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【テンプレート付き】奨学金代理返還支援制度規程の作り方。

会社が従業員の奨学金返済を支援するメリットも解説

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若手の人材を確保するうえで効果的なのが、奨学金代理返還支援制度です。若手社員にとって奨学金の返済は負担になりますが、企業が代わりに返済する仕組みを導入すれば、企業の魅力を高められるでしょう。

奨学金代理返還支援制度を導入したら、対象となる従業員や返済額などを詳細に定めた規程を作成する必要があります。

今回は、奨学金代理返還支援制度の仕組みや規程の作成方法などを解説します。規程のテンプレートもお渡ししていますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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奨学金代理返還支援制度とは

奨学金代理返還支援制度について
解説します。

奨学金代理返還支援制度とは、企業が従業員の奨学金返済を代わりに行う仕組みです。以前から奨学金の返済を支援する仕組みは存在しましたが、2021年4月より「企業から日本学生支援機構へ直接送金する」という対応が可能となりました。

これにより、「返済支援分を従業員へ渡す→従業員が返済する」という流れから「企業が直接返済する」という、シンプルな流れとなりました。企業が従業員の生活を支援する福利厚生の一つとして、注目されています。

 

奨学金代理返還支援制度規程

-企業が従業員の奨学金返還を支援する制度を定めた規程

企業が奨学金代理返還支援制度を導入するメリット

奨学金代理返還支援制度導入は福利厚生制度の一つです。奨学金の返済負担を抱えている、若い従業員の財産形成を支援できます。

従業員本人とってうれしいのはもちろんですが、企業にとってもメリットがあります。以下で、詳しく見ていきましょう。

 

若手人材の採用や定着を図れる

奨学金返還支援制度は、特に奨学金の返済を抱えている若手従業員へアピールできます。少子化によって若い労働力を採用する難易度が高まっている中で、奨学金返還支援制度を導入し、若手従業員へ訴求するのは効果的でしょう。

若手従業員にとって、企業が自分の代わりに債務の返済をしてくれる点は、魅力的なはずです。従業員の資産形成を支援する制度を導入し、他社と差別化できれば、若手や第二新卒などの採用で有利になるでしょう。

また、昨今は雇用の流動化が進んでいます。若年層を中心に転職志向が高まっているため、貴重な労働力を自社で雇用するためにも、「選ばれる企業」である必要があります。

奨学金返還支援制度を導入すれば、採用で有利になるだけでなく、従業員の早期離職を防ぎ長期雇用につながるメリットも期待できるでしょう。

 

鶴見の経営視点のアドバイス

人材の入れ替わりが激しいと、その度に採用コストやOJTなどのコストが発生します。採用に関する一連のコストを削減し、より生産性の高い業務へリソースを割くためにも、奨学金代理返還支援制度の導入は有意義です。

返済額が経費として損金算入でき、社会保険料の算定基礎対象外

返済を肩代わりしている企業にとって、代理返還で支払った金額は、従業員への給与として損金算入できます。また、「賃上げ促進税制」の対象となる給与等の支給額に該当するため、所定の要件を満たす場合は法人税の税額控除の適用を受けられます。

さらに、企業が負担する返還金は原則として報酬に含めないため、社会保険料の算定基礎に含めません。これにより、労使双方の社会保険料にも影響を与える可能性があります。

つまり、従業員へ直接支給する場合よりも税制上の優遇を受けられるため、最終的に手元へ残せる利益を増やせるのです。

企業のイメージ向上につながる

福利厚生を充実化させることにより、「従業員を大切にする会社」というイメージを持ってもらえるでしょう。

従業員の帰属意識を高めるだけでなく、社外にもよいイメージを持ってもらえれば、企業価値の向上や社会的なプロモーションにもつながります。

また、奨学金返還を支援する制度の導入はCSR(社会的責任)活動の一環としても注目されています。「社会貢献意識の高い企業」「従業員を大切にする企業文化がある」というイメージを与えることにより、他社にとって模範的な存在となる可能性があります。

小栗の経営視点のアドバイス

制度を導入すると、日本学生支援機構のホームページや専門学校・大学などへ紹介してもらえる可能性があります。自社の認知度が高まり、応募数が増える効果も期待できるでしょう。

奨学金代理返還支援制度を導入する際の注意点

奨学金代理返還支援制度を導入する際の注意点をご紹介します。

魅力的な福利厚生制度である奨学金代理返還支援制度ですが、導入にあたっていくつか注意すべき点があります。

求償権の行使ができない

奨学金代理返還支援制度の「代理返還」は、民法上の代位弁済とは異なります。企業が返済した分に関して、従業員へ請求することはできません。

損金算入できないことがある

代理返還の対象となる従業員が役員や使用人兼務役員の場合、代理返還した分は一定のものを除き、損金算入できません。また、通常の従業員の場合でも、返還額が過大な場合は損金算入できない点に注意しましょう。

なお、企業が支払う返還額は原則として報酬に含みません。しかし、給与規程により給与に代えて奨学金返還を行う場合は、報酬として取り扱うため社会保険料の算定基礎に含めます。

 

制度の公平性を保つ

奨学金代理返還支援制度の対象となる従業員は、自社が作成する規程で定められます。「〇歳~〇歳」「勤続〇ヵ月以上」「正社員のみ」のように、自社の都合に合わせて対象者を選定できます。

ある程度柔軟に設計できるとはいえ、公平性に欠けると従業員から不満が生じかねません。可能な範囲で公平な基準を設けて、必要に応じて労使間で話し合うことが大切です。

 

従業員のプライバシーへ配慮する

奨学金に関する情報は、個人の経済状況に関わる貴重な情報です。センシティブな情報である以上、慎重に取り扱う必要があります。

奨学金代理返還支援制度の対象となる従業員に対しては、本人にのみ返済額を伝え、他者には伝わらないような対策が必要です。

 

奨学金代理返還支援制度規程の作成に必要な項目

 

支援制度の対象者

・全従業員対象か、特定条件(新卒・中途、雇用形態、勤続年数など)を設けるか明確にする

・対象となる奨学金の種類(日本学生支援機構のみか、民間金融機関も含むか)を明確にする

必要書類

・奨学金の借入総額、借入残高及び返還計画がわかる書類の提出を求める

返還支援額

・支援金額(全額か一部か、上限額の有無はあるのか)を明確にする

・欠勤、休業、休職中などの勤務していない日、期間についても対象とするかを明確にする

支援期間

・「申請のあった日の属する賃金計算期間に対応する月から奨学金の返還が終了するまで」のように、支援期間を明確にする

支援金の位置づけ

・給与の上乗せとして支給するのか、給与とは別に企業が直接返済するのかを明確にする

・それぞれの場合における税金、社会保険料の取り扱い方について説明する

 

「支援の対象となるのは誰か」「いつからいつまで、いくら支援するのか」「申請にあたって必要な書類はなにか」を、規程で具体的に定めましょう。

 

奨学金代理返還支援制度を導入するときの流れ

奨学金代理返還支援制度を導入するときの流れを見ていきましょう。

実際に、奨学金代理返還支援制度を導入するときの流れを見ていきましょう。

  1. 【企業】規程を作成する
  2. 【企業】返還支援対象者を決定する
  3. 【企業】日本学生支援機構に返還支援を申請する(電話またはFAX)
  4. 【日本学生支援機構】企業に返還支援制度を利用するためのID・パスワード等を発行
  5. 【返還支援対象者】機構に「奨学金返還証明書」の発行を申請
  6. 【日本学生支援機構】返還支援対象者に「奨学金返還証明書」を発行
  7. 【企業】「奨学金返還証明書」で返還残額を確認し、支援額を決定
  8. 【企業】機構が指定するフォームより振替口座の登録を行い、預金口座振替依頼書を機構に提出
  9. 【企業】機構が指定するシステムより企業等情報及び支援対象者情報を登録する
  10. 【企業】振替日(毎月6日)に、登録された口座より支援額を引き落とし

なお、支払いは口座引き落としではなく、払込取扱票でも可能です。詳細な手続きに関しては、独立行政法人日本学生支援機構のWebサイトで確認できます。

制度導入後の運用とフォローアップ

奨学金代理返還支援制度の導入後、効果的に運用を続けるためにも、見直しやフォローアップが欠かせません。

企業内における利用状況を調査し、採用の増加や離職率の低下につながっているかを効果測定したり、財務状況を踏まえて制度の持続が可能かを確認します。

制度を利用している従業員とコミュニケーションを取り、制度の活用状況とあわせてキャリア支援も行いましょう。奨学金代理返還支援制度には「人材定着」という人材投資の面もあるため、キャリア支援と連動させるのが望ましい対応です。

制度の対象者と非対象者を含めて、社内全体のエンゲージメントが高まっているかも確認しましょう。社内アンケートを通じて定期的にエンゲージメントを調査し、社内全体によい影響が出ているかを測定します。

 

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

制度を利用している従業員とコミュニケーションを取るときには、事業主の思いも伝えるとよいでしょう。「返済負担が軽くなった分、将来のための自己啓発に充ててほしい」「家族や親孝行のために使ってほしい」などを伝えれば、従業員が「自分や家族が大切にされている」と感じてもらえるでしょう。

制度導入後に見込まれる効果

制度導入後に見込まれる効果を考えてみましょう。

日本学生支援機構の調査によると、専門学校生・大学生の約半数が奨学金制度を利用し、学費の援助を受けています。学生1人当たりの平均借入額は300万円程度で、完済までの平均年数は約15年となっており、若手従業員の負担となっているのが現実です。

また、年齢が若いほど収入は低いのが一般的です。若手従業員は、限られた収入の中で生活費のやりくりや奨学金の返済をしなければならず、将来に向けた貯蓄・資産形成が思うようにできません。

しかし、企業が奨学金の返済を肩代わりすることにより、多少なりとも経済的な余裕が生まれるはずです。従業員に「この会社で働き続けたい」と思わせることで、長期的な定着を促進できるでしょう。

企業にとっても、奨学金代理返還支援制度の導入は、長期的に見るとコスト削減につながります。新卒者の採用や中途採用にかかるコストは、就職サイトへの掲載料金やエージェントへの報酬などを含めて、一人あたり100万以上になるケースが少なくありません。

奨学金の代理返還は、返済状況や自社の規程によって異なるものの、数年~十数年かけて総額100万円程度を負担すれば済みます。つまり、新たに人材を採用するより、既存の若手従業員を長く雇用し続けたほうが経済的にも合理的なのです。

 

奨学金返還支援制度規程の作成は
社会保険労務士法人とうかいへ

社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。

社会保険労務士法人とうかいでは、奨学金返還支援制度規程の作成をはじめ、就業規則や各種規程の作成を承っています。

企業様の状況をヒアリングしたうえで、財務的にも無理のない範囲で、人材採用や人材定着につながる制度をご提案させていただきます。「従業員がすぐにやめてしまう」「なかなか採用につながらない」という悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

規程の作成だけでなく、組織マネジメントや業務効率化など、さまざまな課題を解決するためのアドバイスも行っています。

 

高谷の経営視点のアドバイス

弊社は全国対応で、全国約360社以上の企業様と顧問契約を締結している実績があります。また、オンラインファーストのクイックレスポンスを徹底しており、個人情報のセキュリティ対策も万全です。

奨学金代理返還支援制度規程

-企業が従業員の奨学金返還を支援する制度を定めた規程

まとめ:奨学金代理返還支援規程を作成して人材採用と人材定着につなげよう

2021年より奨学金代理返還支援制度が導入され、企業が従業員に代わり、日本学生支援機構へ直接返済できるようになりました。従業員と企業の双方にメリットをもたらしており、今後ますます注目されるでしょう。

企業にとっては、若手人材の採用や定着につながるだけでなく、返還金を給与として損金算入できます。また、返還額が「賃上げ促進税制」の対象となったり、社会保険料の算定基礎にならないことで社会保険料の最適化にもつながります。

なお、制度を導入する際には奨学金代理返還支援制度規程を作成し、対象者や企業が負担する返済金額などを明確にしましょう。

「自社に合った規程作りをサポートしてほしい」という事業主の方は、社会保険労務士法人とうかいへご相談ください。人事労務や経営の専門家として、貴社に合った実効性のある規程作りをサポートいたします。

 

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