デジタル手続法とは?社労士が解説します。

デジタル手続法(デジタルファースト法)とは?

2019年5月に「デジタル手続法(デジタルファースト法)」が可決されました。正式名称は「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」と、ひたすら長い名称なので、ここではデジタル手続法としてご説明します。端的にいうと、デジタル手続法とは、行政手続きを原則、電子申請に統一し、引越しや相続をはじめとした行政手続きのデジタル化が進められ、順次実施が予定されています。

デジタル手続法の施行の背景

このデジタル手続き法が施行された背景には、日本の行政手続きの煩雑さや電子化の遅れがあります。海外の多くの国々に比べ、日本の行政手続きは、印鑑や書類の添付など非常に煩雑で、わかりづらいといわれています。グローバル化が進み、企業活動は情報のやりとりや意思決定など、距離や国境の制約がなくなってきた今、行政手続きの煩雑さやわかりづらさが、そのスピードにブレーキをかけてしまう懸念があります。

世界の国や地域の国際競争力においても、日本は30位と過去最低の順位を示しています。(※スイス有力ビジネススクールIMD-世界競争力ランキング)もちろんこの順位の理由のすべてが、日本の行政手続きの煩雑さというわけではありませんが、“法人設立や登記の煩雑さ”“外国人に分かりづらい手続き”など、ビジネス環境にとって、マイナス要因の一つであることは間違いないでしょう。この状況は、日本の国際競争力への足かせになる可能性もあります。

そうした中で、政府は行政手続きの簡便さやコストの問題、所要日数などの状況を改善し、ビジネス環境を向上させ、国際競争力を上げていきたいと考えているのです。

デジタル化の基本原則

労務支援チームの野間です。デジタル化が進むと煩雑だった手続きが簡単にできるようになります。

デジタル手続法の施行では、以下の3つがキーワードになってきます。今後の取り組みとともに確認していきます。

デジタルファースト
個々の行政手続きやサービスが、一貫してデジタルで完結される。
(今後の取り組み)
国・地方手続きのオンライン原則を実現するために、書面提出や対面が必要なものな制度や慣習の見直しを図っていく

ワンスオンリー
一度提出した情報は、二度提出することは不要とする
(今後の取り組み)
・法人設立関係手続きを簡素化・迅速化する
・住民票の写し、戸籍謄抄本の提出を原則不要にする
・法人関連手続きにおけるワンスオンリーを推進

コネクテッド・ワンストップ
民間サービスも含め、どこでも、複数にまたがる手続きなども一度の申請で完了していくようにしていく。
(今後の取り組み)
マイナポータルを活用した子育てワンストップサービスを実現する

要するに、行政手続きのデジタル化を進めることで、一度で簡単にできるしくみに変わっていくということになります。

デジタル手続法での対象となる企業と
対応事項は?

デジタル手続法では、行政手続オンライン化法、住民基本台帳法、公的個人認証法、マイナンバー法など、行政手続のデジタル・オンライン化に向け、さまざまな法令が改正されていきます。5年という期間をかけて全面施行へと順次施行されます。

企業において、影響のあるものとしては、従業員の社会保険・税の手続きなどが、推進されていくこととなります。従来からも社会保険の手続きについて電子申請のシステムはありましたが、紙の書類で提出していた企業は、これを機に手続き方法の見直しが必要となってきます。具体的には、2021年度を目標に、企業が「政府認定のクラウドサービス」に従業員情報をアップするだけで、入社・退職など人事労務の手続きが一本化できる形を目指しています。

順次施行されていくデジタル手続法ですが、対象となる企業についても、定められています。電子申請の義務化は、2020年4月1日以降に開始する特定の事業者の事業年度から適用されます。
 

対象項目 社会保険・労働保険
対象法人 ・資本金または出資金額が1億円を超える法人
・相互会社、投資法人及び特定目的会社
対象手続き 【健康保険・厚生年金保険】
・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
【労働保険】
・年度更新に関する申告書
・増加概算保険料申告書
【雇用保険】
・被保険者資格取得届
・被保険者資格喪失届
・被保険者転勤届
・高年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請
適用日 2020年4月1日以後に開始する事業年度から適用
※社会保険労務士や社会保険労務士法人が、対象となる特定の法⼈に
代わって⼿続を⾏う場合も含まれます。

ただし、電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められる場合で、かつ、電子情報処理組織を使用しないで当該申告書を提出できると認められる場合は、例外的に紙での申請が認められます。

コンサルタント石黒の経営視点のアドバイス

対象企業の線引きは資本金または出資金が1億円以上の企業です。デジタル手続法の対象は従業員数などが一切考慮されていません。そのため高額の出資を受け、設立当初から資本金1億円を超える企業は対象となります。従業員数が少ない状態だとしても対象となってしまうことに注意が必要です。

社会保険・労働保険の電子申請のメリット

企業において、デジタル手続法の影響が大きいものとして、従業員の社会保険などの手続きでしょう。現状では、資本金または出資金が1億円以上の企業が対象となっています。しかしながら、今後、義務化の対象となる範囲は拡大されることが見込まれますので、資本金1億円以下の法人においても、今のうちから対応を進めていくことをおすすめします。

メリット1 申請作業の時間短縮が可能

一番大きなメリットは、なんといっても作業時間の短縮でしょう。役所の窓口に出向く必要なく、ネット環境が整っていれば、24時間いつでも、休日でも申請することが可能です。書類を手書きしたり、パソコンで入力・印刷・押印する手間を削減できます。訂正も簡易なので書き直しなどの手間が省けます。テレワークが浸透している昨今では、大きなメリットでしょう。

ただし、後述の電子申請の方法のうち、e-Govを利用した電子申請は直接入力の手間が少しかかるので、大きな時間短縮とはいえないかもしれません。

メリット2 コスト削減が可能

役所へ出向くための交通費や、届出書類の郵送費、それに関わる人件費を削減することが可能です。

メリット3 情報管理が簡便

紙書類での申請・届け出の場合には、届け出書類の複写を控えとして保存して、ファイル管理するといった事務処理を行っている企業も多いでしょう。電子申請であれば、そうした作業は必要ありません。人事労務システムと連携したAPI対応システムを利用すれば、従業員情報の履歴追跡も簡便となり、手続漏れの防止にもつながります。

メリット4 処理状況が確認できる

申請・届出書を郵送などで行っていると、手続処理が完了してるのか把握ができません。電子申請の場合は、申請した手続きの状況確認が容易に行えます。

電子申請はどんな方法がある?

コンサルタントの中村です。
電子申請の方法は様々ありますが、自社に合った方法を利用することが大切です。​

実際に電子申請を行う場合、どのような方法があるかみていきましょう。
認められている手続き方法には、e-Gov(イーガブ「電子政府の総合窓口」)電子申請システムを利用する方法と、外部連携API対応システムを利用する方法の2通りがあります。

①e-Govを利用する
e-Govを利用する場合、自社からダイレクトに申請が可能です。申請コストがかからないので、ある程度電子申請に知識があったりする場合には便利かもしれません。ただし、従業員ごとに1件ずつ申請しなければならなかったり、誤記入をチェックしづらい、進捗状況が確認できないなど、操作性には、少し難ありと感じるかもしれません。また、人事情報を入力するといった作業が発生しますので、紙に手書きで申請するのと大きな差がないようにも感じてしまうかもしれません。また、e-GovはWindows10、8、7しか対応していませんので、MacOSユーザーは利用できませんので、注意が必要です。
https://www.e-gov.go.jp/shinsei/

②外部連携API対応システムを利用する
e-GovとAPI連携した人事労務システムを使用して申請する方法も認められています。
すでに利用している人事給与システム等の人事のマスターデータを用いて、申請が可能です。e-Govに情報を入力するのに対し、入力の手間やミスを防げるのが利点です。
どういったシステムを利用しているかにもよりますが、申請データの作成、進捗状況の管理など、件数が多い場合の作業でも効率的に行えるので、事務負担が少ないのが魅力です。e-Govの利用に比べ、操作性の点から、こちらを利用するケースが増加しています。
ただし、申請できる手続きの種類が、e-Govで申請できる手続きのすべてを網羅できているわけではありません。加えて、自社にシステムがない場合は、導入費が必要になります。
また、電子申請に対応したクラウドサービスも増加していますので、検討の一つに加えてもいいでしょう。

デジタル手続法における
電子申請の具体的な対応方法は?

作業負担が大幅に減少する電子申請ですが、電子申請を行うには事前準備が必要です。必要な準備がありますので、確認しておきましょう。

自社で電子申請を導入する

電子証明書を取得する
電子申請を行う場合は、必ず電子証明書を取得しなければなりません。電子証明書とは、会社の実印の代わりになるもの。電子証明書を発行する認証局はいくつもありますので、利用するシステムで動作確認ができている認証局を選んで、取得しましょう。また、申請や届け出によって、利用できない電子証明書もありますので、確認の上、電子証明書の発行を受けましょう。
また、電子証明書は、ファイル形式とICカード形式の2種類があります。セキュリティ上で、ICカード形式を利用する企業も多いですが、API対応システムを利用する場合には、ICカード形式では利用できないケースもありますので、取得形式も慎重に確認しておきましょう。

【認証局を確認しましょう】
https://www.e-gov.go.jp/help/shinsei/flow/setup04/manu_certificate.html

② 電子申請の利用環境を整備する
パソコン環境確認、ブラウザ設定、インストールなど、電子証明書を利用する上で、問題なく動作する環境を整備しておきましょう。
外部連携API対応システムを利用する場合は、現在自社で使用している人事労務システムがAPI連携できれば、電子申請可能です。

導入コンサルに依頼・アウトソーシングをする

従来の紙の書類での申請は、紙の枚数と作業時間が比例して増えます。従業員数や入退社が多い企業は、事務負担が大きいものです。電子申請の導入することで、届出書を手書きする手間の削減、行政機関へ手続きに行く時間や交通費などのコスト削減、郵便コストの削減、紙書類の保管スペース不要などさまざまなメリットがあります。毎月発生する手続きが多い企業にとってメリットは大きいものとなるでしょう。

ぜひ、義務化対象の範囲に限定せず、業務効率化の視点で、電子申請の導入を検討してはいかがでしょうか。小規模の企業では、広範な業務を1人の方がこなされていることも多いので、コア業務に注力するためには、電子申請導入が一助になるケースもあります。小規模企業の場合、手続き件数が少ないので、電子証明書の取得や管理のコストを考えると二の足を踏んでしまうかもしれません。ただ、前述のように、デジタル手続法施行により、2020年より企業には義務が生じます。履行しない場合には何らかの罰則が課せられる可能性も否定できません。また、今後は、中小企業に対しても、電子申請が義務付けられるようになる可能性も高まっていくでしょう。電子申請の対応は、業務効率化の好機と捉え、導入について検討をお勧めします。

とはいえ、導入にあたっては自社の基幹の人事労務システムの活用や連携などの検証や、電子証明の取得や環境整備をはじめとしたI T知識の必要性など、多岐に渡ります。自社にとって一番適したサービスを導入するためには、そのための時間と労力が必要となってきます。

電子申請導入サービスのコンサルティングを依頼したり、電子申請に対応している社会保険労務士にアウトソーシングをすることも検討の一つに入れてはいかがでしょうか。社労士に電子申請義務化の対応をアウトソースする場合は、社労士の電子署名を用いますので、企業側で電子証明書を入手する必要はありませんので、お困りの際には、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

名古屋の社会保険労務士の小栗です。
電子申請を自社導入する方法はお勧めできません。

いかがでしたでしょうか?
デジタル手続法はまだあまり、知られていませんが、適用範囲が広がれば、企業のバックオフィス業務に大きな影響を与えることは間違いありません。
今、電子申請を導入できていない企業の対応策としては、大きく3つになると思います。
【自社で電子申請を導入する。】
あまりおすすめの方法ではありません。今のところ電子申請を自社の力で導入しようとすると、総務の人員のかなりの時間がかかることが予測されます。「電子証明書」「e-gov」など、用語自体が慣れていないためイチイチ調べる必要があるからです。今後、政府のシステムが変わるようでしたら検討してもいいかもしれません。

【電子申請のソフトを導入する】
電子申請ソフトを導入したはいいが、結局紙で申請しているという会社も少なくありません。
導入するのであれば、私たちのような社労士事務所に導入コンサルを依頼するか、導入コンサルがセットになっているソフトを導入するべきでしょう。

【社労士事務所にアウトソースする】
社会保険手続を丸ごと社会保険労務士にアウトソースする方法です。
今後増えてくると思います。煩わしい手続きや担当者の退職リスクからも解放されるので、一石二鳥です。
毎月、コストがかかるようになりますが、担当者を一人雇用することを考えれば、低コストになることもあります。

社会保険労務士法人とうかいでは、電子申請ソフトの導入コンサルやアウトソーシングも承っております。
御社に合った方法をご提案させていただきますので、一度ご相談いただければと存じます。

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