実はこんなにある!
給与計算にかかわる賃金および労働時間に関する法令について社労士が解説します。

実はこんなにある!
給与計算にかかわる賃金および労働時間に
関する法令について社労士が解説します。

どんな企業や団体であっても、従業員を雇っていれば、毎月発生するのが「給与計算」です。

給与計算で重要なのはミスがなく正確なこと。それには会社と従業員との労働契約、さまざまな関連法律の正しい知識のもと行わなければなりません。とくに残業手当に関係する労働時間と賃金のしくみや社会保険料などの徴収は、知識不足やミスが大きなトラブルに発展します。

今回は、「給与計算」にかかわる正しい知識を理解するために、賃金および労働時間に関する法令について、解説していきます。

給与計算にかかわる法律はさまざまです。社会保険労務士が専門知識でサポートします

 

知っておきたい。
給与計算にかかわる法令とは?

給与計算にかかわる法令は、労働基準法をはじめ、所得税法、健康保険法、厚生年金保険法などさまざまです。本稿では、とくに賃金と労働時間に関係する法令を軸に確認していきましょう。

労働基準法

給与計算を行ううえで肝となるのが、この労働基準法です。会社と従業員にとって最も重要な法律で、労働条件の最低基準を定めています。

そこで、給与計算の大前提として規定されているのが、「賃金支払5原則」です。違反した場合には、罰則が適用されます。

賃金支払5原則

①通貨払いの原則

給与は通貨払いである現金が原則。食材や商品在庫などを現物支給はできません。ただし、労使協定や労働協約の締結がある場合には、通勤定期券などを現物支給が可能です。また、現金支払いの方法は、従業員の承諾を得て、金融機関への振り込みが可能です。

②直接払いの原則

給与は必ず従業員に直接支払います。振り込みは、本人口座であることが必要です。

③全額払いの原則

給与は必ず全額払わなければなりません。分割払いや貸付金との相殺は認められていません。だたし、所得税や住民税、厚生年金や健康保険といった社会保険料など法律で認められた控除は、給与からの差し引き支給ができます。また、労使協定や労働協約で取り決めれば、財形貯蓄や組合費などを控除することも可能です。

④毎月払いの原則

給与は、必ず1か月に1回以上支払う必要があります。年棒制でも、1か月に1回以上の支払いになるよう分割して支払います。賞与など臨時の賃金は対象外です。

⑤一定期日払いの原則

給与の支給日は、毎月一定期日に支払います。

減給の制裁にも、一定のルールがあります。過度な制裁にならないよう、正しく理解しましょう

ノーワーク・ノーペイ。遅刻・早退・欠勤時の賃金控除の考え方

「ノーワーク・ノーペイ」は、従業員から労務の提供がなければ、会社は賃金を支払わなくてよいということです。遅刻や早退、欠勤の不就労時間分の賃金を控除することが可能です。

遅刻・早退・欠勤時の賃金控除と「減給の制裁」との違い

遅刻・早退・欠勤時に控除できるのは、あくまでも不就労時間分です。そのため、「遅刻3回で欠勤1日分」としたり、都度罰金を課すような取り扱いは禁止されています。

しかし、度重なる遅刻などにより就業規則に定める懲戒処分のひとつとして、「減給の制裁」を行うケースがあります。従業員が守るべき服務規律に従わず、職場の秩序を乱す場合、ペナルティとして懲戒処分である減給の制裁を行うことがあります。

ただし、減給の制裁を行う場合は、その種類や程度などの事項を、予め就業規則に定める必要があります。あまりに重過ぎる制裁や一般常識とかけ離れるような制裁は認められません。減給額の上限も、1回につき平均賃金の1日分の半額で、1回の賃金支払期の10分の1を総額で超えない範囲と決められています。

平均賃金の求め方

算定すべき事由の発生した日以前3か月に支払われた賃金総額/3か月の歴日数

算定すべき事由の発生した日:賃金締切日がある場合いついては、直前の賃金締切日

賃金総額:基本給だけでなく、家族手当や通勤手当など諸手当も含まれる

遅刻・早退・欠勤時の賃金控除の計算方法

賃金控除の計算方法は、労働基準法で定めはありません。会社が就業規則で定めた計算方法で算出します。一般的な計算方法としては、以下のような方法で行います。

【遅刻や早退時の賃金控除の計算方法】

賃金控除額=(基本給+諸手当)/1か月平均所定労働時間✕遅刻・早退した時間

【欠勤時の賃金控除の計算方法】

賃金控除額=(基本給+諸手当)/1か月平均所定労働日数✕欠勤した日数

■1か月平均所定労働時間とは?

所定労働時間とは、会社が定める労働時間です。1か月平均所定労働時間は、1年間の合計の所定労働時間を12か月で割ることで、1か月あたりの平均を算出したものです。通常以下の計算式によって算出します。

1か月平均所定労働時間=(365日—年間休日日数)✕1日の所定労働時間数/12か月

うるう年=366日

■1か月平均所定労働日数とは?

1か月平均所定労働日数とは、1年間の所定労働日数を12か月で割ることで、1か月あたりの平均を算出したものです。通常以下の計算式によって算出します。うるう年=366日

1か月平均所定労働日数=(365日—年間休日日数)/12か月

うるう年=366日

★諸手当の取り扱いに注意!

名称の如何にかかわらず「家族手当」「通勤手当」「資格手当」「住宅手当」「役職手当」といった諸手当がある場合、どの諸手当を賃金控除の対象とするのか、就業規則等で定めておく必要があります。

★賃金控除の端数処理をどうするか

小数点以下の部分(端数)が発生した場合の処理は、切り捨てるのが一般的です。

休暇・休業の賃金の取り扱いは、会社の考え方があらわれるものです。疑問があればぜひお問い合わせください

こんなにある、法律上の休業や休暇。種類によって給与計算の異なる取り扱い

法律に基づいて与えなくてはいけない休業や休暇があります。種類によって無給・有給など違いがありますので、注意が必要です。 

年次有給休暇

労働基準法第39条で認められた賃金が支払われる休暇です。雇入れから6か月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合に付与されます。

有給休暇の賃金の支給額については、就業規則等で定めます。平均賃金や健康保険の標準報酬日額を用いるケースもありますが、一般的に通常勤務時と同額とするケースが多いでしょう。給与計算が通常通りに行えるため、処理がスムーズです。

①半日単位の有給休暇のポイント

年次有給休暇は、半日単位での取得を認めている会社も多いでしょう。労働基準法では、半日単位の取得の規定はありません。会社・従業員双方が同意し、就業規則に規定すれば、半日単位の取得が可能です。ただし、注意すべきは、“半日をどのように区切るか”です。たとえば、午前・午後としたり、1日の所定労働時間8時間の場合であれば、単純に4時間を半日単位とするなど、取り扱いでトラブルにならないよう、就業規則でしっかり定めておく必要があります。

半日単位の有給休暇の給与計算は、通常の有休取得の場合と同様です。

②時間単位の有給休暇のポイント

労働基準法では、時間単位付与を定めています。1年に5日間を限度として認められています。

時間単位の年次有給休暇には、労使協定を結ぶことが必要となります。労使協定では、1日分の年次有給休暇が何時間分に相当するかを定めなくてはなりません。通常は、所定労働時間を基準に定めます。

たとえば、1日の所定労働時間8時間であれば、1日8時間の時間単位の年次有給休暇に相当します。

所定労働時間が8時間であるにもかかわらず、時間単位の年次有給休暇は、1日7時間とするような所定労働時間を下回る協定はできません。また、所定労働時間が7時間30分といった1時間未満の時間がある場合には、1時間未満の端数を1時間に切り上げることが求められていますので、この場合には1日8時間の時間単位の年次有給休暇となります。

③年次有給休暇の給与計算の方法

つぎのいずれかの方法を用います。

① 通常の給与を支払う(こちらが一般的)

② 平均賃金を支払う

③ 健康保険の標準報酬日額を支払う

年次有給休暇取得時の給与の計算

日給・時給・週給・月給など給与の支給方法によって、異なります。

【日給】

日給をそのまま支払う

【時給】

時給×所定労働時間数

【週給】

週給/週の所定労働日数

【月給】

月給/月の所定労働日数

※時間単位の年次有給休暇を習得した場合には、1日単位の有給休暇の賃金を、所定労働時間で割ることによって算出します。

④半日もしくは時間単位の有給休暇取得時の残業計算方法

半日単位もしくは時間単位の年次有給休暇を取得した当日に、残業をした場合はどうなるでしょうか。たとえば、午前中に半日年休を習得し、午後から出社した場合に、終業時刻を過ぎて残業が発生したケース。当然、終業時刻を過ぎ時間分の残業は支払わなければなりません。ただし、ここで注意したいのが、残業の割増手当に該当する部分です。通常残業をすると、「(1時間あたりの賃金×残業時間)×1.25」の割増賃金が発生します。

しかし、割増賃金が発生するのは週40時間・1日8時間を超える場合です。半日年休を取得した場合には、8時間を超える労働に該当しない場合は、1.25倍の割増賃金を支払う必要はありません。

始業9:00〜終業18:00(休憩1時間)の会社の場合

●20:00まで残業した場合

残業2時間:2時間に対して1.25の割増手当が必要

●午前中に半日年休(4時間)を習得し、20:00まで残業した場合

残業2時間:2時間分の残業手当が必要

産前産後休業

労働基準法では、母体の保護の観点から必要な産前産後休業を定めています。産休中の賃金の支払いについて規定はありません。会社によって、無給とするか、賃金保証として通常給与を支給する・手当を支給するといった取り扱いは、自由に設定ができます。ただし、就業規則にその旨を定めておく必要があります。

産休中は「無給」、もしくは「通常賃金の2/3未満」であれば、健康保険から出産手当金が支給されます。

産休中の社会保険料の免除「産前産後休業保険料免除制度」

産休中は社会保険料の支払いが、会社・従業員ともに負担が免除されます。この期間は、社会保険料を払っていなくても支払いがあったとみなされ、年金額への影響はありません。

育児休業

原則として子どもが1歳(例外1歳6か月)になるまでの期間、育児休業を取得できます。産休同様、育児休業中も無給、有給については会社で規定することができます。

育休中の社会保険料の免除「育児休業保険料免除制度」

健康保険や厚生年金など社会保険料は、本人・事業主ともに免除となります。

子の看護休暇

子の看護休暇は、1年に5日、小学校入学前の幼児が2人の場合は10日を限度に取得できます。就業規則で無給、有給を規定できます。

介護休業

介護休業は、介護を必要とする家族1人に対して、通算で93日まで取得ができる制度です。産休や育休と同様に、就業規則で無給、有給を規定できます。社会保険料の免除規定はありません。

介護休暇

従業員の家族に、要介護者が1人いる場合は1年に10日、2人いる場合は1年に20日の介護休暇を付与することが定められています。就業規則で無給、有給を規定できます。

生理休暇

生理日の就業が著しく困難な女性従業員に対して付与することが定められています。就業規則で無給、有給を規定できます。

公民権行使の休暇

裁判員として裁判に出席しなければならない場合や投票に出向くなどの場合に、公民権の行使の休暇取得ができます。就業規則で無給、有給を規定できます。

しっかりとおさえておきたい。労働時間と給与計算

さまざまな勤務形態がある会社は、給与計算の運用も複雑になりがち。一度、ご相談ください

給与計算において、労働時間の考え方・計算方法は、しっかりと理解しておきたいところです。とくに残業時間は、給与に大きく関わる重要な事項です。

労働時間の原則。
「法定労働時間」と「所定労働時間」

労働時間には大きく分けて「法定労働時間」と「所定労働時間」の2種類があります。

① 法定労働時間とは?

労働基準法によって規定された労働時間です。1日8時間・週40時間以内と定められています。

② 所定労働時間とは?

会社で定めた始業時間から終業時間までの労働時間のことです。法定労働時間以内であれば、会社ごとに自由に定めることができます。

③ 残業時間とは?

通常、会社の所定労働時間を超えて働いた場合、残業代が発生します。そして、法定労働時間を超えた場合には、割増賃金を支払う必要があります。

ここで注意したいのが、所定労働時間が法定労働時間と一致していない会社です。所定労働時間内の残業代と時間外労働の残業代の計算方法が異なるので、給与計算の際に特に注意が必要です。

さらに、就業時間が午後22時から翌5時の時間帯の場合には、深夜残業として、割増賃金を支払う必要があります。

変形労働時間制の場合の残業計算

労働時間や時間帯だけでなく、勤務体系についてもおさえておきましょう。

変形労働時間制は、月単位や年単位で、1週あたりの平均所定労働時間が法定労働時間を超えない場合、その期間内の一部の日または週で法定労働時間を超えて労働させることができるというものです。業務に繁閑がある場合に、非常に便利な勤務体系ですが、残業計算においては、しっかり理解しておくことが必要です。

変形労働時間制の残業とは?

① 1日について

・所定労働時間が8時間を超える日は、所定労働時間を超えた時間

・それ以外の日は、8時間を超えた時間

② 1週間について

・所定労働時間が40時間を超える週は、所定労働時間を超えた時間

・それ以外の週は40時間を超えた時間(①の残業時間を除く)

③ 変形労働時間制の対象全期間について

変形労働時間制の全期間における法定労働時間の総枠を超えた時間(①・②の残業時間を除く)

① ②③を残業代として計算しなくてはなりません。ただし、③については、変形労働時間制の全期間となりますので、年単位の変形労働時間制を導入している場合には、注意が必要です。

似ているようで違う「代休」と「振替休日」
給与計算の注意ポイント

「代休」と「振替休日」は、労働日と休日を入れ替えるという意味では同じですが、給与計算上では大きな違いがあります。

「代休」は、休日労働が行われた場合に、その代償として他の労働日を休日とする制度です。したがって、休日労働が行なわれた日については、労働基準法上の割増賃金を支払う必要があります。

一方、「振替休日」は、予め休日と定められていた日を労働日として、他の労働日を休日に入れ替える制度です。休日労働にあたらないので、割増賃金が発生しません。

この割増賃金が発生するか、しないかは、非常に大きな差になりますので、正しく理解して給与計算を行う必要があります。

まとめ

ミスなく正確に行う給与計算業務。アウトソーシングをご検討のお客様は、ご相談ください

給与計算はさまざまな法律が絡んでいることに加え、頻繁に行なわれる法改正に対応していかなければなりません。正確に給与支払額を算出するには、正しい給与計算への理解と、ミスなく給与計算業務を運用することが大切です。

しかしながら、中小企業では、給与計算の専任担当者を配置できない場合や、そもそも担当者に専門知識がない場合もあります。その際には、給与計算のアウトソーシングなどを検討してはいかがでしょうか。残業代の計算ルールや、社会保険料の計算ルールなど、労働関連法規をはじめ、会社の就業規則に準じて、給与計算業務を実行してくれるアウトソーシングの活用は、業務の効率化と品質担保のうえで、大きなメリットとなるでしょう。

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