トラック運転者の労働時間等改善基準告示のポイントを
社労士が解説します。

長い拘束時間、過重労働、それに伴う健康問題など、ドライバー業務に従事する人を取り巻く環境は、多くの問題が取り沙汰されています。長時間労働の問題で運送会社の事業許可を取り消されるというケースも発生しています。とくに運送会社は業務の性質上、トラック運転者の長時間労働は慢性的に発生しており、居眠り運転や交通事故、過労死といった労働災害の一因となることから、非常に大きな問題です。

そこで今回は、厚生労働省が公表している「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」から、トラック運転者に着目し、改善のポイントを解説していきます。

トラック運転者の「労働時間等の改善基準告示」とは?

トラックドライバーへの労務環境改善は重要な経営課題のひとつです

トラック運転者に限らず、ドライバーを雇用する業界や会社において、大きく問題として取り上げられるのが、長時間労働です。深夜労働や荷待ち時間など拘束時間が長くなりがちです。また、ネットショッピングなどを始めとした運送需要が増加している一方で、深刻なドライバー不足が叫ばれています。需要があるにも関わらず、人材が不足する原因の一つには、長時間労働や体力仕事といった“大変な仕事”といったイメージの定着もあるかもしれません。人材不足については、今後さらに進むと言われています。トラック運転者にいたっては、ほかの業種と比較しても高齢化が顕著とされ、ますますドライバーの人手不足は深刻化していくことが予想されます。

そうしたドライバー業務の性質上によるもの、加えて人材不足によるものによって、既存のドライバー従業員へのしわ寄せや負担が大きい状況です。

長時間労働による負担から、従業員本人の健康問題をはじめ、交通事故などの発生を引き起こす要因ともなるなど、重要度も影響度も社会的に非常に大きい問題です。

そのため、自動車運転に従事する従業員を守るために、厚生労働省により「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が公表されました。各企業は、この基準に準じて、ドライバー業務に従事する従業員の働く環境を整え、対応していくこととなります。

自動車運転者と一口に言っても、荷物の配送、乗客を乗せるなど、運転目的が異なります。そこで、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準告示」は、その業種、運転する車両の種類ごとに、「トラック運転者」、「バス運転者」、「タクシー運転者」に対するものが定められています。

ここでは、「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準告示」にスコープをあてます。トラック運転者の労働時間等の改善を行っていくには、拘束時間を減らし、トラック運転者の休息時間を適正に確保していかなければなりません。改善基準告示で定める「拘束時間」「休息時間」「運転時間」とはどういうものか各定義を確認してみましょう。

改善基準告示が適用されるトラック運転者

この「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準告示」が適用されるのは、会社に雇用されているトラックドライバーになります。トラックドライバーの中には、個人事業主として運送会社と業務委託契約を締結している人も多くいますが、原則は会社に雇用されているトラックドライバーが該当となります。

とはいえ、個人事業主として業務委託契約を締結しているものの、実態は会社の指揮命令に従っている雇用の状態である場合には、会社で雇用されている従業員と同様とみなされる可能性もあります。

業務委託なので、改善基準告示に沿わなくてもよいということではありません。会社としてトラックドライバーが健康で安全に業務に従事してもらうために、環境を整え、運行していく必要があります。

トラック運転者の改善基準告示の「拘束時間」とは?

「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準」における拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間です。実際の労働時間と休憩時間の合計時間すべてを「拘束時間」としています。

この「拘束時間」の中には、運転・整備・荷受け・荷下ろしなどの実作業を行う労働時間以外に、休憩時間や荷待ち時間も含まれます。長距離トラックの乗務であれば、数日に渡ることもありますし、待機時間や仮眠時間があるでしょう。「拘束時間」には、これらも含んでいます。

  • 拘束時間

始業〜終業時刻までの時間。労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計時間

  • 労働時間

作業時間、手待ち時間(荷物の積み込みのために待機している時間など)も含まれる。残業、休日出勤も含まれる

  • 休息時間

勤務と次の勤務との時間。睡眠時間も含め、全く自由な時間

トラック運転者の改善基準告示の「休息時間」とは?

「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準」における「休息時間」とは、勤務と次の勤務の間の時間です。会社の指揮命令などに縛られない私生活の自由な時間のことを言います。

1日の休息時間は、継続して8時間以上必要とされています。睡眠時間も含めているという休息時間なので、細切れに通算して8時間以上の休息を与えるのではなく、連続8時間というまとまった休みでなくてはなりません。

トラック運転者の「休日」の取り扱いを理解する

トラックドライバーの休日の取り扱いにも注意が必要です。トラックドライバーの場合は、休息期間に24時間を合わせた連続した時間が、「1休日」としてカウントされます。

1日の休日

原則:休息時間+24時間の連続した時間

休息を確保するため、拘束時間には制限がある
「拘束時間の限度」とは? 

トラックドライバーの拘束時間の適用範囲をしっかりと理解しておきましょう

「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準」では、トラック運転手が健康で安全に業務を行うために、上記の「拘束時間」に、さらに限度を設けて、休息期間を確保すべきとしています。

拘束時間については、1日、1か月の単位でその限度が定められています。1日の単位は、始業時刻から起算して24時間、1か月の単位は、月の1日〜末日あるいは賃金計算期間の1か月間のいずれかによります。

1日の拘束時間の限度

【原則】

13時間まで

【例外】

拘束時間を延長する場合でも最大16時間まで

ただし、1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回以内

1か月の拘束時間の限度

【原則】

293時間まで

【例外(労使協定が必要)】

1年間の拘束時間が、3,516時間を超えない範囲内で、1年のうち6か月までは、1か月320時間まで延長が可能

1か月の拘束時間は、原則293時間までですが、例外も認められています。その場合には、労使協定が必要です。

○労使協定で定める事項

・協定の適用対象者

・1年間について毎月の拘束時間

・協定の有効期限

・協定変更の手続き等

 

休息時間は継続して8時間以上必要とされていることから、上記の拘束時間の限度が設けられています。

1日(24時間)=拘束時間(16時間以内)+休息時間(8時間以上)

連続運転の事故発生を防止するため、
運転時間にも限度がある「運転時間の限度」とは?

拘束時間に限度があるように、「運転時間」にも当然ながら限度が設けられています。これは、遠距離への運転や長時間運転は、運転時間が長くなればなるほど、注意力の低下や、肉体的・精神的疲労の蓄積される非常にストレスの高い業務であると考えられます。

このため、運転時間には1日、1週、連続運転時間など、厳しく規制がされています。

1日の運転時間の限度

2日平均で9時間まで

1週の運転時間の限度

2週間ごとの平均で44時間まで

連続運転時間の限度

4時間まで

運転時間4時間以内に1回が10分以上で、かつ合計30分以上の運転しない時間(非運転時間)をおく

※非運転時間:休憩時間でなくてもOK。荷降ろしなどの時間をあててもよい

1日の運転時間の限度が、平均で9時間だからといって、1日目18時間、2日目0時間=平均9時間といったことは認められていません。拘束時間・運転時間の限度のルールに則れば、現実にそうした運行計画は組めません。なぜなら、1日の拘束時間は、例外でも最大16時間であることに加え、連続4時間運転する際は、30分以上運転しない時間を設ける必要があるからです。

トラック運転者の拘束・休息時間の特例

トラックドライバーの拘束時間、休息時間、運転時間などには、厳しく限度が設定されていますが、これらにはいくつかの特例もあるので注意が必要です。

 

休息時間の分割の特例

交通渋滞や天気、荷主の都合などどうしても8時間以上連続で休息を与えるのが困難な場合には、一定の要件のもとで、休息期間を分割することが認められます。

分割が認められる要件

① 分割休息の回数

一定期間(原則2週間から4週間程度)の全勤務回数の1/2が限度

② 休息期間の長さ

1日1回あたり継続4時間以上、合計10時間以上

※4時間に満たない場合は、休息期間として扱われず「休憩」となります。

トラック運転者2人以上での乗務の特例

1台のトラックに2人以上乗務する場合は、1日の拘束時間を20時間に延長し、休息期間を4時間に短縮することが可能です。ただし、トラック車両に、体を伸ばして休息できる設備がある場合のみです。

隔日勤務の特例

隔日勤務を行う場合には、次の要件を満たさなければなりません。

隔日勤務の要件

① 拘束時間

2暦日の拘束時間は21時間まで

② 休息期間の長さ

勤務終了後継続20時間以上

フェリー乗船の特例

トラックがフェリーに乗っている時間は、乗船時間のうち2時間を除き休息期間として取り扱われ、通常の休息期間から差し引くことができます。ただし、差し引いた後の休息時間は、2人以上の乗務の場合を除いて、船を下りてから勤務終了までの時間の1/2以上でなければなりません。

以上のように、トラックドライバーの労働条件は厚生労働省によって細かく基準が設けられています。

トラック運転者の長時間労働を防止するために、
時間外労働および休日労働の限度に注意

長時間労働が多くなりがちなトラック運転者。会社側の注意すべきポイントを社労士がアドバイスします

これまでご説明してきたように、トラックドライバーは、遠距離への運転や深夜労働、荷待ち時間などによって、長時間労働になりがちです。ましてや、運転業務という性質上、労働時間、休憩時間などの実態が把握しにくいものです。しかしながら、トラック運転者の長時間労働を防止するためには、しっかりと拘束時間、労働時間、休息時間を把握、管理していくことが重要になります。どこからの時間が時間外・休日労働になるのかなども曖昧にしないよう、しっかりと確認しておきましょう。

トラックドライバーの時間外・休日労働は、前述の1日および1か月の拘束時間が限度です。また、休日労働は2週間に1回が限度です。つまり、拘束時間の限度時間数から、所定労働時間と休憩時間の合計を差し引いた残りの時間数が、時間外・休日労働が可能な時間ということになります。

2024年4月
年間残業時間上限960時間の規制開始

労働基準法32条で定められた法定労働時間を越えて労働者を働かせる場合は、労働者と36協定を結ぶことで、限度基準の範囲で労働時間を延長可能です。2024年4月からは、新たな上限規制が適用されることになりました。時間外労働の上限が月80時間、年960時間までとなります。

長時間労働防止のために労働時間を正確に把握する

近年、働く従業員の権利意識や労働法への情報周知も進み、長時間労働や残業代の未払いが問題視されるようになっています。過労死や労働災害のリスクを減らしていくためには、まず労働時間を正確に把握しておく必要があります。2024年からスタートする残業時間の上限規制にも対応していくためにも、対応は急務といえるでしょう。

一般的なのは、タイムカードのほかに、運転日報、業務日誌などですが、その他にもドライブレコーダーや各種クラウドサービスなどを併用して、拘束時間、運転時間、休憩時間、時間外労働を正確に把握しておくように努めましょう。

休憩の取り方も重要

休憩時間は、自由に使える時間でなければなりません。作業のために待機を休憩時間として理解されている場合も多いのですが、呼び出されたらすぐに応じなければならないというような待機時間は休憩時間ではありません。

 

時間外・休日労働に関する36協定届の注意点

会社は従業員に時間外・休日労働を行なわせる場合は、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出を行う必要があります。自動車運転者については、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」に基づく36協定届が必要となります。

注意ポイント1

自動車運転業務に従事する者には一般の36協定書の限度時間は適用されませんが、36協定書は届出する義務があります。

注意ポイント2

通常の限度時間が適用除外のため「特別条項」という考え方はありません。改善基準告示に示されているのは、労働時間の限度ではなく、拘束時間の限度です。拘束時間の限度を踏まえ、可能となる時間外労働の時間を算出する必要があります。

注意ポイント3

自動車車運転の業務に関しては、2024年4月から、労働時間の規制が適用されます。

2024年4月1日〜 2024年4月1日〜
上限規制適用なし ・特別条項付き36協定を締結する場合、年間の時間外労働の上限は960時間

・時間外労働と休日労働の合計について

   月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内の規制は適用されない

・時間外労働月45時間超が年6回までの規制は適用されない

まとめ

トラック運転などの物流・運送業界は、労働時間が複雑でわかりにくい

いかがでしょうか?

トラック運転手は、とくに労働時間が長くなりがちな業種です。慢性的な人材不足も影響して、対策に苦心している会社も多いのではないでしょうか。しかも、厳しい改善基準を順守するために、労働時間の正確な把握や計算方法は複雑でわかりにくいかもしれません。とはいえ、会社側が、対応を怠った結果、トラック運転者である従業員が健康を害したり、労災につながるような事故を引き起せば、会社の責任追とともに、損害賠償を請求されるおそれがあります。

運送業の労務管理は得意とする社労士と苦手とする社労士が分かれるところです。専門に扱っていないと何を言っているのかすらわからない場合もあるからです。

長時間労働対策、残業対策など運送業の労務管理にご不安な会社の方は、ぜひ一度、ご相談ください。

 

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