経営者が節税できて、社員の福利厚生になり、社会保険料負担軽減の可能性もある。そんな夢のような制度について、導入サポートを手掛けている社会保険労務士法人とうかいの久野勝也氏、小栗多喜子氏に聞いた。
さらにこの人の場合、社会保険料の負担軽減が年額-7万7016円発生する。負担軽減は毎年続くので、もし65歳まで月額報酬などの毎月の設定が変わらなかったとすると、40歳から25年間トータルで下記のような負担軽減が実現する。
社会保険労務士法人とうかい 小栗多喜子氏
上記が実現できたのは、その会社が「企業型確定拠出年金」に加入したからだ。この制度は3重の節税効果を期待できる。
小栗氏「確定拠出年金に加入すると、3回にわたって税制優遇を受けられます。まずは、毎月の掛金が全額、所得控除として差し引かれるので、毎年の所得税や住民税が減ります。さらに、掛金の運用益はすべて非課税になり、将来受け取るときも控除が設けられています」
通常の資産運用では、投資額は所得控除にはならない。また、運用益が生じた場合、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税を合わせて20.315%の税金がかかる。
確定拠出年金を利用して資産運用をすることで、何もしなければ発生する税金の負担を免れることができ、運用で利益が出ればそれにかかる税金もなしというわけだ。
確定拠出年金には、「個人型(iDeCo)」と、会社が制度として導入する「企業型」があり、よく分からず「個人型(iDeCo)」に入ってしまっている経営者も多い。しかし経営者なら断然、企業型の方がメリットはあると久野氏は話す。
社会保険労務士法人とうかい 代表 久野勝也氏
久野氏「掛金の上限額が5万5000円と高く設定されており、手数料を会社の損金に計上できるため、より大きな節税効果を得ることができます。さらに社会保険料の負担軽減につながる可能性もあります。
もともと設定していた賃金の一部を掛金に設定することで、社会保険料の計算基礎となる賃金が下がり、健康保険料などが少なくなるのです」
企業型確定拠出年金の掛金は3000円から5万5000円の範囲で任意で設定でき、基本的にいつでも変更することが可能だ。このしくみによるメリットもあるという。久野氏と小栗氏は、一般に知られていない企業側のメリットについて以下のように語る。
久野氏「税法により、役員報酬は原則として1年にわたって毎月同額にしなくてはいけません。ですから、業績に合わせて役員報酬を変更したくても難しい。
しかし、企業型確定拠出年金の掛金はコントロールできますから、経営が苦しいときは掛金を最小限に設定し、逆に業績が良いときは掛金を上げて社会保険料や税金の支出を抑えることができるのです。
このようなメリットの多さからこの制度の存在を知った企業は、黒字なら8割が導入されます」
小栗氏「企業型確定拠出年金は、従業員にメリットの多い福利厚生として、この制度を利用していることや人材の採用や離職率の低下にもつながります」
EMPOWERMEN株式会社
平川接骨院グループ代表
平川憲秀氏
実際に企業型確定拠出年金を導入したEMPOWERMENT株式会社の代表取締役、平川憲秀氏は「経営者として、社員をいかに大切に考えているかを、口だけでなく形で示すことができた」と語る。
小栗氏「企業型確定拠出年金を通じて運用する金融商品は従業員が個々に選択するため、仮に運用損となった場合にも会社は補てんする必要はありません。
一般的な確定給付の退職金と違い、確定拠出年金は掛金を拠出した時点で企業の退職給付の支払い義務が果たされたことになるため、リスクコントロールの観点からも企業は導入しやすいのです。
加入はあくまでも社員個人の選択に委ねられ、投資はしたくないという人はしなくてもよいのがメリットで、またそのハードルの低さから、社員の最初の資産運用に、と導入する企業もあります」
コストは月額の報酬設定や掛金の額により変わる。正確にシミュレーションをしたければ、以下の社会保険労務士法人とうかいのサイトから無料で計算してもらうのが確実だ。
企業型確定拠出年金を導入すると、毎月の給与明細の作成や、経理上の月次仕訳処理など、税務への影響は少なくない。顧問税理士の協力は不可欠だが、確定拠出年金は一般的には税理士の専門分野ではないだろう。
経営者が導入したいと思っても、顧問税理士がこの分野に詳しくない結果、導入に乗り気でないケースが多いという。
そこで社会保険労務士法人とうかいでは、企業型確定拠出年金導入の一連の業務をサポートしている。
久野氏:社会保険労務士法人とうかいでは、企業の年金・退職金の制度設計をはじめ、申請代行や運用サポートもトータルで支援しています。経営者の方は、ハンコを押すぐらいで大丈夫です。DCプランナーなどの専門家が多数在籍する当事務所にご相談をいただければと思います」
社会保険労務士法人とうかいは、これまで企業型確定拠出年金について約180件の導入支援を手掛け、現在も実績を積み重ねている。
オンラインによる全国からの依頼にも対応可能で、導入効果の無料シミュレーションも行っている。
説明を聞いた黒字企業の8割が加入するという企業型確定拠出年金、支払いを少なくするメリットのほかにも、従業員の福利厚生としても機能する、非常にプラスの多い制度だ。
ぜひ実績のある専門家の力を借りて、導入を進めていきたい。