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個人事業主の法人化。
社会保険手続きについて、社会保険労務士が解説します。

個人事業主として事業を行なっている場合、事業が軌道に乗ってきた、拡大してきたといったとき、法人化(法人成り)が視野に入ってくるでしょう。社会的信用の面からも法人化したいと思っているものの、社会保険の負担や手続きがわからない、一歩踏み出すべきか悩む、という声もよく聞きます。

そこで、今回は、法人化を検討している個人事業主の皆様に、社会保険料の負担や手続きについてご紹介します。

目次
この記事の監修

社労士 小栗多喜子

社会保険労務士法人とうかい
執行役員 社会保険労務士 小栗多喜子

同社、人事戦略グループマネージャーを務め、採用・教育を担当する。商工会議所、銀行、Adeco,マネーフォワードなどセミナーや研修講師も精力的に行っている。労働法のアドバイスだけではなく、どのように法律と向き合い企業を成長させるのかという経営視点でのアドバイスを得意としている。

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個人事業主の社会保険と、
法人化した場合の社会保険の違いとは?

個人事業主と法人化した場合とでは社会保険はどのように
異なるのでしょうか

個人事業主の加入する社会保険といえば、「国民年金」と「国民健康保険」です。自ら事業を行なっていることから「雇用保険」は、加入対象外となります。また、基本的に労災保険も対象外で、一人親方や特定作業従事者などには特別加入制度が設けられています。

個人事業主の年金【国民年金】

日本国内に居住していれば「国民年金」の被保険者となります。よく公的年金は2階建てで、この1階部分が基礎年金と呼ばれる「国民年金」となります。「国民年金」の年金額は、保険料を納めた月数に比例して受給されます。20歳から60歳までの40年間である480月の保険料を全て納付していれば、満額の777,800円を受給することになります。月に換算すると約65,000円であることから、国民年金のみで老後の生活を支えるのは難しいことが伺えます。保険料は全国一律で決まっており、2022年は月16,590円です。少子高齢化が進むなか、現状の保険料を支払い続けていっても、基礎年金の水準を維持するのが難しいとも言われており、今後は、保険料納付期間を5年間延長することも議論され始めています。

 

個人事業主の健康保険【国民健康保険・介護保険】

「国民健康保険」の保険料は、前年度の所得に応じて決定されますので、所得が多ければその分負担が重くなるという仕組みです。住まいのある自治体で加入手続きをし、保険料を納付していくことになっています。扶養者という制度はなく、家族であっても1人ずつ加入することになり、保険料も個別に計算されます。厚生労働省は、高齢化による保険財政の悪化から、保険料の年間限度額を85万円から87万円に引き上げるとのニュースもあったばかりです。会社員のように、労使折半で保険料を負担するわけではないので、負担の重さを感じる人も多いでしょう。

 

個人事業主が法人化したら社会保険に加入する

個人事業主から法人化した場合は、この「国民年金」「国民健康保険」から、社会保険である「健康保険・介護保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の適用事業所になります。法人に代表取締役1人であっても、社会保険の適用事業所となり、個人事業主から法人化し社長となった場合には、「健康保険・介護保険」「厚生年金保険」に加入します。法人化したとしても、社長の場合は雇用主側となるため、「雇用保険」「労災保険」は対象外です。従業員を雇用している場合には、従業員は「雇用保険」「労災保険」が適用されることになります。

 

【健康保険・介護保険】

法人化し社会保険の適用になった場合には、「健康保険・介護保険」について協会けんぽや健康保険組合に加入することになります。個人事業主が「国民健康保険」に加入している際の保険料は、所得によって決まりましたが、法人化し「健康保険・介護保険」に加入した場合には、役員報酬の額に応じて保険料が決定されます。また「国民健康保険」の保険料が、全額本人負担であったものが、法人化した場合の保険料は、会社と本人との折半になり、扶養制度もあります。さらに、「国民健康保険」には、病気やケガで仕事ができなくなったとき収入を保証してくれるものはありません。「健康保険・介護保険」の場合には、傷病手当金の制度があるため、休職している期間にも収入を補填してくれます。
所得に応じて保険料が上がっていく「国民保険料」は、事業が拡大し売上が上昇していけば、その分保険料が上がっていきます。一方、法人化した場合には、役員報酬額は調整が可能なため、事業の拡大や売上上昇が、必ずしも保険料上昇につながるとは限りません。
 
【厚生年金保険】
個人事業主の際に加入していた「国民年金」から、会社の「厚生年金保険」に加入することになります。1階建ての基礎年金と呼ばれる「国民年金」に、2階建ての老齢厚生年金と呼ばれる「厚生年金保険」が加算されることになります。「国民年金」については、月々の保険料額が一律で決まっていますが、「厚生年金保険」は「健康保険・介護保険」同様に、役員報酬の額に応じて保険料が決定されます。
法人化することによって、社会保険料の増加負担を心配される個人事業主の方も多いでしょう。確かに、「国民年金」は一律の金額であったものが、役員報酬などに応じて保険料が負担となれば、今までの保険料より負担が大きく感じるでしょう。しかしながら、「健康保険・介護保険」同様に、役員報酬額は調整が可能です。何より、老齢厚生年金が受給できるようになることは、将来の年金受給額を増やすことにもつながります。
 
個人事業主 法人
保険の種類 特徴 保険の種類 特徴
国民健康保険

・所得に応じて保険料が増加

・扶養制度なし(扶養が増えると加算)

・地域/職業によって保険料が異なる

・傷病手当金なし

・育休中保険料免除なし

・保険料全額自己負担

健康保険

・報酬に応じて保険料が決定

・扶養制度あり(保険料に増加なし)

・傷病手当金あり

・育休中保険料免除あり

・保険料会社と折半

国民年金

・保険料一律

・将来年金は、基礎年金(1F)のみ

・保険料全額自己負担

厚生年金保険

・報酬に応じて保険料が決定

・将来年金は、基礎年金含む老齢厚生年金(2F)

・保険料会社と折半

個人事業主のまま、社会保険に加入することができる?

個人事業主が加入するのは、基本的に「国民年金」「国民健康保険」となりますが、一定の業種で従業員が5人以上いる場合には、事業所として社会保険に加入しなくてはなりません。

 

【常時5人以上で社会保険に加入する業種】

製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介斡旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保険業、通信報道業など

従業員が5人未満であっても任意適用として、事業所の社会保険加入も可能です。

また、個人事業主であっても、従事する業種の健康保険組合(建築・土木・士業など)への加入や、収入によりますが配偶者の扶養として配偶者の健康保険に加入することができます。

配偶者の扶養に入っている個人事業主。
法人化する場合はどうなる?

会社員である配偶者の扶養に入っているものの、個人事業主として扶養の範囲内で仕事をしているという人もおられるでしょう。所得税法上の扶養で言えば103万円、社会保険上の扶養で言えば130万円が、そのラインです。扶養に入っている個人事業主が法人化するということは、その扶養から外れることになります。今まで、配偶者の扶養に入っていることによって、負担していなかった保険料が、法人化によって負担することになります。ただ、個人事業主から法人化するにあたっては、事業の拡大や売上の上昇見込みがあってこそでしょう。“扶養の範囲内で”といったケースは、あまり考えられません。法人化をする場合には、配偶者の扶養から外れる手続きも忘れることなく、行いましょう。

個人事業主から法人化する社会保険手続きとは?

個人事業主が法人化することで、会社を設立したら、社会保険に加入することが義務付けられています。社長が1人の会社でも社会保険手続きが必要ですので、法人化する場合には、社会保険への理解も重要です。未加入が発覚すれば、罰則などのリスクもあります。会社設立後に、以下のような手続きが必要です。また、現在加入している「国民健康保険」「国民年金」も抜けなければなりません。

1 健康保険・厚生年金保険新規適用届

会社設立から5日以内に、会社所在地を管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」の提出が必要です。健康保険組合の場合は、業種などで加入条件が決められているケースがほとんどです。組合加入を考えている場合は、会社設立前によく検討しておいたほうがよいでしょう。届出にあたっては、会社の登記簿謄本などの添付が必要となります。会社設立から登記が完了するまで時間がかかることもありますので、早めの準備をおすすめします。

2 健康保険・厚生年金被保険者資格取得届

「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を提出します。従業員を雇用している場合には、従業員分も含めて提出することになります。

3 健康保険被扶養者(異動)届

扶養親族がいる場合には、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。配偶者を扶養する場合には、「国民年金第3号被保険者関係届」の提出も必要です。

4 労災保険関係成立届

従業員を雇用した場合には、労災保険への加入は必須です。会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。個人事業主から法人化したとしても、代表者1人の場合や役員しかいないといった会社の場合は、加入不要です。従業員を雇用した日の翌日から10日以内に「保険関係成立届」を提出しましょう。会社の登記簿謄本や従業員の労働者名簿、賃金台帳などの提出も求められます。

5 労働保険概算保険料申告書

労働保険とは、労災保険と雇用保険のことをいいます。健康保険や厚生年金保険とは異なり、毎月保険料を納付する仕組みではありません。その年度中に支払う従業員への賃金をもとに、一定の保険料率を乗じた保険料を、概算額として納付します。翌年度に、実際に支払った従業員への賃金に、保険料率を乗じた確定額を算出し、概算額と確定額を総裁します。不足があれば追加納付・還付があれば戻してもらうか、翌年の保険料に充当する手続きをします。

6 「保険関係成立届」が受理されたら、「労働保険概算保険料申告書」を提出して、保険料を納付することになります。

7 雇用保険適用事業所設置届

従業員を雇用する場合には、雇用保険への加入も必要です。まずは「雇用保険適用事業所設置届」を、会社の登記簿謄本等と併せて、会社の所在地を管轄するハローワークへ提出します。

8 雇用保険被保険者資格取得届

従業員を雇用する場合には、雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

まとめ

個人事業主の法人化についてのご相談は
とうかいにお任せください。

個人事業主から法人化するにあたっては、いつのタイミングで法人化するのがよいのか、悩むところでしょう。なかでも税負担に関すること、社会保険に関することは、何が得で、何が損なのか、大きな悩みです。しかも、法人化すれば税金のこと、社会保険のこと、手続きも含め行わなければならないとなったら、非常に負担に感じるかもしれません。とはいえ、今後事業をさらに大きくしたい、従業員を雇いたい、ということであれば、避けて通れないのが社会保険に関することです。従業員側に立ってみても、社会保険がしっかりと整備されていない会社では、働きたくないでしょう。企業としての責任のひとつとして、社会保険の加入があるのです。

とはいえ、会社設立の準備には、社会保険以外にも多くの手続きが必要です。忙しい中、書類の準備だけでも、かなりの労力です。また、法人化して直ぐのころは、社員を雇用するにあたってのルールづくりなど、今後の経営を左右する基盤を形成する大事な時期です。本業に集中するため、社会保険手続きなどのアウトソーシングなども検討されてみることをおすすめします。

当社では法人成りに詳しい社労士も揃っています。手続きはもちろん、法人化した後の従業員の労務管理など、ご不安な点があれば、ぜひご相談ください。

 
 

法人化からサポートしたお客様の声

株式会社Anteil・デューポイント様

代表取締役 加藤 清貴 様

多様化する雇用のニーズにも対応。地域のため、スタッフのためという想いを支えていただいています。(岐阜県・理美容業)

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