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製造業の人手不足問題と労務のトラブル。
業界の特長と事例から、企業対応策を探ります。

製造業の現状とトラブル事例
を基に企業対応策について
解説します。

日本における人手不足は、頻繁に話題に上るようになり、とくに製造業における人手不足は深刻です。製造業企業の多くが、事業活動の弊害が生じていると言われています。通年採用を行っていても、この問題はなかなか解消されない現状があります。

今回は、製造業の人手不足の現状と関連する労務のトラブル、また事例を通して、企業の対応策を探ります。製造業界に詳しい社会保険労務士が解説していきます。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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製造業とは?

製造業の分類について
解説していきます。

大企業から中小企業まで幅広く携わっている日本の基幹産業でもある製造業。製造業といっても、その範囲は非常に幅広いものです。製造業は“原材料を製造したり、加工することで製品を生産”します。経済産業省の定義によれば、

・主として新製品の製造加工を行う事業所。完成品のみならず、部品も含む

とされています。

自動車、電子部品、食品、医薬品などその種類はさまざまです。製品の原料となる素材を作る工程、素材を利用して加工し部品などを作る工程、部品などを組み立てる工程など、その役割も実に多様です。これらは、“上流工程” “中流工程” “下流工程”とも言われ、それぞれ担うメーカー企業があります。さらに、トータルに行うメーカーもあります。

 

「上流工程」(素材メーカー)

木材や紙、樹脂やゴム、化学品、繊維、鉄やアルミといった原料・素材を生産するメーカーです。

旭化成株式会社/東レ株式会社/日本製紙株式会社など

 

「中流工程」(部品メーカー)

素材を利用し、精密部品や電子部品といった製品を作るうえで欠かせない部品を生産するメーカーです。

京セラ株式会社/株式会社デンソーなど

 

「下流工程」(加工メーカー)

素材や部品を加工したり、組み立てを行い製品を加工するメーカーです。

株式会社日立製作所など

 

(自社生産・加工メーカー)

素材研究から開発生産、完成品まで、すべて行うメーカーです。

花王株式会社/武田薬品工業株式会社など

製造業界における人材雇用の特長と現状

大きく幅広い製造業界。メーカーそれぞれの特性によっても人材雇用のスタンスも異なり、職種も多様です。

 

製造業メーカーの職種の一例

商品企画

マーケットの動向やトレンドを調査したり、ユーザーニーズの予測を行います。商品のコンセプト企画、売上の予測など、新しい製品を市場に誕生させるための一連のプロセスです。メーカーによっては、その役割の範囲は細分化されていたり、広報PRといった役割も含む場合もあったりと、さまざまです。

 

研究開発

技術の研究や開発を担う職種です。新製品の開発はもちろんのこと、既存製品の改良なども担います。メーカーによって、研究職・開発職と細分化している場合も多いでしょう。将来のビジネスの種を探し、製品にどのように活かせるのかを研究したり、研究によってもたらされた結果や技術を使って、製品を生み出していきます。

 

生産管理

製造業における生産管理は、生産計画に沿って製品を生産・出荷できるよう業務の全体を管理します。生産管理の業務の範囲は幅広く、生産量や購買計画の作成や管理、品質管理、原価管理、在庫管理などを担います。製造業においては、なくてはならない職種となります。

 

購買・資材調達

自社製品の製造に必要な資材や備品など仕入れ・調達を担う職種です。製造部門で調達を担っていることも多いでしょう。製造原価へのインパクトが発生する業務ですので、製造業にとっては、大きな役割の職種となります。

 

製造

実際に製品を作る仕事です。工場の製造ラインで行う製造、加工、組み立てなどがあります。危険な業務を担う場面も多くあります。

例えば部品の製造には、以下のような製造の役割の仕事があります。

・鍛造:金属の鋳造や、部品の製造などを行います。

・旋盤:金属の加工を行います。

・研磨:部品を磨きます。

・組立:部品の組み立てを行います。

・塗装:下地、色塗りなどを行います。

熟練の経験が必要な仕事もあり、未経験には難しい仕事も多くあります。人手不足の要因にもなる部分です。一般的に、“製造業の仕事”というと、イメージする仕事も多いのではないでしょうか。

その他にもピッキング作業、クレーン運搬、検品、梱包といった作業もあります。

 

営業

素材メーカーであれば、自社の素材を部品メーカーに売り込んだり、部品メーカーであれば、自社の電子部品を家電メーカーに売り込むなどの営業の仕事。多くは、BtoBであり、販売規模も大きいものになります。

 

広報・広告

自社製品の宣伝やイメージアップのための展開を行う職種です。BtoCサービスのメーカーはとくに力を入れている職種でしょう。

製造業メーカーの特徴の一例

自動車メーカー

自動車メーカーは、日本を代表する製造業です。人材雇用やその活用については、注目が集まる企業も多く、与える影響も大きいものです。ほとんどのメーカーは、日本市場のみならず、世界市場でビジネス展開しているため、国際的に活躍する人材が求められています。

 

機械・電子部品メーカー

総合電気機械メーカーや電子部品メーカーなどは、技術発展も著しい業界です。新技術への開発設計なども盛んです。

 

化学品メーカー

素材や原料、繊維、食料品の原料といったさまざまなものを扱います。基礎研究や応用研究など理系人材の確保に力をいれている企業も多くあります。

工場の人手不足

製造業メーカーといっても、製造しているモノによって、特性が異なります。職種もさまざまです。これまで一例に挙げた職種以外にも、企業によってさまざまな職種も存在します。ただ、製造業の共通の問題、現状の課題は、やはり「工場の人手不足」と言えるでしょう。製造業の工場労働者は、年々減少しており、とりわけ、中小企業は深刻です。熟練の経験や知識が必要な職人仕事の場合には、なおさらです。通年採用活動を行うも、予定した採用数に届かないという声もよくお聞きします。工場では、離職が多いこともその要因でしょう。危険な仕事、体力的に負担の大きな仕事、納期が逼迫している仕事、夜勤があるなどことも影響していると言われています。また、契約期間で働く従業員も多く、従業員が入れ替わる都度、作業指導や安全教育といった業務も発生するため、既存の従業員への負担も大きいといわれています。

製造業でよく見られる労務リスクとトラブル事例

よくある労務リスクとトラブルのケースをご紹介します。

製造業によくある労務リスクとトラブルのケースをみてみましょう。

 

労災事故のリスク

製造現場では、他の業種と比べ労働災害が起こりやすいものです。機械や設備の誤操作による事故、有機溶剤などの健康被害リスクもあります。大きな労災事故が発生すれば、民事・刑事責任などにも発展します。

 

<挟まれ事故トラブルの例>

プレス工の労働者がプレス機械での作業中に、機械の故障により手指に障害を負った。

――会社は安全装置に関する法令点検や従業員への安全教育は実施しており、故障が発生した場合であっても事故回避のための措置があった。労働者は熟練者であったが落ち度もあったため、過失相殺した賠償金を支払うことで決着した。

 

労働時間管理のリスク

慢性的な人手不足の現場では、長時間労働の発生が問題となっています。タイトな納期設定などから工場従業員への負担が大きくなりがちです。

 

<長時間労働とサービス残業トラブルの例>

納期逼迫のために長時間続けていたが、割り増し分の賃金が支払われていなかった。

――製造業である会社は閑散期と繁忙期があるため、変形労働時間制を導入していた。変形労働時間制は、定めた期間内において平均して週40時間以内の労働時間に収まれば、特定の労働日が8時間を超えたり、週40時間を超えていても残業時間は発生しない。しかし、労働時間を適切に管理できておらず、本来支払わなくてはならない残業代が未払いであった。過去に訴求し未払い残業代を支払うことで解決した。

 

多様な雇用形態のリスク

製造業は、製造工程において、それぞれの工程において分業や役割付が定まっています。さらに、人手不足の状況下において、期間契約、外部委託や派遣労働といった、多様な形態で働く人を多く抱えています。

 

<雇い止めトラブルの例>

10年に渡って雇用していた契約社員が、更新しない理由が不明なまま、更新がされなかった。契約書も存在していなかった。

――有期の契約社員であっても、長期に渡って反復契約していた場合には、理由なく雇い止めはできない。契約書の締結されておらず、更新の有無や条件の具体的明示がなかった。有期雇用が通算で5年以上超雇用していることが明らかであり、従業員から希望があったので無期雇用へ転換した。

製造業における労務問題。企業が対応すべきポイント

法的リスクに備え、
事前に対策しておくことが
大切です。

製造業は、様々な法的リスクの大きい業界です。変化のスピードの速いビジネス環境の中、法的リスクに備え、もしもトラブルが発生しても、大きな影響を及ぼさないように対応していきたいものです。そこで、企業が労務の法的リスクに備え、対応すべきポイントを確認しておきます。

 

人事労務担当者の現場理解

労務トラブルを未然に防ぐ、また発生してもトラブルが大きくならないような環境づくりがベースとなります。それには、まずは現場で抱えている問題を人事労務担当者がしっかり理解することが重要です。製造の現場は、専門的な知識が必要なため、なかなか人事労務担当者が理解しにくい部分もあるでしょう。ただ、有機溶剤などを利用する場合の安全教育などにおいても、基礎知識は必要です。現場任せにせず、人事労務担当者の視点も重要になってきます。労災事故を発生させないためにも、自社で使用する機械や有機溶剤等の危険性・有害性の理解につとめ、従業員への周知や対策につなげましょう。

2 人材不足への対応

さまざまな施策で人材不足への対応をおこなっている企業は多いでしょう。しかし、人材不足は、今後の日本の労働力人口を考えれば、さらに加速していくと言わざるを得ません。とくに、技術・技能職人材の不足は、多くの製造業企業を悩ませています。この問題に手を打たなければ、事業活動が立ち行かなくなることもあるのです。それには、外国人労働者の活用、シニア人材も積極的に活用を広げなければならないでしょう。従来の細切れの期間契約も見直す必要が生じるかもしれません。さらに、賃金制度や退職金制度、福利厚生制度の見直しが必要なケースもあるでしょう。若者人材も不足している製造業界では、若い世代への採用アピールの打ち出し方の工夫が重要になってきます。

3 DX推進。IT活用による業務効率化とプロセス最適化

ここ数年で、製造業界においても加速した感のあるデジタル化の推進。多くの会社でITを活用した業務効率化やプロセスの最適化を進めていく動きが見られます。ただ、その動きはまだまだ一部に限られています。優れた技術力が魅力である日本の製造業とはいえ、DX推進、IT活用においては、諸外国より遅れていると言わざるをえません。人手不足対策の1つとして、人事採用と両輪で行っていくべきなのが、DX推進でしょう。AI、ICTなどを利用し、属人化した業務の効率化、生産性の向上で人材不足を補っていく必要があります。

まとめ

製造業の人手不足や労務の
トラブルに関してのご相談は
とうかいにお任せください。

製造業の人手不足問題は、さまざまな要因があるものの、“体力的にきつそう”“ハラスメントなど厳しそう”“技術や知識が必要”など、働きにくそうなイメージを持たれていることも影響していそうです。製造業で働くイメージをよりよいものとしていくイメージアップ戦略も必要でしょう。それには、企業の従業員の働き方の根幹となる就業規則、賃金制度、福利厚生といった身近な問題を、見直すところからはじめてはいかがでしょうか。

当社では、製造業のお客様も非常に多いため、さまざまな問題・課題の声が寄せられます。人材不足の対応策として他社に一歩リードするためのお手伝いをさせていただきます。製造業界に詳しい社労士が揃っておりますので、ぜひお気軽にご質問・ご相談ください。

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