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希望退職募集の実務。
スケジュールから上乗せ退職金の相場まで社労士が解説します。

東京商工リサーチが2020年10月末に上場企業の早期・希望退職者募集企業は、72社となったと発表しました。2019年と比べ、2倍の勢いで増加しています。

希望退職募集を行った72社のうち、その理由を新型コロナウイルス感染拡大としたのは29社にのぼり、全体の4割を占める結果となっています。

ここ数年、業績は好調もしくは安定的な企業であっても、ミドル・シニア層の従業員を対象とした早期・希望退職による人員削減が見られる傾向がありました。しかしながら、2020年、2021年には、業績不振による経営立て直しを目的とした希望退職募集が増加していきそうです。

今回は、業績低下時の希望退職募集に着目し、解説していきます。

この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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「希望退職」とは?

希望退職の募集は、大きな人件費削減効果がありますが、トラブルに発展するリスクもあるため、慎重に進めましょう。

希望退職とは、会社が従業員に対して有利な条件などを提示し退職の希望を募る制度です。業績低下時の人員削減を目的としたものや、人事ローテーションの円滑化・活性化のためのものなど、その目的によって、大きく2種類にわけられます。

業績低下時の希望退職募集

業績低下時の希望退職募集は、その目的は人件費削減のための解雇回避施策です。

労働法では、会社側が一方的に従業員を解雇することは、労働者保護の観点から非常に厳しく制限されています。会社の業績が低下し、経営が厳しいといっても、従業員を解雇するには、大きなハードルがあります。

そのため、リストラの前段階の施策として、整理解雇を行う前に、まずは希望退職を募集することによって、人員削減を行おうというものです。

今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、希望退職募集を行った企業の多くが、こちらの施策にあたるでしょう。従業員の希望によるものなので、会社側から退職を強制することはできません。会社、従業員双方の合意が必要になってきます。このような一時的な希望退職制度の募集によって退職した場合には、失業保険の取り扱いとしては、自己都合退職ではなく、会社都合退職となります。(特定受給資格者)

早期退職制度としての希望退職募集

同じ希望退職であっても似て非なるものが、早期退職制度としての希望退職の募集です。前述の希望退職の募集の目的が「人員削減」であるのに対し、早期退職制度は、人事ローテーションや組織の人員構成のバランスを取ることや、従業員の人生の選択肢として位置づけられているものです。退職金を割り増すなどの優遇措置が取られることも多いでしょう。早期退職制度が恒常的に機能している場合は失業保険の取り扱いは会社都合とはなりませんのでご注意ください。

どんなときに希望退職が募集される? 

希望退職の募集の目的によっても、募集されるタイミングが異なります。一般的に企業が希望退職を募るのはどんなときが多いのでしょうか。

①業績が著しく低下したり、長期化する場合

業績低下したからといって、通常、すぐに会社が倒産するわけではありません。業績が著しく低下したり、一時的な業績の落ち込みというより長期に渡る予測や影響度が大きい場合に、経営状況の改善のために希望退職が募集されます。臨時に行うことになりますので、募集期間を限定して、行われることがほとんどです。

②企業の吸収・合併が行われるとき

企業の合併や吸収のタイミングで募集されることもあります。通常、吸収合併が行われた場合、消滅会社の従業員は、雇用契約がそのまま存続会社に引き継がれます。しかし、吸収・合併は、親会社が子会社を吸収したり、業績の悪い会社を業績の良い会社が吸収することなどがあるため、必ず組織再編が伴います。そのため、余剰人員が発生することもあるでしょう。とはいえ、吸収・合併を理由に、リストラはできません。そこで、希望退職を募集するという手段を取ることがあります。

③業務の合理化・BPRが進んでいるとき

昨今のビジネス環境の変化や働き方改革の進展など、多くの企業で変革が求められているのではないでしょうか。大企業から中小企業に至るまで、業務改革とも言われるBPR(ビジネスプロセスエンジニアリング)や業務の合理化、生産性の向上に取り組んでいることでしょう。こうした改革や改善、組織構造が変化していくタイミングでは、やはり人員の余剰が発生したり、また、必要とされる人材像にも変化が見られていくものです。そこで、人員の新陳代謝などの意味合いも含め、雇用調整を行うことがあります。

④ビジネスモデルの転換、技術革新への対応が必要なとき

今回の新型コロナウイルスが与えた影響は、さまざまな業界に及んでいます。例えば、外出自粛の影響を大きく受けたアパレル業界は、そもそも新型コロナウイルス問題が持ち上がる前から、ファストブランドの乱立やファッションの多様化、消費傾向の変化などの課題を抱えてきました。それが、今回の新型コロナウイルスが直撃し、アパレル企業のブランドの廃止や閉店が加速、希望退職の募集が行われています。一方で、新たなビジネスモデルの転換を図り、収益化を狙う取り組みを行っていく企業もあります。新しいビジネスへの人材投資へ振り向けるため、希望退職募集を進めるといった動きも見られています。

希望退職募集のスケジュールとプロセスは?

緊急的に行う場合であっても、プロセスはしっかりと踏んでおくことが賢明です。

希望退職募集は、通常、検討・計画から実行まで、半年から1年程度かかると言われてきました。しかしながら、コロナ禍の現在、業績低下など経営悪化を理由に希望退職を募集する企業においては、企業規模や募集人数にもよりますが、検討・計画から実行まで、非常に短いスパンで行われているのが実情のようです。希望退職を募集する際のプロセスを確認していきましょう。

  1. 人員削減の対象・目標人数・募集時期の検討
  2. 希望退職の条件の検討・設計
  3. 労働組合・従業員との協議
  4. 希望退職募集の決定
  5. 希望退職募集の告知、従業員への説明
  6. 従業員からの応募の受付開始
  7. 応募者との個別面談
  8. 希望退職募集の締め切り・応募者の確定
  9. 希望退職合意書の作成
  10. 募集終了の告知 

希望退職のスケジュールは一例です。具体的に進める際には、いつまでに、どれくらいの募集を行うかという経営判断が優先されます。会社の経営を相談できる専門家に相談してスケジュールを決めることが必要でしょう。

人員削減の対象や目標人数、
募集時期の検討・設計するには?

希望退職の募集を実施する際の注意点など、企業ニーズに応じてご相談に応じます。

希望退職募集を成功させるかどうかは、丁寧に計画がされているかどうかが非常に重要です。トラブルや混乱を生じさせないよう、実施スケジュールやプロセスを押さえておきましょう。

対象者を決める

対象者の条件を設定するにあたっては、全社員を対象とするのか、年齢や役職、職種などの条件を付し募集するのかなどを検討します。

募集対象範囲を広くすれば、それだけ目標人数に達成しやすくなします。ただし、想定外の人材から退職希望者が出るリスクもあります。経営立て直しを目的に希望退職を募ったにも関わらず、いざというときに戦力となる人材が退職してしまっては、元も子もありません。経営再建への事業計画に必要な人材が流出しないような視点が必要になってきます。

この際、希望退職を希望したとしても、会社が認めない人材(会社にとって必要不可欠である人材)のリスト=プロテクトリストを作成しておきましょう。

目標人数を決める

事業計画の見通しなどをもとに、人員体制を検討します。どれだけの余剰人員を削減するべきかなどをもとに検討を勧めていきます。ただし、注意したいのは、人員削減する場合には、一般的に割増退職金などを支払います。目標人数と退職金の原資と整合が取れるか、支払える体力があるかどうか、支払い後に経営再建していく資金力は大丈夫かなど、慎重なシミュレーションが必要です。

募集時期や期間を決める

業績不振や経営危機に対応するための希望退職の募集の場合、タイミングを逸すれば、傷が余計深くなるばかりです。割増退職金などの支払いができる体力があり、経営再建が早期にできるタイミングを適切に図らなければなりません。また、募集期間についても、長期間の余裕はないでしょう。期間が長いからといって、退職希望者が多く出るというものでもありません。ただし、従業員にとっては、希望退職に応募することは、キャリアや人生に関わる重大な決断です。募集期間があまりにも短いと決断できず、応募者が目標人数に達しないことにもなりますので、おおむね1週間から1か月くらいの範囲で設定するのが望ましいでしょう。

募集締め切り前に目標人数に達成したときの対応策を決めておく

希望退職の募集を開始し、応募するか、応募しないかは従業員次第です。想定外に目標人数が上回ったり、期日より早期に目標人数に達する場合もあるでしょう。その場合、どのような対応を取るのか、予め決定しておかないと、途中で混乱を招きかねません。期間途中で目標人数に達したときには、その時点で募集を打ち切るのか、そのまま引き続き期日まで応募を受け付けるなどの対応を決めておきましょう。

目標人数が達成できなかった場合の対応策を決めておく

希望退職は従業員に強制することはできません。したがって、予定した目標人数を達成できない場合もあるでしょう。その場合にどうするかを決めておきます。

引き続き二次募集や三次募集を行うのか、退職勧奨を行うのか、整理解雇を実行するのかなどが考えられます。

経営状況の悪化などによる希望退職の募集の場合は、目標人数を達成できなかった場合に、二次募集や三次募集を行っている余裕はないかもしれません。事態がさらに悪化している場合には、退職勧奨や整理解雇などに踏み切らなくてはならない場合もあります。いくつかの対応策を用意しておくのが妥当でしょう。

目標人数に達しなかった場合の対応策を検討するにあたっては、以下のポイントを考慮して決めることになります。

①目標削減額と応募した従業員の人件費削減額の差異の程度

②二次募集や三次募集を行う場合の募集条件の検討

③追加募集と退職勧奨を並行して行う場合の募集条件の検討

④募集条件の引き上げの可否

コンサルタント中村の経営視点のアドバイス

希望退職が募集人員に達しなかった場合、条件を上乗せして募集を行った場合、一次募集者と比較して不公平が発生することから、上乗せを躊躇される経営者の方がいらっしゃいます。
しかし、この場合、優先すべきは会社の未来です。判断を間違えば、残ってくれた従業員も含めて不幸になりかねません。一次の募集で集まらないときは、条件を上乗せして2次募集を行いましょう。その時、一次募集の方が退職後にする配慮を忘れずに取り組みましょう。

希望退職の条件の検討・設計

希望退職募集をスムーズに行うには、退職の優遇条件をしっかりと設計することがポイントです。

希望退職の場合は、応募者を促進するために、優遇策を行うのが一般的です。主として次のような方法があります。

退職金などの割増金を支給するなどの優遇措置を行う

割増金を支払わなければいけないというわけではありませんが、希望者を増やすために、通常の退職金に上乗せした割増退職金を支払うケースが多いようです。

退職金の優遇方法としては、

①会社都合退職の支給率を適用して、退職金を算出する

②定年まで勤続したものとみなして、定年退職時の支給率を適用して、退職金を算出する

③一定額を加算または給与の一定月数分を加算して、退職金を算出する

④退職金の一定割合を加算し、退職金を算出する

退職金制度がない会社であっても、何らかの加算金を支払うケースもあるようです。

【希望退職の退職金の相場】

退職金の額は、企業規模によっても大きく異なります。定年までの退職金をみると、大企業であれば2000万円以上、中小企業で1500万円程度と言われ、大きな開きが見て取れます。割増金の算出にあたっては、給与の1〜2年分といった取り扱いをしていることが多いようです。今回のように業績の急激な低下の場合は、通常の退職金に加え、給与の3か月~6か月分を上乗せしている企業が多いです。相場に正解はなく、専門家と相談しながら決めることをお勧めします。

年次有給休暇の買い上げを行う

割増金以外の優遇措置として、未消化の年休の全部あるいは一定日数を買い上げる措置を行う場合もあります。
退職金の割り増しとバランスを取りながら決定しましょう。

勤務免除を行う

募集に応募した従業員は、再就職先を探さなければなりません。再就職活動を早期に開始できるよう、退職日まで勤務を免除したり、退職日までの間に、就職活動を認めるなどを行う場合があります。

再就職支援サービスの利用

再就職先を探すことは用意ではありません。とくに希望退職の対象範囲をミドル・シニア層などに限定している場合などは、就職活動をしたことのない人もいるはずです。再就職支援サービスを利用できるよう手配するなど、出来得る限りの対応は、おすすめしたいところです。

希望退職に応募した従業員の退職日を決める

応募した従業員の退職日を決定します。会社側で退職日を指定するか、一定の退職期間を設け、従業員自身が決定するなどの方法があります。

退職金の支払日を決める

支払日は、会社の自由ではありますが、できる限り早い時期に支払うのがよいでしょう。退職する従業員は、すぐに再就職先が見つかるとは限りません。収入が途絶えてしまうこともありますので、早い時期に支払うのが望まれます。

労働組合・従業員過半数代表者との協議は
誠実に、慎重に

急を要している場合であっても、このプロセスを省略してしまうと、後々、トラブルに発展するかもしれません。とくに、希望退職募集の実施後に、整理解雇や退職勧奨の可能性がある場合には、早めにもしくは計画検討と並行して、協議を勧めておくほうが賢明でしょう。整理解雇の有効性の判断においても、こうしたプロセスを踏んだかどうかは、非常に重視されます。

 

従業員との面談の方法

面談においては「言った・言わない」に発展しないよう、資料などをしっかり準備しましょう。

希望退職の募集通知や従業員説明会を実施していたとしても、正しく理解してもらえているか不安が残るものです。できれば、1人1人個人面談で正しく情報を伝えることをおすすめします。経営状態が極めて厳しい状況にあることなど、しっかりと説明し、理解してもらう必要があります。希望退職に応募した従業員と面談を行う際にも、正しく情報が伝わってこそ、トラブルを予防できるものです。面談を行う担当者の選定も重要です。経営の実態について伝える役割ですから、経営幹部やそれに相当する役職者があたるのがよいでしょう。面談の場所は、会話の内容が外にもれない会議室などで行い、説明するための資料も用意します。

【面談時に用意しておくべき書類】

・希望退職募集の実施要領

・応募者の退職金計算書等

・再就職支援サービスを利用する場合は、必要資料など

希望退職の面談は、退職勧奨の場ではありませんので、応募しない従業員に退職を促したり、応募しない旨を表明しているにも関わらず、何度も面談を設定することは、退職強要とも取られかねません。場合によっては、パワハラに該当しかねませんので、対応は慎重に行いましょう。

希望退職募集の実施要領例

令和◯年◯月◯日

従業員各位

株式会社△□

希望退職募集の実施について

新型コロナウイルス感染拡大による影響により、現在、経営をめぐる環境において、極めて厳しい状況です。経営再建を図るため、誠に不本意ではありますが、下記の要領で希望退職者の募集を行うこととなりました。従業員各位のご理解、ご協力をお願いします。

1 募集人員 ◯人

2 募集対象者 令和◯年◯月◯日現在40歳以上の者

3 募集期間 令和◯年◯月◯日〜令和◯年◯月◯日

4 応募手続 退職を希望するものは、退職届を所属長を経由し提出

5 退職日 令和◯年◯月◯日

6 退職条件

  ・退職金割増金

   40〜45歳 会社都合支給率により◯%加算

   46〜50歳 会社都合支給率により◯%加算

   51〜55歳 会社都合支給率により◯%加算

   56〜60歳 会社都合支給率により◯%加算

 ・退職金支給日 令和◯年◯月◯日

 ・年次有給休暇の買い上げ

 ・再就職支援サービスの利用

7 その他

 ・業務上特に必要と認められる者については退職を認めないことがある

 ・募集機関の途中で予定人員に達したときは、その時点で募集を終了する

8 問い合わせ先

 人事課

以上

退職金計算書例

令和◯年◯月◯日

△□事業部

◯◯ ◯◯殿

株式会社△□

退職金計算書

今回の希望退職募集によって退職した場合、貴殿の退職金は以下のとおりです。

1 給与 ◯◯円

2 退職金支給率  ◯◯

3 退職金 ◯◯円

4 特別加算金 ◯◯円

5 総額 ◯◯円

以上

コンサルタント大矢の経営視点のアドバイス

希望退職の意思を確認する面談は、ボイスレコーダーなどで録音することをおすすめしています。また、面談は2名、30分程度で対応することが望ましいです。
ボイスレコーダーを使用する際は面談者の同意を事前にとり、録音を開始しましょう。法律的には秘密録音を行うことはできますが、それはおすすめしないです。あくまでも会社と従業員の未来のためにフェアに、前向きに取り組みましょう。

希望退職と退職勧奨との違い

希望退職の応募者が目標人数を下回った場合は、打ち切るのか、二次・三次募集をするのか、また退職勧奨を実施するのかなど、対応を決めておく必要があります。ただし、退職勧奨については、並行して行う場合もあるかもしれません。

退職勧奨は、会社が辞めてほしいと考えている特定の従業員に対して、個別に退職の働きかけを行うことです。退職勧奨は解雇ではなく、「勧奨」ですので、強制するものではありません。従業員が、退職勧奨に応じるかどうかは自由です。会社は、この点を十分考慮して行う必要があります。退職勧奨に応じない従業員に対し、執拗に退職勧奨を繰り返し行ったり、労働条件の切り下げや配置転換を示唆するようなことは、退職強要となり、違法です。

会社側に損害賠償責任が生じる可能性もありますので、十分な配慮が必要です。

一般的に、退職勧奨を行う場合には、退職金の割増を行うなど、従業員が退職勧奨に応じやすい条件を提示して行います。ただし、同時期に希望退職を募集している、また希望退職募集後に個別に退職勧奨を行うといった場合には、優遇条件の設計に、合理性や実効性があるか、合わせて検証しておくことをおすすめします。

希望退職と整理解雇との違い

希望退職が、会社と本人との合意に基づいて雇用契約を解消するものに対して、整理解雇は、会社が経営上の必要に基づき、会社の意思で雇用契約の解消が行われるものです。希望退職募集を行ったものの、退職の申し出が目標人数に達成しなかった場合など、次の手段として整理解雇が行われる場合があります。

合法的に整理解雇を行うためには以下の4つの要件を満たすことが求められます。

①人員整理の必要性

②解雇回避努力義務

③被解雇者選定の合理性

④手続の妥当性

希望退職募集は、この4つの要件の一つである解雇回避努力義務の要件を満たすための手続きとされます。ただし、以下のような場合には、必ずしも整理解雇の前に、希望退職の募集を行っていなくてもよいとされています。

・希望退職者に対する退職金の支払い原資の調達が見込めない

・小規模会社のため、余剰人員が特定されており、希望退職の募集をかける意味がない

・小規模会社のため、希望退職を実施することで事業継続に支障が出る

 

整理解雇は会社の一方的な意思によって行われるので、従業員や労働組合からの反発や抵抗も生まれるかもしれません。説明不足や協議が足りないなどの場合によっては、「解雇権の濫用」「人選に合理性がない」などの労使のトラブルに発展しかねません。裁判に発展すれば、会社の解雇の有効性を争うことになり、長期に及ぶこともあり得ます。

ただでさえ、経営状況が悪化する中、裁判に発展するようなトラブルは、是が非でも防ぎたいところです。

解雇は、従業員のキャリア、ライフプランに大きな影響を与えるものです。会社としては、解雇を回避するための対策をどのように講じるかが非常に重要です。

まとめ

社労士の小栗です。
オンライン面談でご相談ください。

希望退職募集を実施にあたっては、目標を達成するために慎重に計画を立てることが大切です。

業績不振による経営再建のために希望退職を募集する場合は、手を打たなければならないことが山積みです。とくに、条件を設けずに希望退職を募集した場合には、会社が辞めてほしくない優秀な人材が流出しかねません。

優秀な人材が離職すれば、当然ながら、経営再建のためのシナリオに支障が生じます。さらに残る従業員の業務負荷も増加するかもしれません。モチベーションの低下を引き起こす可能性を秘めています。

経営再建を目的とした希望退職募集や退職勧奨、整理解雇などの施策に関する相談等がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

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