お気軽にお問合せ・ご相談ください

052-433-7280
営業時間
9:00〜17:00 (土日祝は除く)

【運送業】トラック運転手の残業時間の計算方法は?社労士が解説

  • ホーム
  • 給与計算
  • 【運送業】トラック運転手の残業時間の計算方法は?社労士が解説

運送業界で働くトラック運転手の皆さんにとって、残業時間の計算は非常に重要なテーマです。「長時間労働の割に受け取る給与が低いのではないか?」「そもそも残業代が支払われているのかわからない」といったようなトラック運転手の皆さんの声もあります。正確な残業時間の把握と正しい計算方法がされないと、正当な賃金を受け取ることができない可能性があります。本記事では、トラック運転手の皆さんが自分の残業時間と残業代を正確に計算するための方法を、社労士の視点からわかりやすく解説します。基本概念から具体的な計算方法まで、残業代請求に役立つ情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

取材・寄稿のご相談はこちらから

残業の基本概念を理解しよう

残業の基本概念を確認していきましょう。

残業という言葉は日常的に使われるものですが、その正確な法律的定義を知っている方は少ないかもしれません。残業とは時間外労働とも言われ、労働基準法で定められた法定労働時間を超えて働く時間を指します。日本の場合、原則1日の法定労働時間は8時間、1週の法定労働時間は40時間です。この時間を超えた分が「残業」となり、通常の給与に加えて割増賃金が支払われるべきものです。トラック運転手の場合、労働時間というのは特に曖昧になりがちなので、この基本概念をしっかり理解することが重要です。

「残業」の定義とは?

「残業」は、法定労働時間を超えるすべての労働時間を指します。企業は労働者に残業時間に対する割増賃金を支払う必要があります。割増率は、通常の賃金の1.25倍です。ただし、深夜帯(22時から翌5時)や休日の労働にはさらに高い割増率が適用されます。トラック運転手の場合、労働時間が柔軟に変動することが多いので、きちんとした記録をとっておくことが重要です。

鶴見の経営視点のアドバイス

給与計算業務は、担当者任せで属人化されていたり、複雑な社内制度に合わせた対応を行うために、非常に大きな工数が発生していることもあります。まずは自社の給与計算業務を今一度、棚卸しし、問題を解消した上で、正確な給与計算を目指しましょう。

トラック運転手の残業代計算の手順

トラック運転手の残業代計算の手順を解説します。

トラック運転手の残業代計算の手順は、その給与体系によって異なります。給与体系は「固定給のみ」と「固定給+歩合給」が一般的です。具体的な計算方法を見ていきましょう。

給与体系による違い

給与体系には「固定給のみ」と「固定給+歩合給」の2種類が一般的に採用されています。固定給のみの場合は月給を時給に換算して、割増率を乗じることで残業代を計算します。一方、固定給+歩合給の場合は基本給に加えて歩合給を考慮する必要があります。歩合給が含まれる場合は、時給を正確に計算するための手順が一層複雑になります。また、歩合給が高いと、結果的に残業代計算も異なる結果となります。具体的な計算手順については、次のセクションで詳しく説明します。

固定給のみの場合の計算手順

固定給のみの場合の残業代計算手順は比較的シンプルです。まず、月給を月の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金、つまり時給を算出します。その後、残業時間に対して割増賃金を計算します。

時給の計算方法

固定給のみの場合、まず月給を基にして時給を計算します。例えば、月給が30万円、1か月の所定労働時間(例えば160時間)の場合、時給は1,875円となります。

残業時間に対する計算式

次に、法定労働時間を超えた時間である残業時間に対して、1.25倍の割増率を乗じます。例えば、基本時給1,875円、残業時間が20時間であれば、37,500円に1.25を掛け計算しますので、46,875円が残業代となります。

支払済み分の残業手当がないかの確認

最後に、支払済みの残業手当などがないか、確認しておきます。会社によっては固定残業代などが支払われているケースもあります。正確な残業代計算を行った結果、固定残業代を上回るのであれば、その差額金額を支払わなければなりません。

固定給+歩合給の場合の計算手順

固定給+歩合給の場合の残業代計算も、時給換算をすることから始めます。ただし、固定給部分と歩合給部分それぞれに行います。

時給の計算方法

まず、固定給と歩合給それぞれの時給換算を行います。固定給は、月給(固定給)を月の所定労働時間で割って時給を算出します。次に、歩合給は、月給(歩合給)を、残業時間を含めた月の総労働時間で割って時給を算出します。

例えば、固定給20万円と歩合給10万円であり、1か月の所定労働時間が160時間、1か月の総労働時間が200時間だった場合の時給の算出方法を見てみましょう。

・固定給20万円÷160時間=時給1,250円

・歩合給10万円÷200時間=時給500円

になります。

 

残業時間に対する計算式

次に、法定労働時間を超える残業時間に対して、割増率を乗じます。割増率を乗じる際にも、固定給と歩合給はそれぞれに計算することになります。例えば、残業時間が20時間だった場合の残業代を計算してみます。

・固定給20万円÷160時間=時給1,250円

1,250円×20時間×1.25=31,250円

・歩合給10万円÷200時間=時給500円

500円×20時間×0.25=2,500円

固定給分の残業代31,250円+歩合給分の残業代2,500円=33,750円が、残業代となります。ここで注意したいのが、歩合給に対する割増率です。歩合部分についての割増率は、0.25となりますので、固定部分と歩合部分の割増率の違いを確認しておく必要があります。

 

支払済み分の残業手当がないかの確認

最後に、固定給のみの場合と同様に支払済みの残業手当などがないか、確認しておきます。

小栗の経営視点のアドバイス

時間労働が常態化しているトラック運転手の働き方改革として、2024年4月から残業時間を年960時間までの上限とする規制がスタートしました。残業が当たり前の業界にもしっかりと労働時間の管理が求められるようになってきたのです。もちろん、残業時間に即した残業代も適切に支払わなければなりません。トラック運転手のみなさんが、実態に即した残業手当を受け取るには、残業時間やその計算の方法をしっかりと理解しておく必要があります。

よくある残業代不払いのケース

よくある残業代不払いのケースをみていきましょう。

残業代不払いは、運送業界において非常に多く散見されます。特にトラック運転手は勤務時間が不規則なため、残業代の計算が曖昧になることが多いのです。ここでは、特に注意すべきケースをいくつか挙げて説明します。

歩合給の場合の注意点

歩合給の場合、固定給と歩合給のそれぞれに対して残業代を計算する必要があります。しかし、企業側が固定給だけを基にして残業代を計算すると、不当に低い金額しか支払われないことがあります。正しい計算を行うためには、歩合給部分も含めた総支給額から時給を算出し、その上で残業代を計算する必要があります。

みなし残業代の注意点

みなし残業代とは、あらかじめ一定の残業時間分の残業代を給与に含む制度です。しかし、みなし残業代が実際の残業時間をカバーしていない場合、その差額については不払いが発生します。このため、実際にどれだけの残業をしたのかを具体的に記録し、みなし残業時間を超えた分については追加で残業代を請求することが重要です。

みなし労働制の場合の注意点

みなし労働制もまた、不払いが発生しやすい制度です。みなし労働制とは、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ設定された時間分の労働があったものとみなす制度です。みなし労働時間制を適用していたとしても、法定労働時間を超える残業をしている場合には、追加の残業代をもらう権利があります。実際の労働時間を細かく記録し、不当な不払いが発生しないようにすることが重要です。

請負契約の落とし穴

請負契約では、一見労働者としての権利がないように見えることがあります。しかし、実態として労働者と同じ業務を行っている場合、請負契約であっても労働基準法に基づく権利を主張することができます。これには、実際の業務内容や働き方の記録が必要です。特に残業時間については、自己管理が重要となります。

高谷の経営視点のアドバイス

トラック運転手の皆さんは、残業が非常に多い職種の一つです。しかしながら、残業代が適切に支払われていないケースも多くあり、大きな問題です。雇われている先から、「残業代などない」と言われ、そのまま泣き寝入りしているような状態の人もおられます。適切に計算すれば残業手当の対象となるケースも多くありますので、まずはご自身の残業時間、給与形態がどのようになっているか確認し、正しい残業手当の支払がなされているか確認してみましょう。

労働時間の考え方

労働時間の考え方について解説します。

労働時間の概念は、特にトラック運転手にとって非常に重要です。勤務時間の特定が難しい状況も多いため、まずは正確な労働時間の記録とその取り扱いを理解することが不可欠です。ここでは、特に荷待ち時間や渋滞時の労働時間の扱いについて詳しく見ていきます。

荷待ち時間の取り扱い

トラック運転手は、荷主の指示に従って指定の場所で荷物を待つことがあります。この「荷待ち時間」は、労働時間としてカウントされる可能性のある重要な時間です。つまり、荷待ち時間も勤務時間として計算され、残業代の対象になることがあります。しかし、企業がこの時間を労働時間と認めず、未払い残業代が発生するケースも少なくありません。従って、荷待ち時間の記録をしっかりと取り、必要に応じて証拠として提出できるようにしましょう。

渋滞時の取り扱い

渋滞時の取り扱いも労働時間計算において重要です。都市部や長距離運転では渋滞が避けられませんが、この時間も労働時間としてカウントされます。渋滞に巻き込まれた時間は移動中の時間と同じく、業務の一環として扱われます。しかし、一部の企業ではこの渋滞時間を労働時間に含まないケースもあり、不公平な給与計算につながります。渋滞時間もしっかりと記録し、正確な労働時間を報告することが重要です。

未払い残業代請求の重要ポイント

未払い残業代請求の重要ポイントをご紹介します。

未払い残業代の請求は、労働者の権利を守るために重要です。しかし、その手続きを行う上で押さえておくべきポイントがあります。特に時効と証拠の取り扱いについては、十分な注意が必要です。ここでは、時効の概念とその中断方法、証拠の重要性とその対応策について詳しく見ていきます。

時効に注意

未払い残業代の請求には3年間という時効があり、この期間を過ぎると請求権が失効してしまいます。そのため、労働時間や残業時間を正確に記録し、できるだけ早く対応することが不可欠です。

時効を中断する方法

権利を失う前に請求する必要がありますが、時効を中断するための方法もあります。まず、労働基準監督署に申告することが一つの方法です。また、企業に対して書面で正式に請求を行うことも効果的です。これにより、時効が一時的に停止し、改めて請求の準備をする時間が得られます。

必要な証拠とは

未払い残業代を請求するには、労働時間や残業時間を立証するための証拠が必要です。証拠が揃っているかどうかで、請求の成功率が大きく変わります。どのような証拠が必要なのか、具体的に見ていきましょう。

記録保管の重要性

労働時間や残業時間を記録した書類やデータが最も重要です。これには、タイムカードや出勤簿、給与明細などが該当します。これらの記録は、残業時間を立証するために非常に重要な役割を果たします。定期的な記録の保管を心掛けましょう。

証拠がない場合の対応策

証拠がない場合でも、請求をあきらめる必要はありません。まず、当時の同僚や上司の証言も有効な証拠になります。また、メールやメッセージのやり取り、業務日報なども有用です。最も良いのは、できる限り早く証拠を集めることです。

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

残業を証明する証拠としては、タイムカードや業務日報などをはじめ、車載カメラ記録、高速道路の利用履歴などもあります。また運転手に義務付けられているアルコール検知記録なども利用できます。

専門家への相談を検討する

専門家への相談もご検討ください。

未払い残業代の問題に直面した場合には、主に労働問題に詳しい弁護士や社労士など専門家への相談を検討してみましょう。労働者の権利を守るための適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。例えば、どれだけの期間にわたって未払いが発生しているか、どのような証拠があるか、そして既にどのような対応をしたかなど、専門家に相談することで、自分自身では気付かないような細かい問題点や改善点も見つけることができます。

専門家に相談となると、費用についても気になるところですが、多くの弁護士や社労士は初回相談を無料で行っている場合が多いものです。また、成功報酬型の料金体系を採用している専門家もいます。この場合、成功した場合にのみ報酬が発生するため、リスクを最小限に抑えることができます。自分の権利を守り、正当な賃金を受け取るため、躇せずに専門家に相談することを強くおすすめします。それがあなたの問題解決への第一歩となるでしょう。評判や過去の実績をチェックすることで、信頼できる専門家が見つかるはずです。

 

まとめ

トラック運転手の皆さんが適正な給与を受け取るためには、残業時間の正確な計算は欠かせません。まず、労働時間や残業の定義、ご自身の給与体系に関わる残業手当の計算方法についても、理解しておくべきでしょう。固定給のみの場合や、固定給+歩合給の場合に応じた残業代の計算手順をしっかりと把握し、不払いが発生したときの対策を準備しておく必要があります。しかしながら、労基法や残業手当の計算については、わかりにくい部分も多く、ご自身では判断しにくい部分もあるかもしれません。万が一、未払い残業代の可能性がある場合は、弁護士や社労士など労働問題に詳しい専門家のサポートを受けることで、未払い残業代の請求や正当な賃金の確保がスムーズに進むでしょう。トラック運転手としての権利を守り、公正な労働条件を確保し、日々の労働が正当に評価されるよう、今一度自分の働き方や給与明細を見直してみましょう。とうかいにおいても、ご相談をお受けしておりますので、少しでもご不安がある場合には、お気軽にお問い合わせください。

 

最新セミナー

サイドメニュー