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もう悩まない!会社がやるべき従業員の退職手続きを詳しく解説

従業員を雇用していればいつかは必ずやってくる退職。ひと言で「退職」と言っても、転職などの自己都合や定年退職等、いろいろな背景があり、必要書類や会社が取るべき対応も変わってきます。
対応すべきことの流れを理解して迅速かつ的確な手続きを行い、退職者との関係を良好なものに保ちましょう。
ここでは一般的な退職手続きについて詳しく述べていきます。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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NHK「あさイチ」

中日新聞
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社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
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退職日が決まった後、人事総務担当者がやるべき手続きの流れ

退職日が決まった後、従業員が実際に退職するまでの期間はどのくらいあるでしょうか?
人事や総務などの実務担当者にとって退職手続きはやるべきことが多いので、できるだけ十分な時間を確保して対応にあたるのが理想的です。
「うちの会社はだいたい1ヶ月くらい」「1ヶ月半前には退職を申し出てもらうよう就業規則に定めているから余裕がある」など、実務上、さまざまなケースを経験されてきたと思います。
しかし、退職まで最短で2週間しかないという事態が発生することがあります。
一般に日本社会で「正社員」とされている従業員は、契約上、雇用期間を定めていない無期雇用が大半で、この場合従業員はいつでも退職の申し入れをすることが可能です。
企業によっては、退職の意思表示について就業規則で「1ヶ月前までに申し出ること」などと規定していることも多いかと思いますが、就業規則はあくまでも会社のルールであり、法的拘束力はありません。
民法においては原則、退職について本人の意思表示から2週間で効力を生じるとされており(民法第627条第1項)、就業規則の規程よりも民法が優先されます。

  • (民法第627条第1項)
  • 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

万が一、会社側が従業員の退職(願)届を受理しなかった場合であっても、本人の意思表示から最短2週間で退職の効力が生じるという点に注意しましょう。

このような事態に迅速に対処するためにも、人事総務担当者は、あらかじめ退職手続きの流れや関連書類を正確に把握しておく必要があります。

退職日が決定してからの会社側が行うべき手続きの流れは一般的に以下のようなものになります。

退職日決定~退職日までの手続きの流れ

  1. 退職(願)届の受理
  2. 退職手続きの説明
    (健康保険の任意継続・住民税徴収方法・退職証明書や離職証明書等の必要の有無を確認)
  3. 退職時誓約書の締結
    (秘密保持・インサイダー・競業避止等に関わるもので必要に応じて)
  4. 退職証明書・資格喪失連絡票の準備
  5. 離職証明書の準備
  6. 退職金の支給準備
  7. 年金手帳等の返却

退職後の手続きの流れ

  1. 雇用保険の手続き
  2. 社会保険の手続き
  3. 住民税の手続き
  4. 退職者へ手続き完了後の必要書類の送付
    (健康保険被保険者資格喪失確認通知書・離職票・源泉徴収票等)

このように、従業員の退職意思が確認できたら、退職手続きの流れや書類について従業員本人へ説明する機会を設けます。同時に、誓約書の締結や雇用保険等の必要書類の準備に着手していきます。

退職日以降は雇用保険や社会保険、税金等の手続きが必要ですが、期限が定められているものもありますので抜けや漏れがないように気をつけましょう。

手続き完了後に、必要書類を退職者へ送付することも必要です。

退職後に転居の予定がある場合は、転居先の住所も聞いておくと手続きがスムーズに進みます。

のちに問題にならないよう、離職票などどの書類を必要としているか、従業員本人の意向を確認しながら手続きを進めることをお勧めします。

退職前・退職後に必要な対応

退社前に必要な対応は、会社側と従業員の間でのやりとりが中心となります。
退職手続きの説明に加えて、誓約書の締結も重要です。
退職する従業員が、今後会社にとって不利益な言動を取ったりトラブルを起こしたりしないよう、誓約書の内容を会社の実情に沿ったものにして事前に対策をしておきます。
退職証明書などの書類の作成や入社の際に会社に提出させていた年金手帳等の返却も、退職前に行っておきます。
退職後は日本年金機構(社会保険)やハローワーク(雇用保険)など関係機関への書類手続きがメインになります。
手続き完了後に会社へ返送されてくる書類は、退職者へ送付が必要になるものもありますのでまとめて揃えておくと良いでしょう。
詳しくはそれぞれの項目で述べていきますが、資格喪失の手続きは期限が決まっているものが多いので、早急にかつ正確に対応していくことが必要です。
手続きの遅れは、会社にとっては納付する必要のない社会保険料を納付しなければならない事態や、退職者が次の健康保険に加入することができずに保険証が手元にない状態が長引くなど、会社と退職者やその家族等、両者にとってデメリットが大きいので、遅滞なく手続きを進めましょう。

退職時に渡すもの

年金手帳

個人の基礎年金番号が載っており、年金種別の変更時にも必要となる年金手帳。

2022年4月以降、再発行できないものになっています。預かっている場合は必ず返却しましょう。

次の勤務先でも使用しますので、退職日の前に返却しておくことが望ましいですが、間に合わない場合は、後日記録が残る方法で送付します。

雇用保険被保険者証

原則は、雇用保険の資格を取得した段階で従業員本人に交付するものですが、慣例として会社で保管していることもあります。その場合は忘れずに退職者へ渡しておきましょう。

退職証明書

退職証明書は、退職者が希望する場合に会社が発行する書類です。

「退職した事実を証明する」ものとなっており、決まった様式はありませんが、「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」の法定記載事項5つのうち、従業員が請求をした項目のみを記載し、請求しない事項については記載してはならないと法律で定められています。(労働基準法第22条第1項、第3項)

用途としては、離職票の発行前に社会保険の手続きをする場合や退職者が転職先から提出を求められる場合が想定されます。

なお、雇用保険の離職票を退職証明書代わりにすることはできません。

退職時に回収するもの

健康保険証

退職日当日までに、本人や被扶養者分の健康保険証を回収しておきましょう。

「高齢受給証」や「健康保険限度額適用・標準負担額認定証」など、保険者から交付されているものがあればそれらも回収します。

紛失したと連絡を受けた場合は、「健康保険 被保険者証回収不能届」を届出することになります。対象の従業員には、後日「健康保険被保険者証の向こうのお知らせ」が送付されます。

貸与品

会社から社員に貸与しているものを回収します。

具体的には社員証といった身分を証明するものや社章、名刺、制服といったものや、パソコン、スマートフォンなどのIT機器類や事務用品等も会社からの貸与であればすべて返却の対象です。

名刺については、本人名義のものはもとより、取引先からいただいた名刺も顧客情報が分かるものになりますので忘れずに回収しておきましょう。

作成・収集した各種資料やデータ

在職中に作成した見積書、企画書、図面など各種資料やデータは業務上の機密事項にあたるため漏れがないように回収します。

トラブル回避のために前述した誓約書でも、機密事項の漏洩について触れておくとよいでしょう。

退職日までに提出してもらうもの

退職所得の受給に関する申告書

退職金の支給対象となっている場合は、退職者本人に「退職所得の受給に関する申告書」の必要事項を記入してもらったうえで提出させます。

本書類受理後は、就業規則にしたがい速やかに退職金の支給準備を行いましょう。

退職金は給与などとは別に税額の計算を行い、納付する必要があります。退職金についての源泉徴収票も発行しなければなりません。

退職後に渡すもの

離職票-1、-2

離職票には「離職票-1」と「離職票-2」というものがあります。

前者は、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)と兼ねていて、退職者が失業給付を受ける場合に、振込先の金融機関情報等を記入する欄がある書類です。

後者は会社が提出する「雇用保険被保険者離職証明書」3枚複写のうちの3枚目にあたるもので、こちらも失業給付の手続きの際必要となります。

「離職票-1」と「離職票-2」はどちらも退職者へ送付すべき書類となっています。

源泉徴収票(給与・賞与、退職金)

給与・賞与は最後の支給が終わり次第、源泉徴収票を発行します。退職金がある場合も、退職金についての源泉徴収票を発行しましょう。

源泉徴収票の対象期間はその年の1月から12月までの1年間です。

そのため、たとえば年末の退職者に対して2022年12月に賞与を支給し、2023年1月に最後の給与が支払われた場合、源泉徴収票は2022年(令和4年)分と2023年(令和5年)分の2枚必要になります。

このケースで退職金も支給した場合は、別途退職金についての源泉徴収票も必要となるため、合計3枚発行することとなります。

健康保険被保険者資格喪失確認通知書

健康保険被保険者資格喪失確認通知書は、健康保険の資格喪失手続きが完了した後、保険者から会社に送られてくるものです。(詳しくは下記「社会保険(健康保険、厚生年金保険)の手続き」参照)

雇用保険の手続き

退職者が雇用保険に加入していた場合、資格喪失の手続きをしなければなりません。
「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに提出することで手続きが可能です。
提出期限は「被保険者でなくなった日の翌日から10日以内」とされていますが、分かりやすく「退職した日の翌々日から10日以内」と覚えておきましょう。
退職者が離職票の発行を希望している場合には「雇用保険被保険者離職証明書」という3枚複写の書類もあわせて提出が必要です。
3枚複写になっている2枚目に、退職者から記載内容の確認についてや離職理由についての異議の有無と署名(記名押印)をもらう欄がありますので、可能であれば退職日までに本人に対応してもらったものを回収しておくと良いでしょう。(従業員本人の対応が難しい場合は、事業主の押印でも対応可能)
なお、退職者が59歳以上の場合は本人の希望によらず、本手続きの際に必ず上記の「雇用保険被保険者離職証明書」の提出が必要ですので覚えておきましょう。
あわせて、出勤簿や賃金台帳、退職届などの書類の提出が必要となります。
雇用保険資格喪失の手続きが終わると、「離職票-1」と「離職票-2」が会社に届きます。
速やかに退職者へ送付の手配をします。

社会保険(健康保険、厚生年金保険)の手続き

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続きは、「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」を日本年金機構(管轄の年金事務所または事務センター)へ提出することで行えます。
提出期限は従業員が退職した翌日から5日以内と比較的短いので注意が必要です。
提出の際は、退職者本人や被扶養者の保険証の添付が必要です。
万が一回収できなかった場合には、「被保険者証回収不能届」を添付することで手続きが可能です。
手続き完了後は会社に「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が届きますので、こちらも退職者へ送ります。

住民税の手続き

住民税の手続きは状況により対応が分かれます。
まず、比較的多い状況として、在職中から特別徴収による納付をしていて、すでに次の就職先が決まっているので、給与の支払いに間隔が空かないケースです。
この場合は、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」に必要事項を記入し、次の転職先へ書類を引き渡します。
引き渡された書類をもとに、転職先の企業が従業員居住の市区町村へ手続きをすることで、そのまま特別徴収が継続されます。
次は、特別徴収を行っていたものの再就職まで期間があり、給与の支払月に間があいてしまう場合で、退職者本人により普通徴収への切り替えが必要となるケースです。
この場合は退職者本人が、退職日の翌月10日までに「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出しなければならないため、会社側で新たに対応することはありません。
会社側は給与から住民税を天引きした月の分までを、これまで通り特別徴収にて納税すれば良いのです。
このような場合は、退職時に住民税の手続きが必要になる旨を退職者へ伝えると親切です。
なお、在職中から普通徴収で住民税を納付していた従業員の場合は、会社として対応することは特にありません。

退職時の対応で注意しておきたい3つのポイント

ここまで一般的な退職手続きについて、主に公的な部分にスポットを当てて詳しく見てきました。
ここからは、退職者が財形貯蓄制度を利用している場合や外国人の従業員が退職する場合などの特に注意しておきたい3つのポイントを取り上げて解説していきます。

①退職者が財形貯蓄をしている場合

社内で財形貯蓄制度を設けている企業もあると思います。

一般的に退職した場合は退職後半年以内に、財形貯蓄を取り扱う金融機関へ「退職等の通知書」を提出する必要があります。

退職者本人の意向を確認する必要はありますが、退職後は財形貯蓄は解約となるのが通例です。解約したものは当然、課税扱いとなります。

例外として、転職先の企業でも財形貯蓄がある場合は、本人に継続意思があれば解約手続きは不要です。この場合でも、次の勤務先が「勤務先異動申告書」等の提出といった所定の手続きをするので、自社として対応するものはありません。

他にも、転職先がまだ決まっていないなどの理由で、2年間は積立を保有しておくことができます。退職者が積立継続を望む場合は、ただちに解約手続きをしないようにします。

②退職者が社内融資を利用している場合

社内融資の制度を利用している従業員が退職する場合も注意が必要です。

自社における社内融資の規程はどのようになっているか確認しましょう。

一般的には、退職と同時に一括返済を求めている場合がほとんどです。

退職金を返済金に充当すると定めている規程もあります。

トラブルに発展するケースとしては、従業員側で、退職金を充当しても一括返済の目処がたたない場合が想定されます。

退職者が社内融資を利用している場合は、退職手続きの説明の段階で、社内融資規程について言及し、一括返済の目処が立たない場合には、金融機関からの融資も視野に入れるなどの対策をアドバイスしておくと親切です。

通常、金融機関からの融資は実行までに時間がかかりますので、退職者が早めに動けるようなアドバイスを心がけると丁寧な印象を与えます。

③外国人従業員が退職する場合

外国人従業員の退職に関しても、基本的な流れや手続きは日本人と同様です。

注意すべきポイントとして、ハローワークに外国人雇用状況の届出を提出する必要があるということです。ただし、雇用保険資格取得者の場合、雇用保険の手続の中に含まれるので別途の手続は不要です。これは、在留資格が「外交」「公用」及び「永住者」以外の退職者である場合に対応します。その際、外国人雇用状況の届出に、在留カード番号の記載が必要となりますので覚えておきましょう。

また、多くの場合「退職証明書」の作成を求められることがあります。

それは、入国管理局においてビザの変更や就労資格証明書交付申請などの手続きの際に添付することとなっているためです。退職者から依頼を受けた場合は速やかに対応にあたります。

外国人従業員にとって、「退職意思の申し出は1ヶ月前」などの就業規則等のルールは理解しづらいものとなっているかもしれません。

会社側と外国人従業員がお互いにとって不利益にならないよう、しっかりとコミュニケーションを取り、認識をすり合わせながら手続きを進めましょう。

退職後の従業員情報の取り扱いにも要注意!

退職者の個人情報の取り扱いにも配慮しなければなりません。
特に、退職手続きにあたっては源泉徴収票の発行などマイナンバーを記載すべき書類が含まれますので、取り扱いには細心の注意を払います。
ひとりの従業員に対して、関連する労務書類は多岐に渡ります。
それぞれ文書を保存する期間も異なり、短いもので健康保険や厚生年金保険に関する書類が2年間、長いものは税務関連書類やエックス線写真等の健康診断記録類の一部の7年間と、退職後も長期で保存しなければなりません。
情報の漏洩や誤廃棄、紛失等が起こらないよう対策し、退職後も必要になった際はすぐに取り出せるよう、管理を怠らないようにしましょう。
近年、電子化も進んでいますので、実務上、紙媒体での保存や管理が、負担であったり非効率であったりする場合は、会社に合ったシステムを取り入れてデータで管理する方法も一案です。

まとめ

従業員より退職意思の申し出がなされ、退職日が決定してから退職日までの間や退職した後も各種書類の作成や雇用保険・社会保険・税務関連の諸手続きなど、やるべきことは幅広く、いずれの業務も正確さが求められます。
今回は、離職票や退職証明書など、個々人によって必要とする書類も異なり、再就職の状況によって変わる対応方法について解説してきました。
就業規則に則って進める内容も多いので、日頃から実務に関わりの強い部分の就業規則を確認しておくことも必要です。
スムーズな退職手続きは、その後のトラブル回避につながるだけでなく、会社と従業員の信頼関係を構築する一助となります。

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