給与計算は、企業経営において欠かせない重要な業務です。従業員の給与を支払うには、労働基準法などの法律や就業規則を遵守したうえで、正確な計算結果を導き出すことが必須です。この記事では、正確な給与計算を行うための給与計算の流れ、締め日と支払日の違い、計算方法、そして注意点について解説します。適切な給与計算の手順を理解し、トラブルの防止と従業員の満足度向上を図りましょう。
社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
主な出演メディア
・NHK「あさイチ」
・中日新聞
・船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」
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給与計算の基本ルールと支払いまでの具体的な手順を確認していきましょう。
給与計算の基本ルールは、企業が従業員に適正かつ正確な給与を支払うことにより、法的義務を果たすことです。給与計算は、従業員の勤務時間、基本給、残業代、休日手当、各種控除(社会保険料や税金など)などについて、労働基準法などの関連法規を遵守しつつ、適正な給与額の算定を行うことが重要になります。正確な給与計算を行うための、具体的な手順を確認していきましょう。
給与計算の第一歩は、正確な勤怠情報の取りまとめから始まります。従業員の出勤・退勤時間、休憩時間、残業時間、有給休暇など、勤怠データを収集します。タイムカードや勤怠システムでの打刻情報を利用し、正確な勤怠記録を行いましょう。このプロセスが正しく行われないと、その後の計算がすべて狂ってしまうため、非常に重要です。従業員がミスなく入力するように、就業規則に明記したり、ガイドラインを設けるとよいでしょう。
次に行うのが、支給額の計算です。これは、基本給、割増賃金、各種手当などを含む総支給額の算出を行うプロセスです。
基本給の計算は、従業員の労働条件、雇用契約に基づきます。月給制の場合、月額をそのまま計上します。日給制や時給制の場合は、働いた日数や時間を基に計算を行います。例えば、時給制の従業員が時給1,500円で160時間働いた場合、基本給は240,000円となります。
割増賃金は、通常の労働時間を超えた時間外労働分の労働に対する追加賃金です。時間外労働(残業)、深夜労働、休日労働に対して異なる割増率が適用されます。例えば、時間外労働は基本給の1.25倍、深夜労働は1.5倍が一般的です。割増賃金の計算は、法律で定められた基準を守ることが重要です。
各種手当には、通勤手当、役職手当、資格手当などがあります。これらは、従業員の勤務条件や職務に応じて支給されます。通勤手当は、公共交通機関の利用費用を基に計算します。役職手当や資格手当は、企業の就業規則や給与規程などに基づき給付されます。手当の計算も給与計算の重要な部分ですので、正確に行う必要があります。
支給額の計算が終わったら、次は控除額の計算に進みます。控除額には、社会保険料、雇用保険料や各種税金、欠勤や遅刻による控除などが含まれます。
雇用保険料は、法律に基づいて計算されます。給与総額に対して一定の割合を適用し、従業員と企業の双方が負担します。具体的な計算方法は、毎年厚生労働省が発表するが雇用保険料率に基づきます。健康保険や厚生年金保険については、毎月の給与総額に対して変動するものではありませんので、保険料の改正月でなければ、控除計算の必要はありません。
欠勤や遅刻による控除額は、欠勤や遅刻をした時間分を給与から減額計算します。例えば、欠勤であれば、月の給与額から「1日あたりの単価」を算出して、その単価に欠勤した日数をかけて計算します。遅刻の時間を減額するには、月の給与額から「1時間あたりの単価」を算出して、その単価に遅刻した時間をかけて計算します。
最後に、差引支給額を求めます。これは、総支給額から全ての控除を差し引いた金額です。この計算が完了すれば、従業員へ支払う給与が確定します。計算ミスを防ぐため、計算結果を二重、三重に確認するプロセスを設けることが推奨されます。適正な給与計算を行うことで、従業員の信頼を得ることができ、企業の管理運営も円滑に進みます。
コンサルタント中村の経営視点のアドバイス
給与計算業務は、担当者任せで属人化されていたり、複雑な社内制度に合わせた対応を行うために、非常に大きな工数が発生していることもあります。まずは自社の給与計算業務を今一度、棚卸しし、問題を解消した上で、正確な給与計算を目指しましょう。
給与の締め日と支払日の違いを解説します。
給与計算において重要な概念の一つに「締め日」と「支払い日」があります。締め日は、給与計算の対象となる勤務期間の終了日であり、支払日はその計算された給与が実際に支払われる日です。この2つの違いを理解することが、正確な給与計算を行うためには非常に重要です。
多くの企業では、給与の締め日と支払日が設定されています。例えば、一般的なケースでは給与の締め日が毎月15日、給与支払日を25日とし、前月16日〜当月15日までの期間に働いた給与が計算対象となります。さらに当月払いであるか翌月払いであるかも重要です。具体的には当月払いであれば、7月16日から8月15日までの勤務分が締め日と同じ月の8月25日に支払われるという流れです。この方式により、給与計算のための時間が確保され、正確な金額が支払われるようになります。
給与は毎月1回以上払いの原則、一定期日払いの原則があります。従業員の生活を維持するために、毎月1回以上の支払を行わなければなりませんし、特定の期日に支払わなければならないと定められています。この原則が守られていれば、締め日・支払日は会社が独自に設定することが可能です。
小栗の経営視点のアドバイス
給与の締め日や支払日は会社が独自に設定することができます。ただ、締め日から支払日が短日程の場合には、その日数の中で事務処理をこなさなければなりません。業務の処理負担なども考えておかなければなりません。また、給与支払日の資金の流動も押さえておくなど、慎重に検討する必要があります。
正しい給与計算のために注意すべきポイントを解説します。
正確な給与計算は、従業員の信頼を得るために非常に重要です。これを実現するためには、いくつかのポイントに注意を払う必要があります。特に労務管理、情報管理、そしてスケジュールの徹底が鍵となります。以下でそれぞれのポイントについて詳しく解説します。
労務管理において注意すべき点はいくつかありますが、最も重要なのは正確な勤怠管理です。従業員の出勤・退勤時間を正確に記録し、労働時間を正確に把握します。これに加えて、労働基準法や就業規則に基づいた休憩時間や休日の管理も適切に行う必要があります。また、36協定に基づいた労働時間の上限を超えないよう、適切なシフトを組むことも重要です。これにより、トラブルや法的問題を未然に防ぐことができます。
情報管理の重要性も見逃せません。正確な給与計算には、最新の従業員情報が必要です。例えば、住所変更や扶養家族の増減などの情報は適時に更新されるべきです。データ管理はセキュリティ面でも慎重に行い、プライバシーポリシーに基づいた取り扱いが求められます。また、給与計算ソフトウェアを利用する場合は、定期的なアップデートを行い、常に最新の法規や動向に対応することが大切です。
給与計算を行ううえでは、スケジュールの徹底も欠かせない要素です。給与計算のプロセスには複数のステップがあり、それぞれのステップに適切な時間を確保する必要があります。例えば、締め日から支払日までの間に、勤怠情報の取りまとめ、支給額の計算、控除額の計算、そして最終的なチェックを行う時間が必要です。これらを計画的に行うことで、ミスを防ぎ、従業員に対して確実に給与を支払うことができます。
給与計算を効率化するためのツールをご紹介します。
給与計算は細心の注意を要する業務の一つであり、効率的かつ正確に行うことが求められます。そんな中で役立つのが給与計算ソフトです。給与計算ソフトは、業務を簡略化し、ミスを減らすことができます。多くの企業が利用する「やよいの給与計算」は、その高い機能性と使いやすさで知られています。以下では、「やよいの給与計算」の便利な機能について紹介します。
「やよいの給与計算」は、多機能でありながら直感的に操作できるツールです。給与計算の初心者であっても、比較的簡単に給与計算が行うことのできる便利な機能が含まれています。
勤怠データの自動取り込み機能:出勤時間や退勤時間を自動的に取り込み、手動入力の手間を削減します。
年末調整:最終的な給与支給額だけでなく、扶養情報や保険料データを入力することで所得税の自動計算を行い、給与支払報告書や総括表も簡単に用意できます。
社会保険料の自動計算:最新の法規に基づいて社会保険料を自動で計算し、法的な要件を満たします。
多様なレポート機能:給与明細だけでなく、詳細なレポートを生成することができ、業務の効率を高めます。
クラウド連携:クラウド上でデータを管理でき、どこからでもアクセス可能です。セキュリティも強化され、情報管理が容易になります。
「やよいの給与計算」を使用することで、給与計算担当者の負担を大幅に軽減し、正確で迅速な給与計算が可能となります。これにより、従業員の満足度も向上し、組織全体の運営がスムーズになります。
給与計算は法的義務を果たす重要な業務であり、正確さと効率性が求められます。この記事では、給与計算の基本ルール、具体的な手順、締め日と支払日の違い、注意すべきポイント、効率化するためのツールについて解説しました。適切な勤怠管理、情報管理、スケジュールの徹底などポイントを押さえて給与計算業務を進めることで、ミスなく給与計算を行うことが可能となります。とくにやよいの給与計算は、業務を大幅に効率化し、正確な給与計算が実現できるとあって、中小企業で利用の多い給与計算ソフトです。給与計算業務にお悩みであったり、給与計算システム導入を検討されているご担当者は、ぜひ選択肢として検討してみてはいかがでしょうか?従業員の信頼を得るためにも、正確な給与計算業務を目指しましょう。