、柔軟に対応するための重要なステップです。また、求職者に対して質の高いサービスを提供する姿勢を維持するとともに、金銭的なインセンティブに頼らない持続可能な戦略を立案することが重要です。

さらに、社内教育を通じて従業員に新制度について十分に周知し、企業全体として一致団結して取り組む体制を整えることが欠かせません。制度の内容を全従業員が理解し、共有することで、適切な運用が可能となり、変化に柔軟に対応できる企業体質が強化されます。

新制度によって、既存のアプローチを見直す機会が得られるため、マーケティングや人材育成を含む全体の仕組みの再設計にも力を注ぐ必要があります。この取り組みによって、企業は新たな可能性を発見し、より持続可能なビジネスモデルを構築することが期待されています。こうした対応を積極的に進めることで、企業は変化に適応し、競争力を高める基盤を強化することが可能になるでしょう。

小栗の経営視点のアドバイス

求人業界は、人材は不足している、競争相手も多くいる、雇用構造も変わっていく、ビジネスモデル自体の改革していかなければ、今後ますます生き残りが大変な時代に入りました。お祝い金で求人をつなぎとめるといったビジネスでは通用できない時代となったということでしょう。

新規制を受けた今後の求人業界の展望

新規制を受けた今後の求人業界の展望を見ていきましょう。

2025年4月から施行される新規制により、求人業界は大きな変革を迎えます。特に、就職お祝い金が原則禁止となることが、企業や求職者にどのような影響を与えるのかが焦点となります。これまで金銭的なインセンティブに依存していた採用活動は、質の向上を求められる時代に突入します。企業は金銭的な報酬ではなく、魅力的な職場環境やキャリアパスを示す努力が求められます。このように、採用活動の内容が根本から見直されることで、労働市場がより健全に機能する可能性があります。

影響を受ける採用活動の変化

新たな制度に適応するため、採用活動は大きく変わっていくことが予想されます。具体的には、企業は求人において給与や福利厚生、働き方の柔軟性といった非金銭的な要素を求職者に強調することがますます重要になるでしょう。このようなアプローチは、求職者が自身の価値観やライフスタイルに合った企業を選ぶ際に決定的な要素となり得ます。

さらに、求人広告や転職フェアなどの採用プロセス全体も見直しが迫られるでしょう。企業は求職者との双方向のコミュニケーションのあり方、信頼関係を構築するための方法を模索していく必要があります。並行して、企業独自のブランドイメージや価値観、文化を効果的に発信することも、より大切になってきます。求職者に企業の魅力を伝え、優秀な人材の関心を引き付ける取り組みの強化が期待されます。

更なる規制改正の可能性とその動向

新制度が実施される中で、規制改正に関する議論が引き続き活発化することが予想されます。求人市場の動向や労働環境の変化に伴い、政府や関連機関は新たな指針を打ち出してくる可能性は否定できません。企業はこれらの動向を見逃さないことが求められます。

まとめ

2025年4月からの新たな制度により、就職お祝い金の提供が原則禁止されることになります。この改正は、求職者がより質の高い情報とサービスを利用できる環境を整えるための重要なステップとして位置付けられています。規制強化に伴い、企業や人材紹介事業者、募集情報等提供事業者は金銭的なインセンティブに頼らない採用戦略の構築が求められます。今後は、非金銭的な要素を強調した採用活動や、質の高い職場を示す努力が鍵となります。

求人業界全体が変革の時を迎える中で、対策と準備が重要な要素となります。この変化をチャンスと捉え、持続可能なビジネスモデルを築くための柔軟なアプローチが求められるのではないかと考えられています。

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