新型コロナウイルスで要件緩和!
雇用調整助成金について社労士が解説します。

厚生労働省は新型コロナウイルスの感染拡大による企業の経営への影響を和らげるため、従業員に対し、一時的な休業などを行う企業のために、雇用を維持する企業に支給する「雇用調整助成金」を特例措置として拡充することになりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、観光業では中国からのツアーがキャンセルになるといった事例が相次いだことが理由です。

この特例は令和2年1月24日から令和2年7月23日を開始日とする休業を対象とし、該当する事業者は対象期間であれば、事後申請も可能となされています。今回は、「雇用調整助成金」の「特例措置」について、ご説明していきます。また、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症についての特設ページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.htmlを設置、随時情報を更新していますので、あわせて確認しておきましょう。

※本稿は2020年3月1日での情報を元にご説明しています。随時変更されることもありますので、最新の情報を確認してください。

雇用調整助成金とは?

「雇用調整助成金」とは、景気の変動やその他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するため一時的に雇用調整(休業、教育訓練または出向)を行って、雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。対象となるのは「雇用保険の適用事業主」であり、申請にあたっては、雇用調整を実施する理由としても、具体的な根拠を必要とするものです。

新型コロナウイルス感染症の影響が大きく政府は要件の緩和を発表しています。

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事業縮小局面において留意すべき法規制

社会保険労務士の平田です。
休み方によって休業手当の支払の必要が変わります。

観光客の減少による影響を受ける産業をはじめ、稼働をストップする工場を抱える製造業など、多くの企業で事業活動の縮小を余儀なくされています。

従業員を休業させる場合、そしてやむなく解雇を余儀なくされるケースなど、対応に苦慮されている企業も多いと思いますが、様々なケースを想定し、留意すべき法律や制度、自社の就業規則を併せて確認しておく必要があるでしょう。

とくに休業させる場合の取り扱いには注意したいところです。また、即解雇につながらないようなセーフティとして雇用調整助成金などを利用して雇用維持に努めるなど、困難な状況であっても、これらの法律や制度を活用することで対処できることもあるため、困ったときには専門家や支援機関に相談しながら、対応していくことをおすすめします。

従業員を休ませる場合の休業手当の取り扱い

新型コロナウイルスに関連して従業員を休ませる場合については、賃金の取り扱いなどを確認しておきましょう。

・感染した従業員を休業させる場合
新型コロナウイルスに感染した従業員を休業させる場合には、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しません。ですので、会社は休業手当を支払う必要はありません。ただし、従業員は健康保険などの要件を満たせば傷病手当金の受給ができますので、申請手続きなどの対応を行う必要があります。
ただ支払いが必要ないのは感染が確定したときです。感染が疑われる場合は、下記対応になります。

・感染が疑われる従業員を休業させる場合
会社側の判断で従業員を休業させる場合には、一般的に「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。ただ、この場合も従業員が労務の提供ができるかどうかがポイントになります。休業手当が必要なのは、使用者が休ませる場合です。感染が疑われ、労務が提供できる場合がこのケースに該当します。

・発熱などの症状により従業員が自主的に休んでいる場合

従業員が自主的に休んでいる場合は、通常の病欠と同様に取り扱いとなりますが、会社が“発熱などの症状がある場合は休むこと”といった一律に休業させる場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。

業績悪化による従業員の解雇や退職勧奨

従業員の解雇や退職勧奨は事業主としても苦渋の決断となると思います。
しかし、業績悪化に伴い、決断せざるを得ないこともあるでしょう。

会社は従業員を解雇できないわけではありませんが、解雇には合理的な理由が必要です。

客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は、解雇権の濫用として無効となります。
今回の新型コロナウイルスによる業績悪化や経営難が「合理的な理由」にあたるかについては、本当に解雇が必要な状況なのか、解雇を回避するための努力を行ったかなど、一定の要件を満たすかによって判断されます。

また、事業縮小により希望退職を募ったり、退職勧奨を行う場合などについても、退職手当の取り扱いをどうするかなど、就業規則・賃金規程などとも照らしながら、慎重に進める必要があります。

専門家と相談しながら進めることで事後のトラブル回避につながります。

申請・支給要件と新型コロナウイルスの影響に伴う要件緩和の特例措置

社会保険労務士の小栗です。
今後影響によってさらに緩和されることもありえます。

雇用調整助成金の支給対象となるには、事業主に対する申請・支給要件があります。今回の新型コロナウイルスの影響により、休業等の雇用調整を行う場合で、休業等の初日が、令和2年1月24日から令和2年7月23日までの場合に、要件が緩和されました。

通常の主な要件と緩和措置

雇用保険の適用事業主であること

緩和特例措置

新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主
※これにより、日本人観光客の減少の影響を受ける観光関連産業や、部品の調達・供給等の停滞の影響を受ける製造業なども幅広く特例措置の対象となります。

売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること

緩和特例措置

○生産指標の確認対象期間を3か月から1か月に短縮
最近1か月の生産指標が、前年同期に比べ 10%以上減少した場合には、生産指標の支給要件を満たしたものとして取り扱います。

○事業所設置後、1年未満の事業主も対象
通常は、生産指標を前年同期と比較できる事業主が対象ですが、 今回の特例措置では、令和2年1月 24 日時点で、事業所設置後1年未満の事業主についても支給対象です。その際、生産指標は、初回の休業等計画届を提出する月の前月と、令和元年 12 月との1か月の指標で比較します。また、中国(人)関係売上高等の総売上高に占める割合については、事業所設置から初回の休業等計画届を提出する月の前月までの実績により確認します。

③雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと

緩和措置

○雇用指標(最近3か月の平均値)が対前年比で増加している場合も対象
今回の特例では、その要件を撤廃し、最近3か月の雇用量が対前年比で増加している事業主も対象となります。

④実施する雇用調整が一定の基準を満たすものであること。

・休業の場合
労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるものであること。

・教育訓練の場合
教育訓練の内容が、職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものであり、当該受講日において業務(本助成金の対象となる教育訓練を除く)に就かないものであること

・出向の場合
対象期間内に開始され、3か月以上1年以内に出向元事業所に復帰するものであること

⑤過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること

 

その他要件

○支給のための審査に協力すること
○審査に必要な書類等を整備・保管していること
○審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること
○管轄労働局等の実地調査を受け入れること
○労使間の協定により休業等を行うこと
○同一事業主に引き続き雇用保険被保険者として雇用された期間が6か月以上の者の休業等であること
○休業手当の支払いが労働基準法第26条の規定に違反していないものであること
○判定基礎期間における対象労働者に係る休業等の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業の場合は1/15)以上となるものであること。

※参考:厚生労働省ホームページ

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雇用調整助成金の支給金額と計算方法

社会保険労務士の藤井です。
中小企業では概ね賃金の3分の2が助成されます。

助成額は対象労働者の賃金を基準に中小企業の場合で2/3、大企業の場合は1/2までが交付され、教育訓練を実施した場合には一日当たり1200円の加算が行われる仕組みになっています。

1) 休業の場合
支給対象者に対して支払われた休業手当相当額に、下表の助成率を乗じて得た額

2)教育訓練の場合
支給対象者に対して支払われた賃金相当額に、下表の助成率を乗じて得た額に、さらに下表の加算額を加えた額

3)出向の場合
出向元事業主の負担額に、下表の助成率を乗じて得た額

 
 

コンサルタント石黒の経営視点のアドバイス

雇用調整助成金の助成金額で勘違いしやすいのが、休業手当の金額の3分の2が助成されるので貼りません。前年度の賃金総額を使って算出します。
全社員の平均賃金を使用し計算式を用いますので注意が必要です。

雇用調整助成金計画
〜申請〜受給までの大まかな流れ~

社会保険労務士の岡根です。
特例で計画を5月31日までに提出すればよいこととなりました。

雇用調整助成金を受給するまでの大まかな流れは次のとおりです。添付しなくてはならない書類とともに、確認していきましょう。

 雇用調整の計画

雇用調整を実施にあたり、まずどのような雇用調整を行うか具体的な計画が必要です。

休業する従業員の選定方法、休業する従業員の範囲(部門)、休業の期間、休業する従業員数などについて検討します。

教育訓練の場合は、訓練内容や期間、講師や訓練場所などを計画します。訓練の実施後のレポートも必要です。

さらに、出向を検討する際には、労働条件や出向期間、勤務地等についての出向契約をはじめ、従業員への同意も重要です。

雇用調整計画届の提出

計画届を都道府県労働局またはハローワークへ提出します。原則、計画届は事前提出となっていますが、今回の新型コロナウイルスによる助成金の申請の場合は、特例として、2020年1月24日以降に初回の休業を行う事業所においては、休業等実施計画書の提出を2020年5月31日までに提出すればよいこととなっています。

【計画届に必要な書類】

・休業等実施計画書
・雇用調整実施事業所の事業活動、雇用指針の状況に関する申し出書
・休業(教育訓練・出向)協定書
・事業所の状況に関する書類
・(出向の場合)出向計画に関する書類

雇用調整計画届の実施

計画に基づき、休業や教育訓練などの雇用調整を実施します。

支給申請

雇用調整を実施したら、都道府県の労働局またはハローワークに支給申請を行います。

【申請に必要な書類】

・支給申請書
・助成額算定書
・休業・教育訓練実績一覧表及び所定外労働等の実施状況に関する申出書
・支給要件確認申立書
・労働保険料に関する書類
・労働・休日及び休業・教育訓練の実績に関する書類など
・(出向の場合)出向先事業所調書
・(出向の場合)出向に関する確認書
・(出向の場合)出向元事業所賃金補填額・負担額調書
・(出向の場合)出向の実績に関する書類

労働局による審査・支給決定

労働局による審査後、問題がなければ支給決定、振込となります。

雇用調整助成金が申請できない場合

労務支援チームの大矢です。
虚偽の申請は許されるものではありません。

雇用調整助成金は必要書類が揃っている、かつ、内容が要件を満たしていれば原則として受給できるものですが、必ずしもそうでないケースもあります。

・労働保険料を滞納している
・不正受給歴がある
・労働法令に違反がある

などです。また当たり前のことですが虚偽の申請は許されるものではありません。休業の申請をしておきながら、ボランティアと称して労働をさせるなどはもってのほかです。雇用調整助成金に限らず、助成金の虚偽の申請は厳に慎みましょう。

計画から申請、実施まで、取り組む課題は多く、企業担当者の負担も大きいものです。そういった場合には、助成金の申請に長けた社労士事務所へ相談することをお勧めします。社会保険労務士法人とうかいでも雇用調整助成金の相談は承っておりますので、ご相談ください。

 

雇用調整助成金特例の追加について
(2020年3月30日追記)

コンサルタントの望月です。
雇用調整助成金特例の追加が行われます。

厚生労働省では、2020年3月末、新型コロナウイルス感染症の経済的影響の拡大を受けて、雇用調整助成金の特例措置の拡大を決定しました。
方針として発表していますが、まず間違いないと思われます。

雇用調整助成金は事業主が休業手当の支払いを行った場合の事業主に対する補填となる助成金です。解雇を行わない場合は9/10が支給されます。先が見えないとされる新型コロナウイルス感染症の経済的影響ですが、一つの選択肢と考えるべき拡充となっています。

2020年4月1日以降の休業が対象

新型コロナウイルスの影響が深刻化を受け、2020年4月1日から6月30日までの期間が緊急対応機関と定められ、雇用調整助成金の更なる特例措置が実施されることになりました。

(1)対象となる事業主の拡大
 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(全業種)

(2)生産指標要件の緩和
 1か月5%以上低下

(3)対象者の拡大
 雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含める

(4)助成率の引き上げ
 4/5(中小)、2/3(大企業)
※解雇等を行わない場合は9/10(中小)、3/4(大企業)

(5)計画届
 計画届の事後提出を認める(1月24日~6月30日まで)

(6)支給限度日数
 1年100日、3年150日+上記対象期間 

(7)その他
 上記の拡充にあわせて、短時間一斉休業の要件緩和、残業相殺の停止、支給迅速化のため事務処理体制の強化、手続きの簡素化も行われる。

 

厚生労働省ホームページより
https://www.mhlw.go.jp/content/000615395.pdf

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まとめ

コンサルタントの中村です。
雇用調整助成金のお問合せは私にお任せください。

いかがでしたでしょうか。

新型コロナウイルス感染症の影響拡大による要件緩和で雇用調整助成金は非常に使いやすくなっています。

しかしながら、活用には実際に休業や交代勤務、営業時間の縮小などが必要になります。非常に難しい経営判断になると思います。

ひとつに選択肢としてお考え下さい。

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